『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』(テレビ東京・水曜21:54〜)第3話。

みなさん既にご存知の通り、本作に出演中の大杉漣さんが、第3話の放送日である2月21日に亡くなりました。


最終回までの撮影がまだ終わっていないことに加え、漣さん含め多くの出演者が本名での出演という特殊なドラマだけに、残りの回の放送継続は難しいのかも……と心配していたのだが、テレビ東京が「最終話まで放送する」という英断をしてくれたので、「エキレビ!」も残りの回、通常営業でレビューさせて頂きたいと思う

放送直前に訃報が飛び込んできたもんで、第3話のリアルタイム視聴時には正直、内容がまったく頭に入ってこなかったんだけど、改めて見直してみたら、ホント、面白回だったんだよ……。
最終回まで面白ドラマのまま突っ走って欲しい「バイプレイヤーズ」ホントに面白回だった3話

これは『プロジェクトX』か!


今回のナレーションは田口トモロヲ。

この声を聞くだけで『プロジェクトX』もしくは『ドクターX』っぽさが出て、感動する準備オッケーな感じになってしまうのだが、内容はサイコーにくだらない!

メイン回のはずなのに、ドラム缶風呂に入ったまま寝て朝まで意識を失っていたせいで、ヘヴィーな風邪をひいてしまった田口トモロヲ。

ずーっと部屋で寝込んでいるので、LINEなどで他のメンバーたちと絡みはするものの、ほぼ誰とも一緒の画面に入らないまま進行していくという異色の展開だった。

これは、ドラマの撮影期間が田口の出演する舞台の稽古&本番と重なっていたため、田口の出演シーンだけ事前にまとめ撮りしなければなかったという事情があるのだが、寝込んで苦しんでいる田口が、女性が遊びに来て浮かれている他のバイプレイヤーズたちに悶絶しながら突っ込むという、抜群に面白い構成となっていた。

童貞エロコメディドラマ感がハンパない


田口が風邪をひき(劇中ドラマの)撮影に参加することができなくなったということで、バイプレイヤーズ演じる「島おじさん」に代役が立てられることになる。

ただでさえ遭難騒動のせいで代役を立てられて、ほぼモブである「島おじさん」に降格しているというのに、さらに出演シーンがカットされるということだ。

そこで代役としてやって来たのが「島マダム」。戸田菜穂、峯村リエ、ふせえり、馬渕英里何、大島蓉子という、男性陣に負けず劣らず色んなドラマで顔を見かける女バイプレイヤーズたちだ。

さらに、メインキャストである吉田羊&彼女とケンカする役として板谷由夏も撮影に参加。

役を取られて例のごとく大杉は激怒するのだが、遠藤憲一、松重豊、光石研は女性グループが撮影に加わるということで、ちょっと嬉しそう。

そこへ、吉田羊との関係性に悩む板谷由夏が、バイプレイヤーズたちの暮らす「島ハウス」にやって来るという情報が入って色めき立つ!

考えてみればこれまで、ほとんど女っ気のない撮影現場(まあ、本田望結ちゃんはいるけど)。宿泊場所も、おじさんオンリーで共同生活をする「島ハウス」という男子高状態だった。


「板谷さん結婚してるし」

とは言いつつも、しかも自身も既婚者だというのに何かを期待してしまう気持ちはよ〜く分かる! 男って……おじさんになってもそんな感じなのだ。

いよいよやって来た板谷由夏の要件とは、「吉田羊が好きすぎて、ケンカするような演技ができない」という、色っぽい展開を期待している男性陣からすると面白くも何ともない相談。

しかし、

・吉田羊はおしぼりで顔をふく
・お茶でうがいをする
・板谷のことを「いたたに」と覚えている

など、板谷が大好きだという吉田の悪口を吹き込むことで酒をグイグイ飲ませ、力業で「あわよくば」を狙いに行く。

板谷が酔っぱらって寝込んでしまうと、「洗い物、明日やるんで、もう寝ましょうか」と言いつつ、他の二人を出し抜いて板谷の寝ている1階に行こうとして……。

昭和の頃にはいっぱいあった、童貞エロコメディドラマ感がハンパないのだ。久しぶりに見たな、こういう雰囲気。

大杉漣は面白おじさんをやり切っていた


一方、大杉漣は、代役が立てられたことに関して撮影現場に文句を言いに行ったところ、なぜか敵視していた「島マダム」たちと食事に行くことに。

「どうして島マダムに差し替えとなったシーンを、田口トモロヲ抜きの島おじさんたちでやらなかったのか?」という質問に対して答えた、大杉の「ひとりでも欠けたくないんで。だってオレたち、仲間だからさ」というセリフ。

リアルタイムで見た時は、大杉の訃報を知った直後だっただけに、格好いい、そして今となっては切ないセリフとして捉えちゃってたんだけど、よくよく見直したら面白セリフだったね。

要は、田口が風邪をひいて寝込んだと知った監督からアッサリ代役を立てることを決められちゃったのに、「ひとりでも欠けたくないから、田口抜きでの出演を俺が断った」と精一杯の見栄を張っていたのだ。

こういう時期だけに、関係ないところまで「漣さんの最期のメッセージが……!」などと感傷的に受け止めてしまいがちだけど、あくまで面白ドラマだということを忘れちゃいけない!

大杉漣も、最期まで「面白おじさんの役」をやり切っていたのだ。

「イカ臭い」って表現、久々に聞いたよね


翌日、吉田羊も「島ハウス」にやって来るのだが、吉田は「独身だよね」ということで、さらにテンションが上がり、男たちのバカっぷりが全開。

「板谷が大好きだ」という吉田に、板谷の悪口を吹き込んでいるところに、再び板谷がやって来てメチャクチャなことに……。


という、ストーリーはあってないようなドタバタ展開だったのだが、おじさんなのに童貞感を出しまくっているバイプレイヤーズたちに対して、寝込んでいる田口トモロヲが絶妙なタイミングでちょいちょい突っ込みを入れていくのがサイコーだった。

下でイカを食べていると知れば、「イカ……イカ臭い! イカ臭い!」と悶えつつ、枕元にエロ本&使用済みティッシュが散乱していたり。

一人芝居だけに、いつもに輪をかけてやりたい放題なのだ。他のバイプレイヤーズたちとの絡みもいいけど、誰にも気を遣わない全開の田口トモロヲもいい。絡みの演技だったら、誰も対応できないフリーダムさ!

そこに『プロジェクトX』的な感じで田口のナレーションが乗ってくるんだから、もうタマラナイよ!

本当だったらゲラゲラ笑いながら見るような回だったんだけどねぇ。

残り2話、笑わせて欲しい!


とにかく気になるのは、まだ撮影が終わっていなかったという、残りの第4〜5話がどういう形で放送されるのかということ。

本人役での出演、さらにドラマ自体も「代役」がテーマになっているだけに、大杉に代役を立てて……というのは考えにくいが、今回の「田口トモロヲだけ別撮り作戦」のように、上手いことごまかしつつも、サイコーに面白いドラマに仕上げてくれると信じている!

どうしても見ている側も「コレが本当に遺作なんだ……」としんみりしちゃうけれど、そんな気持ちを払拭する「面白おじさんドラマ」として最期まで突っ走って欲しいところだ。

……というか、第3話の放送日の段階で、まだ第4〜5話の撮影が終わっていないって、連ドラってそんなタイトなスケジュールで撮影してるんだね。

どうなることやら心配しつつも、放送を楽しみにしたい。
(イラストと文/北村ヂン)
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