『親バカ青春白書』はムロツヨシによる令和の『天才バカボン』のパパだったのかもしれない<最終回>
イラスト/おうか

美咲のガタローへの恋の結末『親バカ青春白書』最終回

「あれは酔った勢いなんかじゃない」

『親バカ青春白書』(日本テレビ系 毎週日曜よる10時30分〜/以下『オヤハル』)。第7話(9月13日放送)は美咲(小野花梨)ガタロー(ムロツヨシ)にキスしたところを見てしまったさくらのショックからはじまる。美咲の本気を感じたさくらは気もそぞろで、何も手に付かない。


さくらの悩みに気づけない畠山(中川大志)。彼は自分のことしか考えていないので、美咲には反応するのに自分には反応がない理由を、さくらが自分にもう興味がないからだと思い込む。さくらが美咲に反応するのは、ガタローとのことを意識しているからなのに。

こういう無邪気さを中川大志はぎりぎり許せる感じに演じている。ともすると、おバカ過ぎてイラッとしてしまうので。

美咲はガタローの好みは黒髪さらさらと聞いて(そりゃ幸子<新垣結衣>がそうだもの)、結んだ髪をおろしてみたりする。あからさま過ぎる美咲にさくらはガタローに近寄らないでほしいと牽制し、「だって私、娘だから」と目をがっつり見開いてすごむ。そして薄目。

永野芽郁の薄目は破壊力がある。怒った声もピアノの鍵盤の音みたいに硬質なので、それが朝ドラではトゥーマッチだったところもあるし、怒の感情を出さない役のほうが合っているかもしれない。

さくらは得意の料理もまずくなるほど感情が揺さぶられてしまうが、ガタローは「アバンギャルドな味だなあ」と言葉を濁す。やさしい。


まさかの新垣結衣のヤンキー姿

夕食後、さくらがひとりで洗い物をしていると、ガタローが心配してやって来るが、パソコンを見てほしいと美咲に連れていかれてしまう。さくらはますますイライラ。美咲とガタローを監視に行くと、美咲はガタローの手をすりすりして、腕相撲をはじめる。それに割って入るさくら。オンナの腕相撲。

「女の子の気持ちって、時として文学を越えてくるよね」

これは大村教授(野間口徹)の言葉。それだけを言うために、美咲のバイト先にやって来る野間口徹。最終回だから、いろいろまとめに入っている。でもまさか、終盤、こんなに恋愛ものになるとは思ってなかったのでびっくり。

美咲とガタローの指切りと、幸子と指切りの思い出が重なる。幸子は指切りしながらまた残虐なことを言う。なんで幸子は微笑みながら物騒なことを言うのか。最終回ではその理由――幸子が元ヤンだったことが判明する。
新垣結衣のヤンキー姿と過激なセリフにしびれた。

ガタローは元ヤンの彼女のことを「おもしろい人」と表する。やっぱり言葉をうまく濁すガタロー。小説家だから、置き換えもお手のものなのであろうか。

美咲も元ヤンで、ガタローは彼女に幸子に「おもしろい」ところが似てると言う。罪でしょ、そんなことを言ったら、美咲が可能性あると期待してしまうではないか。

畠山に寛子(今田美桜)が手取り足取り(足は使ってないか)迫る方法を伝授しているところをさくらが目撃、「男の人って最低」と去っていく。それを見て、「さくらが怒った」と「クララが立った」みたいに喜ぶ畠山。

ゆずの主題歌のように、まさに「これでいいのだ」

恋の糸が絡みに絡んで、美咲はガタローにしがみつく。渾身の想いをカラダに感じながらもガタローは揺らがない。忘れられない人(幸子)がいるからとあくまで穏やかにお断りする。

ムロが戸田恵梨香との恋愛ドラマをやって盛り上がった『大恋愛〜僕を忘れる君と』で女性にやさしく接しているときのムロの二枚目感が良かったから、二匹目のどじょうをねらったか。小野花梨の芝居もしっかりしているので、ここだけ切りとると切ない良いシーンになる。
まあ、基本的に、娘想いのお父さんと大学の仲間たちのハートウォーミングな物語であったし、父と娘と娘と同じ年の女のどろどろっていう感じにはならずに、さわやかに終わっていく。

『親バカ青春白書』はムロツヨシによる令和の『天才バカボン』のパパだったのかもしれない<最終回>
12月23日にBlu-ray&DVD-BOX発売! 画像は番組サイトより

しばらく普通の悩めるYouTuberになっていた根来(戸塚純貴)も「ぴえん」「ぴえん」と謎の言葉をへんな動きをしながら唐突に吐くという、福田雄一作品っぽいことをやっていたが、むしろ、それはもう要らないだろうというくらいに、ほのぼのとしたさわやかな、灰汁のないドラマであった。タイトルの「青春白書」にふさわしい。

美咲と根来が会話している場面なんかもじつに良くて、若い俳優たちがみんなおもしろもナイーブな芝居も投げ出すことなく真面目に演じていて、清々しい気持ちになった。

もっとやりたいことがあったけれど、コロナの影響で学園ものからホームドラマに変わってしまったのかもしれない。いろいろあったであろう中、よくぞオリジナルをここまでがんばってやりきったと讃えたい。

ゆずの主題歌が「これでいいのだ」と歌っていて、まさに「これでいいのだ」。これはムロによる令和の『天才バカボン』のパパだったのかもしれない。
(木俣冬)

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番組情報

日本テレビ『親バカ青春白書』
※放送終了
毎週日曜よる10:30〜

番組サイト:https://www.ntv.co.jp/oyabaka/
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