
(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)
連続テレビ小説「スカーレット」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~連続テレビ小説「スカーレット」
『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第1週「はじめまして信楽(しがらき)」3話(10月2日・水 放送 演出・中島由貴)
日本の真ん中は大阪?
まずは謝りたいことがある。
第二回のレビューで、人は滋賀より京都に目がいってしまいがちと書いたが、第三回で、常治(北村一輝)は喜美子(川島夕空)に日本の中心を大阪と教えていたことがわかった。
実際、昭和22年にはすでに首都は東京になっていたのだが……。そんなことは関係ない。川原家にとっては大阪が大事で、京都には関心はないようだ。やがて喜美子も成長して大阪に行くことになるし、「スカーレット」では世界の中心は大阪なのだ。
ちなみに、BK(大阪局のコールサイン「JOBK」の略称)こと NHK大阪局では「 BKの底力」ということがよく言われるらしい。大阪局に勤務していた演出家の取材をしたときこんなふうに聞いた。
“「BKクオリティーがあるんです。『BKの底力』っていうことがよく言われたりするんですけど、現場で『よし、BKの底力の見せどころだ』みたいなことを助監督が言って、それで、現場がひとつになるんですよ」”(ヤフーニュース個人『テレビ離れに歯止めをかけたいNHKが、よるドラ「だから私は推しました」の若手演出家に課したミッション』より)
第二回で注目した闇市の美術に力が入っているのも、BKクオリティーのひとつであろう。第三回に見られたBKクオリティーといえば、川原一家のお椀の持ち方であろうか。常治が大阪で助けた謎の旅人こと草間宗一郎(佐藤隆太)を家に連れてきて、みんなでたまごたっぷりお粥を食するとき、喜美子と母マツ(富田靖子)のお椀と箸の持ち方がちゃんとしていた。設定ではマツは「大地主の娘」とのことなので礼儀作法が行き届いているのだろう。見ていて気持ちよい場面だった。
喜美子はおかゆのよそい方もきれい。お椀をもつときの指先が繊細。これはのちに陶芸家になることが運命づけられているのかなあなんて思った。
「君は鋭いね」
草間の登場で、喜美子は、日本の中心は大阪でないことを知ってしまう。
草間は東京のひとで、言葉が違うため、喜美子は「日本人ちゃうでしょ」と極端なことを言ってしまうが、言葉の違いで出自の違いを洞察したことを、草間に「君は鋭いね」と褒められる。
草間は戦時中、満州にいたこともあって、雰囲気がこのへんのひとと違うと感じた喜美子、手付きの繊細さのみならず、注意力が高いところも見せつけた。
「君は鋭いね」と言われて嬉しくなってしまう喜美子。大場信作(中村謙心)に同じ言葉を言わせるが、関西ことばのため、ニュアンスが違う。「チミは鋭いな」と喜美子がやってみせるが、「チミ」になっている時点で全然違う。
ヒロインが最初に出会う素敵な人・草間は「おしん」における俊作(中村雅俊)枠か。とにもかくにも「心に栄養が足りない」と医者に診断されていた。
子役が注目されている
第一週は子供時代編。喜美子の子役の川島夕空と照子の子役の横溝菜帆が注目されている。川島は4〜6歳児を対象とした教育エンターテインメント番組「みいつけた!」のスイちゃんとしておなじみで、横溝は、大ヒットしたドラマ「義母と娘のブルース」の娘の子供時代を演じて注目された。このふたりの芸達者ぶりが第一週のみどころのひとつだが、もうひとりとても気になる子役がいる。次女直子を演じるやくわなつみ(7歳)だ。
昨今の子役は愛らしさや賢さをたっぷり振りまくことにかけては職人技。何年この道にいるんですか?とひれ伏したくなる子が多いが、やくわなつみはひと味違う。愛嬌を振りまかず、むしろ目をギョロギョロとさせ、顎をつきだし、少々小憎らしい妹キャラを堂々と演じている。洗濯する喜美子のよこでふかし芋をもぐもぐ食べて、洗濯をまったくやる気なし。常治が持って帰ってきた白米の横で目をギョロギョロさせて芋をもぐもぐ。
第二回では、喜美子が空襲のとき手を離したと蒸し返して泣き、喜美子の罪悪感を刺激し、第三回では卵粥が「少ない」「少ない」と言って喜美子のぶんを分けてもらってしまう。空襲でひとりぼっちはこわかったとは思うが、それを理由に言いたい放題やりたい放題。見ていていい気持ちはしない。が、なんか、続けて見ているとその感じ悪さにいつの間にか目が離せなくなっている。末の妹にいないいないばあをやってあやすときは一生懸命。うまいタイミングで赤ちゃんが泣いて「お尻替えたって〜」というセリフを言うところは感心した。
大人になると桜庭ななみが演じるそうだ。わがままなままなのか、とりつく島はあるのか。気になる。
子役には悪いが、戸田恵梨香(喜美子)、大島優子(照子)、林遣都(信作)が早く見たい。
脚本:水橋文美枝
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)