連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第24週「風を知りたい!」第141回 9月12日(水)放送より
脚本:北川悦吏子 演出:二見大輔
「半分、青い。」141話、鈴愛と律がふたりで起業、名付けて「スパロウリズム」
連続テレビ小説「半分、青い。」スピンオフ漫画 「半分、青っぽい。」 なかはら・ももた  扶桑社
鈴愛の漫画の中の人なかはら・ももたのスピンオフ漫画。
なかはらさんは、発売当日、Twitterを使って都内を、希望者のいるところに移動しながらサイン会をやっていた。Twitterの◯◯絵から注目された彼女がTwitterを活用して自著を広げていく。これは素敵なことだと思う。

連続テレビ小説「半分、青い。」スピンオフ漫画 「半分、青っぽい。」

141話はこんな話


容態が急変した晴(松雪泰子)を心配して、鈴愛(永野芽郁)は律(佐藤健)を伴い見舞いにやって来る。

スパロウリズム結成


家で倒れて病院に運ばれ手術日程が早まった晴であったが、転んでもただではおきないというのかなんというのか、心配して飛んで来た鈴愛と律にふたりが再婚したらいいなあという希望を匂わせる。
晴の策を察した宇太郎(滝藤賢一)は病室に晴と律と鈴愛の三人を残して出ていく。さすが宇太郎さん。

晴としては万が一のことがあったら鈴愛が心配なのだろう。親心だ。
晴が思わせぶりなことを言い出して、コミカルな劇伴がかかると、律の表情がぴきっとなるのが面白い。
「誰かいい人・・・」と言われ律は、鈴愛と「スパロウリズム」(雀と律)という会社を立ち上げて「そよ風の扇風機」を作ると言って晴を安心させる。

「スパロウリズム」はその場のでっち上げだったが、そのままほんとうに会社を作ることになった。
「よかったらどうすか」なぜかアメリカから帰ってきてからの律は「〜〜す」と語尾がラフになっている。
アメリカナイズであろうか(ぎぼむすナイズか)。
ふたりはハイタッチして「スパロウリズム」は始動した。

昔のドラマだったら、この場で再婚の流れになってしまいそうだが、鈴愛と律は起業するパートナーとなっていくところが今日的ともいえる。
この流れ、連続性あるエンターテインメントを最後まで見せ続ける策を策と感じずに自然に受け止める人と、策が透けてみえて鼻白む人と二分するであろう。
策が見え見えなのもわかってやっている気もして、またそれがなんというかもやもやする。要するに、作者の狙いを見せずに話に没頭させてほしい(悲鳴)。


「ちょっと鈴愛ちゃん独特なところあるから」
「ふつう伏せるようなところ見せてくるから」
「でもそういうところが何か生み出せる部分じゃないかと思う」
「人と違うことって普通の感覚と違うことって何かの種だよ。そこから花が咲く可能性ある」

これは津曲(有田哲平)と恵子(小西真奈美)、兄妹の語らいの中で恵子は言ったことば。
津曲は鈴愛が書いた「お母ちゃんのオペが成功する」という文字を見て、そんなことをおおっぴらに書くものかと疑問に思い、それに対して恵子がこう言うのだ。
この「鈴愛」を「作者」と置き換えるとわかりやすい。「普通の感覚と違うこと」を今回の朝ドラはやっているのだろう。

夏の花火


津曲には子供がいて、離婚したのかなかなか会えないらしいことが匂わされる。律くんと同じ境遇かもしれない。
その頃、同じ、シェアオフィスの中では、律と正人(中村倫也)が語り合っていた。
「音だけの花火 なんか悔しいな」
「終わる恋より 始まらない恋のほうがいいのか」
「恋は必ず終わるもん 夏の花火みたいに」
正人がたそがれる。中村倫也だけは月9ぽい。詩的な台詞をふわっと聞かせるテクニシャンである。

前述したパートナー問題に関して、ここで回答が出される。
恋して、その気持がいつの間にか変容して、やがて終わり、二度と会えなくなるくらいなら、違う形で永遠に続けたい関係というのもある。
ない人もいるかもしれないが、ある人にはある。

そういえば、鈴愛と正人は夏の花火の火でひどいことになって終わったのであった。

この苦しさの中には沈まん


晴の手術がはじまった。
待合室にいる間「この苦しさの中には沈まん」「未来を見る」と鈴愛は不安に打ち勝とうと、律から借りた本を読む。
と、そのページの隅には律が描いたパラパラ漫画があった。晴の手術が成功してみんなで喜び合う漫画が。

白く膨張した光が、やがて手術室の蛍光灯とわかり、晴が目覚める。
このカットが良かった。
「半分、青い。」24週まで見てきて、はじめて、はっとなる画に出会った気がする。
24週は抜けのいいロケが多いこともあるし、話が収束に入っていることもあるからか、芝居がわりあい引っかかりなく見られる。クセのある脚本に振り回されずそれこそ自然にその風に乗ってへんにコミカルにもしないし、いいシーンも気負わずいい感じにしていて、センスが悪くない気が(あくまで個人の感想です)。演出は二見大輔とあり、「半分、青い。」初登板。
調べたら、数年前は長野局にいて、2014年地域発ドラマ「木曽オリオン」を手がけている。星に関する番組の経験があるから光の使い方が巧いのかも。お名前覚えておきたい。
(木俣冬)
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