(前編はこちら)
肉体を通せばリアルになるけど
――飛行機事故で死んでしまったハルそっくりのロボットであるロボハルと、ハルの恋人だったくるみ。メインキャラ2人に関して、こういうキャラにしよう。あるいは、こういうキャラにはしたくないといった狙いはありましたか?
木皿 アニメなので、頭で考えただけのキャラやお話になると、本当に薄っぺらい映画になると直感的に思いました。ドラマの場合は、肉体のある人が演じるわけで。例えば、私たちが古くさいセリフを書いても、若い人がやれば今どきのセリフになる。肉体を通せばリアルになるんですよ。今回は、絵が動くアニメなので、そこが怖かったですね。とはいえ、私たちがリアルに書けるわけじゃないし(笑)。
――映像や声優さんの芝居も含めて、非常に繊細な人間描写だったと思いますが。
木皿 はい。牧原(亮太郎)監督がすごく丁寧に(芝居を)積み上げてくれる方だったので。
やっぱり年寄りは出したい
――2人を見守る人々も魅力的ですよね。特に、ロボハルを作った荒波博士や、博士が勤めるケアセンターのお婆ちゃんたちが大好きです。
木皿 ウチ自体、旦那さんが自宅介護なので、訪問介護の人も、リハビリの先生も来るし。あれって、けっこう身近な状況なんですよね。それに、やっぱり年寄りは出したい。ドラマなんかでも、若い人や綺麗な人ばかり見せるのは抵抗があって。ちょっとは汚いものも見せたいっていうか……。って、汚いって言葉は違うけど(笑)。
――キラキラした若い人ばかりじゃなくて、という話ですよね(笑)。
木皿 そうそう! それは意識的に、対比させているのかもしれないですね。(ドラマの)「すいか」で、浅丘ルリ子さんの教授(役名は崎谷夏子)を入れたのも、遠いところから若い人を見る視点を作りたかったから。
――より血の通ったキャラクターになるわけですね。
木皿 ええ。私たち(木皿泉)が入って、ちょっとダサく、雑になることで生まれる面白さもあるんじゃないかなって思ってます。
恋愛物にしたいと思ってた
――ロボハルのベースになっている作業ロボットの名前が「Q01(キューイチ)」だったり。ルービックキューブがキーアイテムになっていたり。ドラマ「Q10」との繋がりを感じる要素も多いのですが。これはファンサービス的な感覚ですか?
木皿 いや、無意識なんですよね~。
――そうですか? 僕は、高校生男子とロボットの恋愛物だと思いましたが。
木皿 自分では、恋愛物になってたのかなって微妙な思いが残っていたので。今回は恋愛物にしたいとは思ってました。河野(英裕)プロデューサー(「Q10」などを担当)に、「恋愛物も書けるぜ」って言いたかったし(笑)。
――「ハル」は、完全に恋愛物でしたね。人間と、死んだ恋人の身代わりロボットの恋愛という切ない恋愛ではありますが。
木皿 う~ん。正直、咲坂さんや監督がいたから恋愛物になってるのであって。
――ええ? そんなことはないと思いますが……。
若い人に観てもらいたい
――僕は試写で「ハル」を観て、今後も木皿さん脚本のアニメをぜひ観たいと思ったのですが。木皿さん、ご自身としてはどうですか?
木皿 そうですね……。監督さんがどう思ったかですよね。きっと納得して無いんじゃないかなと思うんですけど……。
和田 (驚いた表情で)いやいやいや。
木皿 してくれてるのかな?
和田 してくれてますよ!(笑)
木皿 ホントに? でも、次があるなら、今度は牧原監督のやりたいことをある程度すくって。それにウチも(アイデアを)乗せていくって感じにしたいですね。今回はウチが作ったイメージを、さらに(監督が)飛躍させて作ってくれたので。
――木皿さんの脚本のイメージを、牧原監督が膨らませてくれたわけですね。
木皿 あのイメージの飛躍は、本当にすごいですよね。
――木皿さんもそこまで楽しめたという「ハル」ですが。観てくれた人にとって、どんな作品になって欲しいですか?
木皿 今回はアニメということもあって、10代の人に観てもらいたいと思って書いたところがあるので。若い人に観てもらって、どう思ったか聞きたいですね。
――なるほど。
木皿 お話としては(昔から)よくある話。だけど、今は無いような話の気もするし。きっと、若い人たちはすごく深いところで、この話をちゃんと拾ってくれる気がするんです。
――ま、当然ですよね(笑)。
木皿 年を取った人は、エンターテイメントとして、楽しんでくれるんじゃないかなって気がします。あ、ウチの母ちゃんが面白いと言ってくれたら、一番嬉しいですね。私の書いた話は、たいてい「分からん!」って言われるんで(笑)。
(丸本大輔)