“狙われる側”の芸能人(公人)が“狙う側”のマスコミに「自分が叩かれた場合、どんな気持ちになるか?」を迫った格好だ。
週刊誌記者・木村多江に追及の手が伸びる
10月よりスタートした新ドラマ『ブラックリベンジ』(日本テレビ系)。

将来有望な政治家だった寺田圭吾(高橋光臣)は「週刊星流」にスキャンダル記事をスクープされ、それを苦に自殺。妻の今宮沙織(木村多江)は最愛の人、そして生まれてくるはずだった新しい命を奪われてしまった。
5年後、そのスキャンダルがねつ造である事を知った沙織は「週刊星流」の契約ライターになり、スキャンダルをねつ造した塚本修二郎(神尾佑)、愛原サユミ(芹那)、南條夕子(横山めぐみ)への復讐を誓う。……が、このドラマの設定である。
10月19日に放送された、『ブラックリベンジ』第3話。塚本とサユミの裏を暴き、晒し、炎上に至らせることで社会的抹殺に成功した沙織の次なるターゲットは、通販業者最大手の会社社長に収まる南條夕子だ。
この時、実は“狙う側”であるはずの沙織に対しても追及の手が迫っていた。沙織の存在に違和感を抱く「週刊星流」デスクの天満龍二(平山浩行)は、便利屋の城田純一(DAIGO)に沙織の事を探るよう依頼。城田は沙織の自宅に侵入し、部屋の壁に貼られた圭吾の記事や妊婦の沙織と圭吾の写真、塚本たちの写真を発見。沙織が何をしようとしているかを察してしまう。
要するに、この構図は“狙う側”であった沙織が“狙われる側”でもあるという、表裏一体の状況だ。
客を装って潜入取材する実践編
“超やり手記者”である沙織だが、第3話では後手に回った印象。城田からは「あんたが復讐してることバラされたくなかったら1千万円よこせ」と脅迫され、「あと少しで終わるのに、あんな奴が現れて……何者なの!?」と、あからさまに狼狽してしまう。
一方の天満は、圭吾の元秘書であり、現在は投資家の高槻裕也(堀井新太)が営むバーへ客を装って潜入。沙織のことを聞き出そうと試みた。ちなみに、天満と高槻は愛原サユミの結婚式(第2話)に出席している。店内で両者が交わした会話は以下だ。
天満 「星流」見た、あの時の記事? 結婚式の時にマスコミが撮った写真が「星流」に載ってるんだよ。愛原サユミは事実上引退らしいよ。
高槻 自業自得じゃないですか。清純派を装ってファンを騙していたわけですから。
天満 まあ、芸能人なんてみんなそんなもんだろうと思うけど、これで彼女の人生は終わりだよ。「星流」が終わらせた。
高槻 そもそも「星流」って、そういう雑誌じゃないですか。過去にだっていくつかあったでしょ? 人生を終わらせたことは。
天満 ……まぁ、そうだね(笑)。
不思議なキャッチボールだ。「週刊星流」デスクのはずの天満が同誌……というよりも沙織の行いを非難。それを、部外者のはずだが、実は沙織の協力者である高槻がフォローするという攻防。
この事実をお互い、おくびにも出さず展開していくのである。全てを知った上で対峙する“狙う側”と“狙われる側”のやり取り。怖くなってくる。
あと、こんな風に潜入取材を行っているのかと、裏側を垣間見た感もある。何しろこのドラマ、元週刊文春のエース記者・中村竜太郎が監修しているのだ。

熱き激情で独占告白させようと説得
「南條夕子を私の手で必ず地獄に叩き落す」と狂気に満ちた目で誓う沙織は、南條の住むマンションへ連夜のように現れた川崎隼也(大和孔太)に注目。隼也は南條に密着したバラエティー番組や南條の会社のカタログ、南條の系列会社のCMに数本出演する、19歳の売れない俳優兼モデルだ。
「やっぱり南條は芸能の仕事をエサに、川崎隼也を食いものにしてる」(沙織)
そして、隼也が出演する雑誌の撮影現場へ乗り込む沙織。「南條が自分を囲っている」と、隼也に独占告白させようと考えたのだ。
隼也の前に現れた沙織は、数々の強烈な訴えで説得にかかる。「これから南條夕子に抱かれに行くんでしょう?」、「南條に奉仕することで与えられる仕事はマイナーファッション誌の街角スナップや通販雑誌の商品モデルばかり」、「大きな仕事を与えれば、君は売れてしまうかもしれない。そうなれば都合よく呼び出すことができなくなってしまう」、「君が将来、自力で売れるチャンスを掴んだとしても、彼女は裏で手を回し、圧力をかけて売れないように操作するでしょう」、「潰される前に潰してしまえばいい。君が南條夕子にされたことを一部始終、独占告白するのよ!」。
冷酷にスキャンダル記事を発信し、公人を切って捨てるのが週刊誌。……というばかりでもないらしい。熱き激情で、取材対象を説き伏せにかかる記者。とは言え、目的はスキャンダルなのだが。
取材中の不法侵入を激写される記者
説得に応じた隼也は「夕子さんと一緒にいる現場をカメラに収めてください!」と、沙織に逆提案する。
ここからがヤバい。
……違った。扉を開けると、沙織の方へ放たれるフラッシュ! なんと、待ち構えていた隼也が沙織を逆激写している。沙織がハメられた!
「どう、撮られる側に回った気分は!?」
「撮った写真、これどうしようかな? 完全に不法侵入だよね! どっかに売っちゃおっかなー! 今まで“星流砲”を受けた人の気持ち、味わってみる?」(隼也)
またしても、沙織は後手に回ってしまう。“狙う側”のマスコミが“狙われる側”へ回った格好だ。
それにしても、沙織が隼也へ吐いたセリフは秀逸だ。南條に奉仕することでマンションも金も与えられた隼也は「お金もらえるんだったら、喜んで舐め回されるっつうの!」と、開き直りの態度を見せる。そんな隼也に「どうやら、ただのクズだったようね」と吐き捨てる沙織。
“裏”を持つ人間の後ろめたさは、決して誇れるものではない。しかし、人のプライバシーを暴き、それを衆目に晒す週刊誌記者がハイエナ扱いされることの方が多い。だが、今回は記者の側が取材相手を「クズ」と断罪!
いろいろな意味でねじれが起こっている。
(寺西ジャジューカ)