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連続テレビ小説「スカーレット」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)
第8週「心ゆれる夏」46回(11月21日・木 放送 演出・中島由貴)
初物を食べると75日寿命が伸びると言われている。
ということで、喜美子(戸田恵梨香)は初物のスイカをフカ先生(イッセー尾形)と弟子たちで食べる。
「東向いて笑て食え」と先生の掛け声で。
新入社員がやって来た
入婿としていまいち居場所がない敏春(本田大輔)ではあったが、自分のいきのかかった新商品開発のための新入社員、3人を雇う。
陶器会社で企画開発をやっていた藤永一徹(久保山知洋)、
大阪の建築資材研究所にいた津山秋安(遠藤雄弥)、
京都の美術大学出身の十代田八郎(松下洸平)。
藤永が敏春のことを「社長」と呼んでしまいあわてて「若旦那」と言い直すところなど、事情を感じさせるではないか。
昔からの社員たちは古い(年寄り)が淘汰されるのではないかと戦々恐々。
丸熊陶業に新旧交代のときが訪れそうな予感。
敏春びいきの和歌子(未知やすえ)は社長の座を譲ってしまえと言うが、秀男(阪田マサノブ)は気分悪そう。
「船頭がふたりいたら山登ってしまうで」(和歌子)。言い得て妙である。
この状況に乗じて、照子(大島優子)は、敏春が気に入った喜美子のデザイン画を採用させることに成功する。
でも喜美子作だとは照子は知らず、あくまで敏春の思いを実現させようとしたことがこれまでとの違いだ。
今までは、喜美子のために照子が社長にお願いごとをしていたが、今回は夫のため。照子は好きなひとのために一途になる性分らしい。
話が続かない信作
九番弟子の「きゅうちゃん」と、十と八が名前についている八郎。なんとなく運命的な気がする。
八郎の役割は公式サイトでは“喜美子の陶芸と人生に、大きな影響を与えることに。”とある。だからこそ、45回の最後、思わせぶりな彼のカットで終わった。
とはいえ、八郎と喜美子がいきなり一対一で間合いを詰めていくのではなく、間に、信作(林遣都)がはさまっているところに技が効いている。
火祭りのポスターを食堂に貼りに来た信作と、両親の離婚話の顛末を語り(人妻のよろめきではなかった)、安心した父(マギー)が飲みにいって酔っ払って、背負って帰った話を。喜美子は自転車にくくりつけた話(先日、信作が見かけたと言ってた話だろう)。
子供のとき、親父に背負われたことと立場が逆転したことにしみじみする信作。
照子は喜美子から夫へ、信作は背負われることから背負うことへ、子供時代とは違っている。
そこに八郎がやってきて、お茶の支度について喜美子に教わったついでに、喜美子は信作と八郎を友達にしようとするが、ふたりとも不器用みたいで……。
物怖じしない喜美子がもじもじしているふたりの間に立ち、喜美子と八郎が信楽焼の良さ(素朴さ)で盛り上がる。
喜美子「借金取りから逃げてきました」
八郎「え?」
この「え?」と声を出す前に一回息を吸う裏拍な感じがよかった。松下洸平は舞台で活躍している実力派。東京出身だが事務所のキューブが関西発で関西出身俳優(古田新太や生瀬勝久、橋本さとしなど)が多いからか関西弁もさらりとこなしているように感じる。
ちなみに、大阪に詳しい役の遠藤雄弥は神奈川出身。D-BOYSを抜けてもなおキラキラしているなー。
林遣都が、少年がおとなに成長する過程の繊細な感情や、内弁慶ながらよそ者の八郎に対して少し優位に立とうとする男の意地みたいなものなど屈折した内面をうまく演じている。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)
登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空 主人公。中学卒業後、大阪の荒木荘に女中として就職。三年働いた後、実家の経済事情の悪化により信楽に戻り、丸熊陶業で働くことになる。深野心仙と出会い、火鉢の絵付けの弟子入りする。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。
喜美子の給料を前借りに行く。オート三輪を無理して買ったうえに捻挫して働けなくなって喜美子を呼び戻す。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。東京に行きたいと思っている。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉→住田萌乃
●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。
熊谷秀男…阪田マサノブ 信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母
●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。高校で友達は照子だけだったが、ラブレターをもらう。いつの間にかモテるようになり、祖母の死以降、キャラ変する。高校卒業後は役所に就職する。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。マツの貯金箱を預かる。
●信楽で出会った人たち 幼少期
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいて、帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道(草間流柔道)を教える。
工藤…福田転球 大阪から来た借金取り。 幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
保…中川元喜 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
●信楽 丸熊陶業の人々
城崎剛造…渋谷天外 丸熊陶業に呼ばれて来た絵付け師。気難しく、社長と反りが合わず辞める。
加山…田中章 丸熊陶業社員。
原下…杉森大祐 城崎の弟子。
八重子…宮川サキ 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
緑…西村亜矢子 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
深野心仙…イッセー尾形 元日本画で戦後、火鉢の絵付け師となる。喜美子を9番目の弟子にする。
池ノ内富三郎…夙川アトム 深野の一番弟子。
磯貝忠彦…三谷昌登 深野の二番弟子。
●大阪 荒木荘の人々
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者だったが、不況で、尊敬する上司・平田が他紙に引き抜かれたため、退社。女性誌の記者となり、琵琶湖大橋の取材のおり、信楽の喜美子を訪ねる。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。
●大阪の人たち
マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。
泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。
ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。
草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。
あらすじ
第一週 昭和22年 喜美子9歳 家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。
第六週 昭和31年 喜美子、信楽に戻り、丸熊陶業で働きはじめる。
第七週 昭和31年 喜美子、火鉢の絵付けに魅入られ、深野心仙の弟子になる。
脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき