
冒頭、手作り弁当を持参した新人弁護士の和倉楓(川口春奈)とパラリーガルの城崎穂香(趣里)の間で、こんなやり取りが行われている。
穂香 可愛げないわね、やっぱり。ルックス良くて、弁護士やってる女なら、料理くらいは下手っていうのが世間の常識でしょ。
楓 それ、あからさまな偏見ですよ。
第2話のテーマは、ずばり「偏見」である。
警察の偏見、容疑者の偏見、弁護士の偏見
今回、黒川拓(坂口健太郎)と楓が弁護するのは、コンビニで現金を奪い店員に怪我を負わせた強盗致傷の容疑で逮捕された十勝岳雄(山田裕貴)だ。
何しろ、警察がちゃんと捜査していない。岳雄逮捕の決め手となったのは、犯人が誰かわからないような監視カメラの映像と、マスクとフードで顔を隠す男を見た店員の直感のみである。事件を担当する刑事は、悪びれず言い放った。
「十勝はこの辺りじゃ有名な札付きのワルなんですよ。10代の頃から窃盗やケンカで何度も補導されてるんです。母親だけの片親育ちですから、家庭にも問題があるんでしょうな」
悪かった過去、母子家庭への偏見によって、警察は岳雄を犯人と決めて掛かっていた。
この世は偏見にまみれている。それは警察や検察だけでなく、容疑者や弁護士も同様。
「アンタさあ、顔とか態度で俺のこと見下してんのバレバレなんだよ!」
そんな、顔だけで決め付けないで……。一方、いきなりキレられた楓は弁護士としてあるまじき発言をしてしまった。
「正直、やってると思います。怒りっぽいし、態度も悪いし」
無礼な態度と有罪無罪は別問題。偏見に流されないで……。
初動捜査の失敗は偏見ゆえ
1話と同じように、今回も容疑者の無実を証明するため大掛かりな科学実験が行われた。
岳雄が立ち寄ったガソリンスタンドの防犯カメラに、揺らぐ光が映っている。揺らいでいるのは、スタンド近くのビニールハウスの屋根に溜まった雨水を払う動きが原因だ。黒川らはライトや放水車等を使い、それを実証してみせた。
ビニールハウス側の監視カメラには雨水を払う様子が映っており、その時刻は朝7時。そして、コンビニで事件が起こったのも朝7時。7時の時点でスタンドのカメラに映っている岳雄。
正直、今回の事件に大仰な実験は必要なかった。当日起こった集中豪雨の時刻と映像を照らし合わせれば、スタンドの防犯カメラの時刻がずれていることは明らかになるのだから。
その程度の話なのだ。そんな簡単なチェックさえ警察は怠っていた。過去の素行、母子家庭への先入観に流されたゆえ、初動捜査を失敗してしまっている。ずさんな捜査の根っこあるのは、やはり「偏見」だった。
毎回、実在の事件がモデル?
無実とわかり釈放されたのに、岳雄の表情が浮かない。
「これから、店やってけんのかなあって。俺が今までバカやってきたのが悪いんですけど、今度のことでまた評判悪くなってるだろうし」(岳雄)
ここに、冤罪の恐怖がある。無罪を掴んだとしても、一度疑われた者へ周囲の目は厳しい。世の偏見にさらされてしまうのだ。
「でも、僕は人は変われると信じてますから。偏見を覆したいのなら、十勝さん自身でそれを証明してください」(黒川)
「人は変われる」と信じる黒川。一方、黒川の父で最高検察庁・次長検事である黒川真(草刈正雄)は「人は変われない」と考えている。この父子のズレは、黒川を冤罪弁護に向かわせた理由と大いに関係があるはずだ。
そんな黒川とバディを組む楓、今回もうるさかった。
「黒川先生が貧乏なのは、自分から進んででしょ? ご家族は立派なのに」(楓)
「片親とか関係ない、大事なのは今!」と熱くなってたくせに、黒川の育った環境を知り、自分が偏見に引っ張られてしまっている……。この子、成長しないんじゃないだろうか?(偏見)
ちなみに、今回のコンビニ強盗事件は泉大津で起こったコンビニ窃盗事件がモデルと思われる。そして、第1話が描いた放火事件は『冤罪弁護士』著者・今村核弁護士が携わった事件がモチーフだ。
今後も変わらず、今作は実在した事件を扱っていくのだろうか? だとしたら、予想外にディープなドラマだ。
(寺西ジャジューカ)
『イノセンス 冤罪弁護士』
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
主題歌:King Gnu「白日」(アリオラジャパン)
参考資料:「冤罪弁護士」今村核(旬報社)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中