アニメ『どろろ』(→公式サイト)。今日2月4日(月)22:00より、TOKYO MXほかで、第五話「守り子唄の巻・上」が放映される。

Amazon Prime Videoで毎話24:00頃から配信予定。
「どろろ」耳が戻って初めて聞いた音がそれ?残酷すぎるよ4話
手塚治虫「どろろ」四巻表紙

妖刀の巻・あらすじ


どろろと百鬼丸が出会った女性は、戦に行った兄の帰りを待ち続けていた。ところが帰ってきた彼は妖刀に魅入られており、手当たり次第に人を殺す辻斬りと化していた。
兄は一度は百鬼丸によって妖刀を手から離したものの、妹の制止を聞かず再び刀を手にしてしまう。
百鬼丸との戦いの末、兄は命を失い、妖刀は退治された。これにより、百鬼丸の失われていた耳が再生。聞こえたのは降りしきる雨音と、人の嘆きの声。

身体が戻る苦しみ


貧困で苦しむ妹がショートカットにリデザインされており、髪を売ったんじゃないかと想像させるなどのような、細かい上に語りすぎない演出が多い回だった。

五感全てがない状態の百鬼丸に聴覚が戻った。
生まれて初めて彼が聞いたのが、よりによって自分が殺した人間の、親族の慟哭になってしまった。
三話の寿海のセリフが関わってくる。
寿海「痛みを知らねば、恐れも感じず、切り刻み、殺し、命を奪い取ることに何のためらいも生じはしない」

今まで百鬼丸は、相手の感情を理解する明確な術がなかった。
しかし今回、悲しみの感情を直接浴びる羽目になった。
その感情を引き起こしたのは、相手の家族の命を奪ったのは、自分だ。
彼がこの状況をどう感じているか、現段階ではわからない。

相手の気持ちがはっきりわからなかった彼は、生まれたばかりの赤ん坊と変わらない。
耳が聞こえたことで幸せを得るよりも先に、痛みの方を知ってしまった百鬼丸。
今まで何かの音に対して全く反応しなかったのに対し、今後は反応して顔を向けるような行動を取るようになるだろう。
それよりも急に「聞こえてしまう」ことで頭に情報が大量に流れ込んでくる状況は、激しいめまいと苦痛にさいなまれる可能性の方が高い。
今までの流れを見ると、身体を取り戻すのが必ずしも幸せなようには見えない。

一つ気になるのは言葉の問題だ。手の感覚で文字を覚えたヘレン・ケラーと違い、触覚すらない百鬼丸。育ての親である寿海が自分の名前「百鬼丸」を地面に書いたうっすらとした感覚(とも言えない気配のようなもの)の記憶しか無い。
序盤の雨を身体で浴びるシーン、骨伝導か何かで外界の情報を得ようとはしていたようだ。
コミュニケーションツールとしての言語は、何一つ知らない可能性が高い。それでも「何かを感じたい」という欲求はあるようだ。


原作では百鬼丸が取り戻しているのは目。
妹は兄を殺したことに対して憤り、「人殺し!!ごろつき!!いっておしまい!!この村から出てってーっ!!」と罵倒している。
この時耳は戻っていないが、テレパシー的に相手の言葉を読み取る能力があるので、彼は言葉をしっかり受け止め、妹の容姿を「美しいなあ」と褒める余裕を見せて、村を後にしている。
あらゆる人々の感情を、大人びた感覚で吸収し続けていたのが原作百鬼丸。だから常にパンクしそうになっており、どろろをはねのけようとし、自殺すらもはかった。
アニメ百鬼丸は今は恐怖を知らない。人の負の感情を浴び続ける内に、どういう態度を取るようになるんだろう。

見守り続けるどろろ


百鬼丸に対しての、どろろの「親っぽさ」が一段と増してきた。
雨の中ずっと立ち尽くしていた百鬼丸を、どろろはじっと半刻も待っていた。
妖刀との戦闘中、義足が取れてしまった百鬼丸。どろろは森の中に入って、百鬼丸の足を探す。
その他にも、仕込み刀で戦うため投げ捨てた腕を拾って、彼の元に持ってくるどろろの姿は、まるでおもちゃを放り出した子供の世話をしているかのようだ。


ここは原作と大きく変化した部分。マンガではどろろが「帯刀」することに憧れるがゆえに妖刀に手を出してしまい、呪いに振り回されて人を大怪我させてしまっている。途中心まで引き込まれ、村中で大暴れするシーンも。
一方アニメでは、義足を回収するため仕方なく妖刀を排除しようとした際に、魅入られてしまった。
絶対に人を傷つけたくない、と強い意志で妖刀と戦い続けたことで、切りかかりそうになったものの誰も怪我させなかった。どろろの心の強さが強調される。

百鬼丸がどろろの手から妖刀を叩き落とすため、全力で飛びかかってくるシーンがある。ここでどろろが漏らすのが、原作でお馴染みの呼び名だ。
どろろ「百鬼丸、おめぇ、ありがとな、百鬼丸の、あにき……」
何を考えているかはとんとわからないけれども、妖刀だけを倒し、自分のことを「守ってくれた百鬼丸」がしっかり描かれる。
ここで、どろろは百鬼丸を親的に介護しつつも、「あにき」分として彼に守られている、という関係が明確に成立した。

耳が戻ってきたことで、ここからはどろろが普段独り言のように言っている発言を、百鬼丸がきちんと聞くことができるようになった。
百鬼丸のそばに一番長くいるのは、どろろだ。
赤子が母親から言葉を学ぶように、百鬼丸はどろろから、人とのコミュニケーションを学び始めるはずだ。ここでプラスの感情を百鬼丸が受け取れるかどうかが物語のキモになりそう。
とはいえ五話で登場するのは……原作の痛みを増幅してきそうな物語に期待。

(たまごまご)
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