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大物YouTuberに喧嘩売る炎上キャラ「シバター」の知的な側面

ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんが、YouTuberの人気を分析するシリーズ。今回はシバターを取り上げます。

成人式のクソみたいなヤンキーに突っ込む動画が最高!


大物YouTuberに喧嘩売る炎上キャラ「シバター」の知的な側面

飯田 シバターはパンクラスのプロレスラー/総合格闘家で炎上系YouTuberという珍しいひとですね。でも実はいい人だという……。キッズよりはもうちょい高校生・大学生以上が見たほうがおもしろさがわかると思います。



「俺んちのポストにいたずらしたやつがいる!」って言ってキレてる動画で、ポストにコロナビール入ってるとかタコスが入ってるとか(そして全部食べるという)、さすがに自作自演だろうっていうあの感じのプロレスラーとしての迫力とプレゼン能力のムダ使いがやばいw

藤田 シバターさん、めっちゃ面白かった。何度も爆笑しました。いわゆるスカしたYouTuberというよりは、もっと下品系。プロレスラーだけあって、「対決」芸が面白い。自分にイタズラ電話をしてきたやつや、コンドームを郵便受けに入れてきたやつと対決するときの緊張感は、見ていてスリルがあってよかったです。声とか表情は豊かだというのもありますが、「度胸」ですよね。
 成人式のヤンキーの中に突入していくやつとか、あんなのなかなか撮れない。腹を抱えて転がってしまいました。あれ傑作です。



飯田 イタズラしてきたキッズにガチで説教したり、公園でドローン飛ばして話題になった動画配信者のノエルに説教したり、怒りまくってるんだけど、基本、人として間違ってるときにしか怒ってないんですよ。ときどきネタで怒るものもあるけど。



藤田 お笑いで言えば小藪さんもそうですけど、「説教」って、一つのコンテンツとして成立していますよね。でも、シバターさんは正論一本槍でもないのが面白い。

飯田 YouTuberになりたいというキッズに対する防波堤的存在だと思う。UUUMやYouTubeJapanに対する批判や内情暴露も、文春的なゴシップ提供でありつつも、社会の汚さとルールを若い人に教えている感じがしますね。一見そうは見えないんだけど、実は教育的。まあ、パチスロはやっててそういう悪影響(?)はあるかもますが。
「話題になること」と「社会人としてのルールを守る」ことをいかに両立させるか? 「有名になるためには過激なことをすればいい」となりがちな状況でどうバランスをとるのか、という、けっこう大事なところをついている動画配信者だと思います。

vs.大物YouTuberのアングルづくりがうまい!


藤田 そうなんですよね、YouTuberに対する批判のようなものがあるんですよね。「好きなことを仕事にして生きていく」みたいなYouTuberPR動画の中で、「好きでもない商品を紹介して」みたいにバンバン批判しているのが面白かった。



そこは、やっぱり、プロレスラーとしてのバランス感覚ですよ。いかに、安全に危険なことをやるか、いかにガチに見えるようなネタをやるか……

飯田 そうだね。プロレスラーってもともと演技がかっているというか、役割を引き受けてムチャやる仕事なので動画に向いている。マックスむらいやHIKAKINはいじり倒しつつも、はじめしゃちょーが炎上したら「許してあげようよ」って力説した動画つくったり、独特なバランス感覚がある。ま、基本、若いひとにはどちらかといえば寛容ですね。

藤田 パズドラのレアモンスターを売られて、怒って泣き叫ぶ演技は、見てて「フェイクでしょ」って感じがして微笑ましいんだけど、チェーンソー持って襲ってきてドアを突き破ったのは、素晴らしいと思ったw カメラマンが襲われるあれ。急にリアリティレベルが変わって、『死霊のはらわた2』みたいになって、ドアを突き破る大胆さw 打ち合わせとか緻密にやっているんだろうな、と驚きましたよ。



飯田 チェーンソーすごいよねw あれは大人じゃないとできないw
本人はレスラーとしてもYouTuberとしてもメインストリームじゃないことを自覚していると思うんです。そのなかで本人いわく「いろいろやってきたけど千載一遇のチャンス」というこのYouTubeの盛り上がりのなかでどうやっていくか(YouTube以前から彼は動画配信をやっていますが)。長いものに巻かれすぎないで、どう立ち回るか。
 ガタイがでかい人がでかいリアクションしたり感情爆発させてるとそれだけで見ちゃう。スマホとかで見る動画だから。テレビとか映画ではそうはいかない。YouTubeだと比較対照がYouTuberだから目立つ。プロレスラー、格闘家がゾロゾロ並んでいたらそこまで目立たないのかもしれないけど。そういう、相対的な評価の世界だということをよくわかっている。

藤田 完全に、YouTuberの定型にはノリ切らないで、ちょっとズラしたり、皮肉を効かせるところが魅力ですよね。そこは実にカッコいい。

飯田 ちゃんと作り込んであるやつのほうがおもしろい。ひとりでカメラ目線でしゃべるだけのやつよりも。もちろん、毎日つくってるわけだから、簡単なものも混ぜないとネタも尽きるし時間もかかるのはわかる(本人もYouTubeが報酬下げたことをグチってたりしたし、それ以降、動画がたくさんアップされたことも指摘されている)。



