松居大悟監督語る『バイプレイヤーズ 』「映画化を希望していた大杉漣さんの想いを形にしたい」<後編>

『バイプレイヤーズ 』松居大悟監督インタビュー<後編>

今年1月から放送がスタートする『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』。すでに撮影は終了済みとのことで、過去作に続き今作でも監督を務めた松居大悟氏は「絶対に楽しんでもらえるはず」と、その手応えを口にする。

【インタビュー前編】新作&映画化『バイプレイヤーズ 』松居大悟監督語る「6人集まると奔放、個々で向き合うと真摯」

待望の新シリーズとなる今作では、今春公開予定の映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画をつくったら〜』と合わせて総勢100名超の個性派俳優が本人役で登場。
前例のない展開とスケールに期待が高まると同時に、どんな内容になっているのかも気になるところだ。

そのヒントを得るべく、松居監督のインタビュー後編では、今回のドラマの撮影秘話や映画の見どころを教えてもらった。

現場にいるすべての人を愛おしく思えるような作品にしたかった

――前作『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』から2年、待望の第3作目となる『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』の放送が決定しました。また『バイプレイヤーズ』を観られるとは思っていなかったのでうれしいのはもちろんですが、今回の出演者がまたすごいですね!

松居:本当にすごいですよね。夢みたいです。

――新作のお話は早い段階から出ていたんですか?

松居:第2作目のときは、次は何をしようかなんて話をしていたんです。何より(大杉)漣さんが、ずっと「映画をやりたい」とおっしゃっていて、僕らも「いいですね」って話をしていて。

ただ2作目を終えた後には、僕らも、(『バイプレイヤーズ』の)メンバーも、新作なんて考えられない感じになって……。でも、プロデューサーから「漣さんが映画をやりたいと言ってたから、やろう」という話が出たのを機に、みんなで話し合い、最終的に「漣さんの想いを形にしたい」ということでまとまりました。

――今回、1月クールでドラマが放送され、春に映画という流れですが、映画のお話が先だったんですね。

松居:そうですね。映画を作るなら、ちゃんとドラマもというか、『バイプレイヤーズ』が生まれた場所でもう一度あばれて、そこから映画という流れで盛り上げよう!ということになりました。

――となると、ドラマは映画に繋げるためのストーリーになるんですか?

松居:いや、そんなことはありません。
ドラマだけでも完結しているし、映画だけ観ても楽しめるし、もちろん両方観たらより面白い、という形を模索しました。

――では、松居さんが今回の『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』で意識されたのは、どういったことでしたか?

松居:いちばんは“バイプレ”らしくあることです。第1作目、第2作目のときは、あのオジサンたちが真ん中に立って、何をやっても成立する形だったんですけど、今回は真ん中には立ちません。『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』では毎回ゲストの方々が主役となり、その人たちを支える存在として、田口トモロヲさん、松重豊さん、光石研、遠藤憲一さんの4人が登場します。

そうなったのには、みなさんが主役クラスの役者さんになられたこともあるんですけど、今回はバイプレイヤーの方々はもちろん、現場にいるすべての人を愛おしく思えるような作品にしたかったんですよね。なので、各撮影スタジオの悲喜こもごもとかドタバタを、4人が関わりながらワチャワチャと描くというストーリーにしました。

ただ、その際、4人が真ん中にいないことによって『バイプレイヤーズ』じゃないってことになるのは、すごくイヤで……。そうならないためにも、現場で役者さんたちが好き放題楽しく演じて、それを僕らがみずみずしく撮って、結果的に面白くなる――そこは第1作目や第2作目と変わらないようにいちばん気を付けました。

というのも、みなさん『バイプレイヤーズ』という作品が好きで出演してくださる役者さんばかりで、どうしても気負われる面があったというか。

――好きな作品だからこそ、役者さんたちも気合が入りますよね。

松居:そうなんです。でも、これまでは、けっこうカッチリした演技をしようすると、「もっと適当に楽しくやってください。
それをこちらで成立させますので」というやり方でやってきていて。

