連続ドラマ「あなたのことはそれほど」6話(TBS系)。

共感を全く持てない主人公・美都(波瑠)の気持ちを、頑張って理解してみようと思う。

「あなたのことはそれほど」6話。非難轟々の美都の気持ちを百歩譲って理解してみる
原作3巻

あらすじ


涼太(東出昌大)との生活に息が詰まった美都は、家出をしてカプセルホテルに泊まる。香子(大政絢)から連絡があり、「涼太に美都の力になって欲しい」と電話があったとのこと。説教をされた美都は、香子の家に泊まることに。

一方の有島(鈴木伸之)は、麗華(仲里依紗)の勘の良さにキモを冷やす日々。そんな中、麗華が体調不良の母親(清水ミチコ)に付き添っている隙に、いつものバーで美都と待ち合わせをする。

頑張って美都の気持ちを理解してみる


久しぶりに有島に会った美都は、笑ってしまうほどのバカ女だった。夫を裏切り、親友の気持ちを踏みにじり、全てを捨てての不倫愛。そういった覚悟が全く見られない笑顔で、有島の肩にもたれかかり、「逃げよっか?二人で」と、青春真っ只中の中学生のような発言。

バカだ、クズだ、ゲスだと巷で好き放題言われている美都には、どうしてこうも罪悪感というものがないのだろうか? そこで、順を追って美都の思考について考えてみたい。

「彼氏にするならイケメン、結婚するならイケメンじゃなくても誠実でしっかりとした経済力のある男だよね」という慣用句の様な恋愛観がある。対して男には「彼女にするならとにかく可愛い子、でも結婚するなら優しくて家事が上手で癒やされる娘がいい」というものがある。ここに「ちょっと危険な匂いのする男」とか、「子供好きの娘」とかが足されたりもする。

実際には“誠実でしっかりとした男”と“癒やされる娘”なんていうのは、美男美女よりもずっと貴重で、よっぽど夢物語な存在だ。だが、将来を見据えたクールで大人びた意見に聞こえなくもない

美都は、占い師の「二番目に好きな人と結婚すると幸せになる」という言葉も手伝って、この一見大人びた恋愛観に、背伸びしたいだけの中学生の様に憧れ、結婚相手を選ぶ。
つまり、大人っぽい自分に満足するため、それだけで涼太と結婚してしまったのだ。これでは、結婚に対する責任感というものが生まれる訳が無い。

ここが美都を理解するために最初のポイントだ。この背伸びで結婚したという気持ちを飲み込めれば、美都の気持ちはギリギリ理解出来る気がする。ほんとギリギリ。

少女脳に「運命の再会」は相性が良すぎる


背伸びで結婚してしまったので、日々の刺激の無さに疑問を持つようになってしまう。だが、普通こうなったとしても、時が経てば現実を見て自覚が沸き、そのまま結婚生活を続けていくか、離婚するかの覚悟を持つことになる。

だが美都の場合は、そういう時間が経過する前に、「運命の再会」という中学生の恋愛観からすれば、大正義のフレーズが脳内に舞い降りてしまう。

「運命の再会」という言葉を振りかざし、当然のように有島と不倫。結婚の責任感を持っていない上に、「運命の再会」を全うしているのだから、罪悪感なんて生まれる訳がない。子供が欲しいと涼太に言われても、「今楽しい所なんだから邪魔しないで」と言わんばかりに拒否してしまう。恋する中学生にとって、恋愛は何よりも大事なのだから、美都にすれば当然の選択。わかるわかる。


そんな美都にも、罪悪感を感じるきっかけが生まれる。それは、涼太に不倫がバレてしまった事だ。しかし、ここで普通に涼太が怒ったり、悲しんだりしてくれたら罪悪感を感じる事が出来たのだが、そうではなかったから美都も運が悪い。

「この先どうあろうが、今の君がどうあろうと、それでも一生愛する事が出来る」と、涼太に異常な恋愛観を表明され、罪悪感が生まれる前に、恐怖が生まれてしまった。こうなると、可哀想な人ではなく怖い人だ。相手は理解不能な怖い人なのだから、、自分のした事とはまた別件で、理不尽に傷つけられたような錯覚に陥ってしまう。よって被害者意識が生まれる。

居心地が悪くなって家を出て行くが、最も信頼出来ると思っていた親友の香子までも涼太の味方に。香子の言っている事はハッキリと理解出来るものの、所詮、涼太の本性を知らない人間の意見。素直に受け入れる事が出来ない。問題はそこじゃないって思ってしまう。

唯一信じられる有島から「今日会えない?」のメール。
当たり前のように飛びつき、「逃げよっか?二人で」と、中学生発言をしてしまったという流れだ。筆者はこれでなんとか美都の感情が理解できた。

どうなのだろう?女性の方が美都の気持ちがわかるのだろうか?それとも、逆に嫌悪感が強くなってしまうのだろうか?

むしろ有島がわからない


こうなるとわからないのはむしろ有島だ。家庭を守りたいなら、美都なんてヤバイ女とは会わないようにするべき。なのに別れ話をするという名目で二回も会ってしまっている。しかも、美都にわざと言いくるめられているようにすら見える。こんな崖っぷちの状況でも、美都も家庭もどっちも諦められないんだから、やっぱり事の重大さをわかっていない。

今夜放送の第7話では、ついに美都が離婚を口にする。当然、涼太は受け入れないだろうが、一体どうなってしまうのだろうか。しかし、「あなたのことはそれほど」ももう終盤。ハッピーエンドで終わりそうな人物が一人もいない。

(沢野奈津夫@HEW)
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