たとえば、往年の特撮ドラマが映画化されるとして、それが「仮面ライダー」だったり「ウルトラマン」だったりするのなら、世代を超えて注目も浴びるだろう。ところが、そこまでメジャーでない作品が原作となると、うまくすればマニアの支持を集めるかもしれないが、大半はそれほどの注目も浴びずに終わってしまう。
オタク文化は日本が世界に誇るコンテンツ……とかなんとか言ってみたところで、やはり世間一般はオタク文化の上っ面にしか興味がないからだ。

そして「電人ザボーガー」は、お世辞にもメジャーとは言い難い作品だ。むしろマニア向け。マニア向けと評されるのは、オタク方面にとっては少しも悪口ではないが、商業的にはあまり歓迎されたことではない。「東映~!」とか、「円谷~!」とか、「石ノ森~!」とかだったら世間への通りもいいのだが、「ピープロ~」では、普通の人の心にはちょっと届きにくい。

だから、「電人ザボーガー」が映画化されると聞いたときには、はっきり言って心配になった。
また原作ファンを怒らすだけなんじゃねーの? って。ハッピーバースディ、デビ……じゃなかったザボーガー、みたいな珍作ができてしまうんじゃねーの? って。

ところが! 勝手に悪い方へ悪い方へと先回りしていたわたしの心配は、まったくの杞憂だということがわかった。2011年の「電人ザボーガー」は、どこから見ても「電人ザボーガー」以外の何物でもなかった。

監督を担当したのはフンドシの似合うナイスガイ、井口昇。一般的な知名度はまだ低いかもしれないが、いま、急速にその名を広めつつある新鋭監督だ。
AV界を中心に独特のねちっこい演出で頭角を現したのち、2007年の一般映画「片腕マシンガール」でブレイクした。続く「ロボゲイシャ」でも、パワーみなぎる作風を見せつけ、特撮アクション映画、バイオレンス映画のファンから多くの支持を集めている。

そんな井口監督が手掛けた映画版「電人ザボーガー」は、「マニア向け」なんてとんでもない。畳み掛けるようなアクションとギャグの応酬に我を忘れ、いい意味でポカーンとさせられる特撮オペラの傑作だった。

今回の映画版「電人ザボーガー」は、物語が大きく2部に分かれている。第1部は、電人ザボーガー誕生までと、それを操る大門豊の青年期の物語だ。
今回、主人公の大門青年を演じることになったのは、古原靖久。ヘアースタイルに特徴のあるイケメン俳優だが、その自慢のヘアーを大門ヘルメットですっぽり覆い、父の仇でもある秘密殺人強盗機関Σ(シグマ)に立ち向かう熱血漢を見事に演じている。

特撮ヒーローって、少しぐらいオーバーアクトじゃないと気分が出ないもので、だからこそ、簡単そうに見えてじつは若手にはハードルの高い役柄だと思うのだ。けれど、そうした心配をすっかり忘れさせてくれるほど、古原靖久は大門青年になりきっていた。

第1部では、テレビシリーズでの名場面をぎゅっと凝縮して、ひとつのエピソードにまとめた感じの構成になっている。このあたりのシナリオ構成も見事で、ザボーガーの変形はもちろん、アクションも爆発も、子供に見せられるスレスレのエロも、全部入っている。
この満足度は素晴らしい。大門がザボーガーに命令を与えるためにヘルメットのインカムを下ろすときの「ポヒッ」という効果音も、テレビ版そのままだったのに感激した。あの音、好きだったんだよー。

CG技術のおかげもあって、ザボーガーの変形シーンがワンカットで見られることに感涙しつつ、一方で、大門青年はミスボーグと恋に落ち、正義と愛情の間で揺れ動く。それを見かねたザボーガーは、大門を目覚めさせるためにある行動を起こす……というところまでが、第1部だ。

第2部は、それから25年後が舞台となる。
秘密警察のライセンスを失い、パッとしないまま歳をとった熟年の大門は、若杉総理の運転手となり、ヘイコラする日々を送っている。これを演じるのが、板尾創路。このキャスティングの絶妙さがたまらない。板尾の“あらゆる好青年は歳をとるとこんな感じになるだろう”と思わせる顔つきが、驚くほどこのシナリオにはまっている。
やがて、落ちぶれた大門の前にあらわれた新たなるΣからの刺客。そしてザボーガーもΣの手先となっていたりして、熟年となった大門豊の本当の戦いがはじまるのだ。


板尾創路というと、吉本興業所属の芸人であることから、どうしたってお笑いイメージが強すぎる人物だ。まあ、この映画もお笑い要素の多い作品ではあるのだけど、しかし、板尾はいたって大真面目だ。
インカムをポヒッと引き寄せ、「チェーンジ、ストローング、ザボーガー、ゴウ!」と、よどみなく叫ぶ板尾の姿に、この映画の本気を見せられた。どんな題材でも、映画は真面目に撮ってナンボだよなあ、という想いを強くするのだ。

これまで邦画の世界では、往年の人気アニメや人気特撮番組を実写映画化して、失敗した例がたくさんある。やたらとスタイリッシュにしようとするあまり、カッコよすぎて逆にカッコわるくなってしまったり、演技力よりもテレビでの人気を優先させた配役のせいで学芸会みたいなことになってしまったり、まあロクなことがない。
その点、今回の「電人ザボーガー」は、特撮番組のテイストを残しながら、映画的な豪華さも加味されていて、かつてのファンも納得の出来になっている。元ネタを大きく変えずに新しいものを作るって、大変なことだよ。
(とみさわ昭仁)