藤田 話しているネタのやつも、ぼくは嫌いではないですけどね。でも、動画としての完成度は低いのは確かで。映像が動かないですからね。

飯田 ひとりしゃべりのものも、プロレスラーの試合前や試合後のマイクパフォーマンスと、YouTuberのキャラの立て方、見せ方、しゃべり方が似てると発見(?)してYouTube界に持ち込んだのはうまいと思う。

藤田 ぼくはプロレスそのものはあまり見ないんだけれど、プロレスラーの方の持っている「面白さ」には敬意を払います。YouTuberとプロレスラーが組み合わさって、非常に良い化学反応をしている才能の持ち主ですね。リアル/フェイクの境を、身体を持って体現する人たちだから、そりゃYouTuberブームに合うでしょう、という感じがします。

飯田 UUUMのトップYouTuber勢がいてシバターみたいなヒールがいて……っていう構図のつくりかたが実にプロレス的。両方いて、よりおもしろくなる。こういうプロレスラーがいただろうかと考えるとよくわからない。ひょっとしたら画期なのかもしれない。

藤田 全日/新日/電流デスマッチ 的な。確かに、他のYouTuberに絡みにいくやつとかは、ヒップホップ的というよりは、プロレス的ですよね。

飯田 ラップしてる動画もあったけどもw



最強のYouTuber評論家はYouTuberである!


飯田 YouTuber界隈って、シバターみたいに実作者が評論もやっている。

藤田 「評論」や「批評」とは、動画の中でということですよね。

飯田 そうですね。クリエイターがいて評論する人がいて成り立っているというどこの業界にでもある構造がYouTube界にある。でも、批評専業のひとはほとんどいない(2ちゃんはあるけど匿名だから)。そういう意味では、YouTubeの世界は現代詩に似ているんですねw お互い言及しあってディスりあっているという意味では評論業界にも近いけど。

藤田 字の批評は、字に慣れた読者にしかリーチしないから、映像の批評は映像でやるべきだ、とぼくは昔から思っていたけど(いくらか実際にやっていますが)、ジジェクが「映画を批評する映画」を作ったり、浅田彰さんがTVで高速道路を走っているのを背景にポストモダンを語っているのと似ているのかもしれない。その子孫というのかな。

飯田 映像による映像批評ができる環境が整ったことも大きいだろうね。
 シバターは「ファンを減らさずに言いたいことを言ってるキャラみたいなスタイルをやる」って自分でも言っていて、評論家/ヒールポジションを引き受けている。

シバターのねじれた知性


飯田 ただねじれているっていうか、それが「キャラ」であることがバレてるのにキャラを演じ続けつつ、しかも手の内も自分でしゃべりつつやるという、めんどくさいことをやっている。
 まあでも……今はみんなそういう生き方しかできないのかもしれない。「俺、こういうキャラだから」「でもこういうキャラ疲れるんだよね」「こういうキャラでいるとわりと人気出るから」とか全部言っちゃいながらやるという。

藤田 そりゃ、「キャラ」だと分かっていてもノルのがプロレスですからねw しかし、その自己言及性とメタ性は気になるところですね。知的なんですね。
 ビジネスの手法として、その基盤を自ら掘り崩すやりかたをする人は少ないと思いますよ。手の内をバラすこと自体によって、自身の活動を維持するのは、ある意味、沼にはまったときに自分で自分の頭を引っ張って宙に浮かんだミュンヒハウゼン男爵みたいなところがありますね。でも、「崩れそう」なギリギリのスリルを提示しつつ、フェイクとガチの境界線上に立ち続ける才覚は、やっぱ、バランス感覚というか、才能と言うしかない。
「本業はこれじゃない」っていうのも大きいかもしれませんね。それで、「これで食っていくしかない」人にはできない吹っ切れたことが出来てしまう。

飯田 いやたぶん収入的には動画関連がいちばん大きいと思いますよ。

藤田 収入よりは、(少なくとも当初の)アイデンティティの持ち方としてですね。

飯田 ああ、それはそうですね。
 シバターみたいなコワモテが斬る、キレる、ボケる。シンプルに、こういうのがうけるのはわかる。でもそれにとどまらない「ねじれ」、メタ性を抱えているのが僕は魅力に感じます。シバターと同じ内容をヒョロいひとが言ってもたぶん迫力が出ない。このガタイだから成立している。しゃべりの内容と本人の身体性が不可分なのがやはりYouTuberの世界なんだと思う。シバターを見ていると『フリースタイルダンジョン』みたいな感じで『YouTuberダンジョン』をやればいいんじゃないかw バトルYouTube。お互いをいじる動画と俺SUGEEをアピールしまくる動画をつくって対決。盛り上がる……はず。

藤田 個人的には、非常に好きなYouTuberさんでした。また傑作を作ってください!
身体的な迫力はすごいw やっぱ、できないことをやってくれる。カッコいいです。

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