連続テレビ小説「なつぞら」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第4週「なつよ、女優になれ」 21話(4月24日・水 放送 演出・田中正)視聴記録


「クセがすごい」と「話が長い」
千鳥のノブが十勝農業高校の先生役で登場。牛のチーズに比べてヤギのチーズは「クセがすごい」とネタを盛り込むも、その無理くり感を強引に押しきれず自信なさげに尻切れトンボになっていくところが可笑しかった。
賑やかしはともかく、本題はなつがいよいよ演劇に挑みはじめる。
いよいよというかなし崩し的に。そもそも、なつは演劇というものをまったく知らなかったが、まわりに乗せられてやることになってしまったわけで。
でもやるからには、イメージ画を描いて気持ちをつくっていく。ここでなつはやっぱり絵が行動の拠り所になっていることがわかる。
そして「白蛇伝説」の説明はアニメで表現されたが、「なつよ、話が長い」とナレーションのウッチャンが途中でぶった切る。

まんが日本昔ばなしのような
途中でぶった切られてしまった「白蛇伝説」の概要はこんな感じ。

遠い昔の北の国、青年ポポロがこどもにいじめられていた白蛇を助けると、オショロコマという魚がとれた。白蛇は神様の使いにちがいないとポポロは思った。
その頃、謎の病気が村で流行。それを治すにはサケが必要。でも川上の村はサケのとれる川下の村とが仲が悪い。思案のすえ川上の村の娘ペチカを川下の村に嫁に出すことで解決しようと……というところまで語られた。


この部分のアニメパートのスタッフは以下。

監督・キャラクターデザイン・原画・背景美術・色彩設計・仕上げ 刈谷仁美
撮影監督 泉津井陽一

この連載でも紹介しているが、「なつぞら」に出てきたアニメはたくさんのスタッフが関わっている。だがこれに関しては、撮影以外、刈谷さんがひとりで全部担当したの! と驚いたところ、制作・ササユリスタジオの有村さんがこのように解説してくれた。

「NHKのアニメ担当・深瀬さんがざっくり大ラフの内容指示をドラマの方の演出の方と確認しながら描かれていたり、プロデューサー舘野仁美や制作スタッフがアイデア出したり動き回ったりしていますが、最終的な映像制作に関しては、完全に刈谷仁美と泉津井陽一の2人だけで制作しております。
泉津井さんは撮影監督なので、出来上がった絵や背景を組み合わせて設計(タイムシート)通りの映像にしたり、そこに特殊加工して質感や特殊効果を出したりする作業をしております。絵に関する部分は、作画も仕上げも背景も、刈谷仁美が完全に1人でやっております。
“なつが描いたストーリーボードで説明される紙芝居”のような設定で作りましたが、想定よりも動いている印象があり、『まんが日本昔ばなし』のような懐かしい味わいのアニメーションになったと思います」

たしかに「まんが日本昔ばなし」のような素朴なタッチが楽しめた。

この「白蛇伝説」、白蛇の恩返しを発端にした物語は中国の伝説をもとにつくった日本初の長編カラーアニメ「白蛇伝」(東映 58年)、アイヌの民族衣装をモチーフにした絵柄は「太陽の王子ホルス」(東映 68年)を意識しているように見える。現実では、この時代にまだ誕生していないアニメで、その後、なつがアニメーターを志したときに関わってくるアニメ関係者たちのモチーフになったであろう人たち(森康二、大塚康生、高畑勲、宮崎駿など)が作り伝説を作っていくアニメだ。それを見てなつがアニメの道に進むのではなく、先に問題意識を汲んだ演劇を行ってしまうという、なんたる大胆な換骨奪胎。アニメに詳しく愛情深くだからこそ厳しい目をもっている人たちの多いところへ切り込んでいく冒険心にドキドキハラハラ。だが、倉田先生が「魂」「魂」と言っているだけあって、人気アニメのガワだけもらっているわけでなく、この時代にこういった作品が生まれた背景、精神性を描いているのだ。


第4週「なつよ、女優になれ」(4月22日・月〜 演出・田中正)あらすじ


泰樹と剛男の仲違いがきっかけで、演劇を始めたなつ。いざ入部すると演劇部の練習はとても厳しく、酪農との両立も難しくなっていく。さらに、顧問の倉田先生は、物語の重要な役をなつに与える。慣れないセリフに苦心するなつに、倉田は何度も何度もダメ出しを続ける。ある日、舞台美術を手伝いに来た天陽(吉沢亮)は、部室で落ち込んでいるなつを目にする。なつを追い詰める倉田に天陽が食ってかかると、倉田は思わぬことを打ち明ける。
「なつぞら」21話。千鳥ノブ「クセがすごい」ウッチャン「話が長い」

第23回(4月26日・金 放送)あらすじ


なつ(広瀬すず)出演の演劇大会が近づいたある日、富士子(松嶋菜々子)は雪月を訪れ、自分たちにもできることはないかと相談。とよ(高畑淳子)や雪之助(安田顕)は、その熱意に押され、十勝の酪農を発展させるあるものを、会場で配布することを決める。一方、舞台の背景画を任された天陽(吉沢亮)も、演劇に必死に取り組むなつたちの姿を見ながら、自らの表現を絵にぶつけていた。そしていよいよ、演劇披露の当日を迎える…。
「なつぞら」21話。千鳥ノブ「クセがすごい」ウッチャン「話が長い」

「なつぞら」21話。千鳥ノブ「クセがすごい」ウッチャン「話が長い」

「なつぞら」21話。千鳥ノブ「クセがすごい」ウッチャン「話が長い」

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。
生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。

柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。

奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。
菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。
村松 近江谷太朗…十勝農業高校の先生。
倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

村松…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)
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