連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第15週「恋、しちゃったのよ」第85回 7月10日(月)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也
「ひよっこ」85話。菅野美穂は岡田惠和のラッキースター
イラスト/小西りえこ

85話はこんな話


貸し切りお食事会の闖入者・女優の川本世津子(菅野美穂)は、すんなり帰っていき、乙女寮の楽しいお食事会がはじまった。

素敵な女優


84話に次いで、直虎ふう増田明美が登場して、先週の簡単な振り返り。
そのあと、川本世津子のプロフィールと、彼女が見た目だけでなく性格も素敵なことがわかる。

時子(佐久間由衣)とのやりとりは、若干「あまちゃん」(13年)の、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)とアキ(能年玲奈、現のん)の出会いのようでもあり、「ごきげんよう」のあいさつは、「花子とアン」(14年)を思い出させと、朝ドラ名場面のあわせ技であった。

「英語もできる人みたいにね」と、方言と標準語を使い分けられるようにすると良いと、時子にアドバイスする世津子。時子たちの茨城の言葉をなぜか気にしているようだ。うーん、これって・・・。でも、こういうとき、ナレーションは何も言わない。

菅野美穂と岡田惠和


さて、菅野美穂は、前作の朝ドラ「べっぴんさん」ではヒロインのお母さん役とナレーションを担当していた。
引き続き登場という異例な事態は、岡田惠和が「戦友」として、今回、出演してもらうことにしたそうだ。どれくらい戦友かというと、岡田作品の「イグアナの娘」(96年/原作:萩尾望都)、「君の手がささやいている」シリーズ(97年〜2001年/原作:軽部潤子)ではヒロイン、「ちゅらさん」(01年)では、主人公の住む東京のアパートの住人(メルヘン作家)役で出演していたことをはじめとして、ほかにも何作も岡田作品に出ている。しかも、「イグアナの娘」は、後半、視聴率がグイグイ上がっていった伝説の作品であり、「君の手〜」は、「ちゅらさん」の年までシリーズ化され、その年、岡田は橋田賞をとっている。菅野美穂出演作は岡田にとって幸運の作品でもあるはずだ。
ということは、「ひよっこ」後半戦、菅野が幸運をもたらすのではないか、と期待がかかる。ちょうど視聴率も上向いてきたようだし、盛り上がってほしい。

乙女たちの近況


お食事会で、結婚することを報告する優子(八木優希)。

みんな、わーって、驚いていたが、うすうすわかっていただろう。でも、直接聞けて、嬉しかったのだろうな〜と、みんなの素直な表情にほっこり。

一番目立たなかった子が幸せになるパターンとして、豊子(藤野涼子)が、谷崎潤一郎の「細雪」を例に出し、三女が最後には幸せになります、と知識を披露した。でも、例えば、オルコットの「若草物語」のように、三女が病弱で死んでしまうパターンもある。後者のような悲劇展開を選択しないでくれて、岡田さん、ありがとう。
幸子(小島藤子)も時子も澄子(松本穂香)も、みんな、充実した日々を送っているようで、良かった良かった。
なにより、元治(やついいちろう)とヒデ(磯村勇斗)が腕によりをかけたメニューの前菜“トマトのファルシ乙女寮風”が、みんなの出身地の食材を使っていたところに愛と連帯を感じた。
(木俣冬)
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