ブタ「山本でーす」
2匹「二人合わせて、タイムマシーン3号でーす!イェ〜イ!」
舞台で漫才を始めたタイムマシーン3号……だが、二人とも動物の着ぐるみを頭からすっぽりかぶり、中身が本人かもわからない。そのまま漫才は続けられ、関のボケに山本がトライアングルを「チーン」と鳴らし出す始末。
これは『有田Pおもてなす』(NHK総合・土曜22:10〜)の一コマ。どちらも普段はこんな芸風ではないのに、いったい何が起きているのか?

「ネタ中に本物の馬を出してください」
『有田Pおもてなす』では、有田哲平(くりぃむしちゅー)がプロデューサー「有田P」となり、毎回スペシャルゲストをもてなすお笑いライブを計画する。ゲストには事前に60項目にも及ぶアンケートに答えてもらい、趣味趣向を完璧に把握。これを踏まえ、有田Pは収録2週間前に芸人に「スペシャルゲスト用のオリジナルネタ」をオーダーする……。
……のだが、有田Pの「おもてなし」精神は度を超しており、そのプロデュース案はめちゃくちゃ。
葵わかなが「行きたい国:スペイン」と答えれば、とろサーモンに「スペインっぽさを出したいので、漫才中にハモン・イベリコ(生ハム)を食べてください」と頼み、土屋太鳳が「好きな芸人:間寛平」と答えれば、ライスに「間寛平さんのギャグを5つ入れて下さい」と無茶振り。寺島しのぶが「好きな動物:馬」と答えたときは、「本物の馬を用意します」とニッチェを怯えさせる。

突拍子もないプロデュース案に、芸人たちは「頭おかしい」「ボケが死にます」「人のギャグですよ」「本物の馬!?」と難色を示すものの、有田Pは聞く耳を持たずゴリ押し。5分のネタ中に3つの「おもてなすプロデュース」を必ず入れ、2週間後にスタジオで披露せねばならないのだ。
「着ぐるみ」でボケ倒すタイマ
芸人たちもゴリ押しされてばかりではない。一見無謀とも思えるプロデュースを、いかにネタの中に自然に溶け込ませるかが勝負どころだ。
冒頭のタイムマシーン3号は、寺田心の「好きで集めているもの:ぬいぐるみ」から、全身着ぐるみで漫才をする羽目に陥った。「好きな楽器:トライアングル」なので、トライアングルでツッコミを入れて欲しいというオーダーも加わる。
ただ、どんな着ぐるみかまでは指定がない。タイムマシーン3号は痩せている山本を「ブタ」、太っている関を「オオカミ」にし、「ぬいぐるみ逆だろ!」とボケを作り上げる。その後も、顔が見えないのに「今日は僕たちの顔と名前だけでも覚えて帰って下さいね」と言い放ち、バルーンアートをするために躊躇なく手の部分を外す。
さらに、山本が関の頭にツッコミを入れると、着ぐるみの頭部がどんどん後ろに回っていってしまう。ここで「もっと優しいツッコミにしてよ」というフリが発生し、トライアングルのツッコミへとにつなげていった。
着ぐるみで新たにボケを作り、トライアングルの登場も自然に見せる。芸人たちはプロデュース案に翻弄されるだけではない。逆境を味方にし、笑いに変える手腕を見せてくれるのもこの番組の醍醐味だ。
100人の合唱隊 vs さらば青春の光
番組開始2回目にして、有田Pに「クライマックスかもしれない」と言わしめたのは、さらば青春の光だった。
この回のゲストは松雪泰子。さらば青春の光を呼び出した有田P、「松雪様は映画『フラガール』に思い入れがあるらしいので」とフラダンサーを12名用意するという。
有田P「最近うれしかった事が『息子さんが学校の合唱コンクールで最優秀賞をとった』と。それをちょっと味合わせたりできないかなと……実は、先に予約をしちゃってまして……」
さらば森田「予約!? 予約て?」
有田P「遠回しに言ってもダメですもんね。100名の合唱隊を用意してます」
さらば東ブクロ「いま、112人ですよ!?」
2週間の猶予ののち、さらば青春の光が用意したコントは「いじめのクオリティが高すぎる」というものだった。舞台は教室。森田を転ばせるためにピアノ線を張り、机の上に生け花を飾り、上履きを新潟の佐渡島に隠したと笑う東ブクロ。「ほらお前踊れ!俺の前で踊れや!」とけしかけると、舞台袖から12名のフラダンサーが登場。森田のバックで華麗に舞う。
もはやいじめられているのか、もてなされているのかわからない。うろたえる森田に向け、東ブクロはニヤニヤしながら「♪お前の母ちゃんデ〜ベ〜ソ〜」と歌い出す。急にクオリティ下がった!とツッコまれるも、後ろの幕が開くと学生服姿の合唱隊100人がスタンバイ。「全校生徒!?」と腰を抜かす森田。
東ブクロ「♪お前の母ちゃんデ〜ベ〜ソ〜」
100人「♪お前の母ちゃんデ〜ベ〜ソ〜」
東ブクロ「♪お前の母ちゃん……」
100人「……♪デ〜ベ〜ソ〜」
森田「こんな美しい音色の悪口はじめて!」
「これだけちゃうから」と東ブクロの指揮のもと、松雪泰子の息子がコンクールで歌った中孝介「花」を歌う合唱隊。松雪泰子が目を潤ませるなか、総勢114名によるコントは無事終わった。「人数が多すぎ」なプロデュースを、そのまま「人数が多すぎる」というボケに昇華した見事な構成だった。
バラエティのお約束である「無茶振り」を、芸人の発想とスケールでエンターメイメントまで仕上げる『有田Pおもてなす』。5月12日放送の『有田Pおもてなす』のゲストは中山美穂。ネタを披露するのはにゃんこスターとエレキコミック。にゃんこスターはいったい何の曲で縄跳びを跳ばされるのか注目です。
(井上マサキ)