冒頭、羽衣の入浴シーンからスタート。珍しく深夜らしいお色気シーンかと思えばそんなことはなく、羽衣がヘンな鼻歌三連発をかましてくる。
♪不死身〜不死身不死身〜 死んでも歩き続けるよ パンデミック パンデミック でも首をはねたら大丈夫〜
♪なかよしこよしのこよしって何〜 きよしこの夜のきよしって誰〜
♪おかえり、タロイモ〜おかえり、タロイモ〜アジアのどっかで食べている〜
なんてとんちきな歌だろう。そしてこの歌を歌う大原櫻子はなんてかわいいのだろう。最初こそナンセンスな笑いを扱う深夜枠になぜ彼女が? と意外に思ったものだが、回を重ねるごとにこの空気にぐんぐん馴染み、それでいてヒロインらしいかわいらしさは失っていないのがいい。

大堀&温水コンビの息のあった演技
今回は羽衣の父(大堀こういち)メイン回と言ってもいいだろう。借金取りに追い詰められた父親はなぜかうどんの提供をはじめ、それが評判を呼んで大行列、テレビにも取り上げられるまでに。そこに「うちの店の味を盗んだだろう!」とうどん屋(六平直政)が乗り込んでくる。
ここで父親に迫る借金取りに扮するのは温水洋一。大堀とはユニット「O.Nアベックホームラン」を組み、二人芝居公演を何度もやった仲。「(借金が返せなければ)もう、シンプルに殺しますよ」「えっ、そんなシンプルに?」「シンプルな棒で殺します」「シンプルな棒で!?」のやりとりの間がたまらない。ちなみにここで温水の舎弟を演じているのはテニスコートの吉田正幸だ。
そしてホテルのうどんがおいしいことを「発見」するのはバブルの香り漂うカップル。
「おいしい。小麦粉本来の風味を損なわない、実に丁寧な仕事だわ」「ああ、そしてこのコシ。荒々しく弾力がある一方、実にしなやかなコシだ」としつこいほどにうどんのうまさを口に出して説明する男女、男はジャケットを脱ぐとサスペンダー姿、そして女が急にマイクを取り出して歌うのは「Dang Dang 気になる」! おそらくだが男は山岡、女は栗田という名に違いない。男はテニスコートの小出圭祐、女はこちらもテニスコートのコントライブにレギュラー出演をしている山口ともこが演じている。淡々としたトーンの会話がおかしみを誘う。
やっぱり神谷脚本回! ふざけ倒したParavi版
10話では冒頭から羽衣が視線を感じていたが、それが駆け落ちに失敗し、クリスマスからホテルの屋根裏にこっそり暮らしていたうどん屋の息子(山西竜矢)だとわかる。うどんがうまかったのはこの息子が打ち直していたからだった。借金の方はホテルにヤンさん(ヤオアイニン)がこっそり落書きしていたものが「本物のバンクシー」と認められて無事チャラに。
しかし、落書きを見とがめた羽衣にヤンさんが催眠術のようなものをかけたのはなんだったのか、そしてバンクシーの正体はヤンさんなのか……。
そんな謎を残しつつも、テレ東版と少し展開が異なるParavi版では、うどん屋の親子の関係がフィーチャーされる。息子(クリスマスから身を隠していただけあって、セーターがトナカイ柄なのがかわいい)の存在を羽衣が暴いた瞬間、ミラーボールがまわり、「Dang Dang気になる」のイントロにのせてマイクを持ったあの男女(たぶん名前は山岡と栗田)が登場。
ラストでは兄・淳之介(矢本悠馬)が行方不明の母親のヒントを見出すも、母のナレーションに否定されてしまう。残り2話で果たして母は見つかるのだろうか。
(釣木文恵)
「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」
出演:大原櫻子、矢本悠馬、大堀こういち、ヤオアイニン
企画:ブルー&スカイ、加藤伸崇
脚本:ブルー&スカイ、村上大樹、テニスコート、金井純一
監督:草野翔吾、金井純一、長野晋也
チーフ・プロデューサー:山鹿達也
オープニング曲:マカロニえんぴつ「surpernova」
エンディング曲:大原櫻子「I am I」