メンバーのみなさんはもちろん大丈夫なんですが、ゲストでいらっしゃる役者さんたちは、特にメンバーがいないシーンだとみなさん戸惑うことが多かったんですよね。

松居大悟監督語る『バイプレイヤーズ 』「映画化を希望していた大杉漣さんの想いを形にしたい」<後編>
左から、田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一


――それはきっと、本人役で出演していることも影響していそうですね。

松居:そうですね。しかも、本人役なのに台詞があるっていう(笑)。自分はこういうことは言わないとか、そういうことはしないという部分も、当然あると思います。そういった、本人役というフィクションとリアルが曖昧なところを楽しんでもらうってところを大事にしました。

映画には100人以上の役者が集結のアベンジャーズ的なものに

――役者さんにとっては瞬発力や対応力が問われそうな現場ですが、今回の新作で松居監督が驚いた方はいらっしゃいましたか?

松居:皆さん面白かったですけど、向井(理)さんがめちゃくちゃ面白かったです。こんなに暴れてくれるんだとか、まさかここまでやってくれるとはの連続で。まさに“向井理劇場”。ぜひ観てもらいたいです。

それから、勝村(政信)さんもすごかったですね。勝村さんの場合、台詞をほとんど喋らないんです。
勝村さんが台本をほとんど無視するので、同じシーンにいる(渡辺)いっけいさんがそこを全部フォローして代わりに台詞を言ってくれるという、すごい連携がありました(笑)。

――しかも、それが何の打ち合わせもなく、本番中に行われているということなんですよね(笑)。

松居:そうですね(笑)。勝村さんといっけいさんの場合は今までたくさん共演していらっしゃるので安心ですけど、そういったフォローし合う場面は初めましてで共演される方の間でも垣間見られました。相手が自由にやってるから、じゃあこっちはここをちゃんとフォローしようとか、この情報は言ったほうがいいから代わりに言おうとか。

とくに世代が上になればなるほど圧倒的な演技力というか、フォローもできるし、そこに説得力を持たせることもできるし。やはり、一線を走っている人はすごいなと改めて思いましたね。本当、みなさん見事に台本から逸れていくんで(笑)。

――そう聞いて、ちょっと脚本家の方の心情を想像してしまいました(笑)。

松居:きっと、脚本のふじきさんも宮本さんも『バイプレイヤーズ』とはそういうものだと理解しているので大丈夫です(笑)。台本通りに進めてくださいというより、小ネタはこだわりつつ、現場で遊ぶための大まかな地図を描いているような感じですね。

――撮影のほうはすでに終えられたとのこと。
『バイプレイヤーズ』ならではの予測不能な演技に加え、これだけのキャストの方々が出演する作品ですから、撮影中はいろいろなご苦労もあったと思うんですけど、実際はいかがでしたか?


松居:役者さんたちの演技に関しては、大変だったことはそんなになくて。ただ、物語の規模も大きいのに加え、これだけの役者さんたちのスケジュールをすべて把握して、それに合わせて撮っていかなきゃいけない状況もかなりあったので、スタッフのほうは大変でしたね。本当に感謝です。

――間もなく放送開始となりますが、『バイプレイヤーズ』というと、オープニングの10-FEETさん、エンディングの竹原ピストルさんの楽曲も印象的でした。その布陣は今回も変わらずでしょうか?

松居:今回もこの2組にお願いしました。いつも『バイプレイヤーズ』のために書き下ろしていただいたり、まだ発表していないものでこういうのがあるよと出していただいたりするんですけど、今回もめちゃくちゃいいんですよ。

ドラマがユルいので(笑)、最初と最後はカッコよくしようっていうのは、毎回大事にしているところなんです。そこも含めて楽しみにしてもらいたいですね。

――また、ドラマのあとに控えている映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画をつくったら〜』の見どころも教えてください。

松居:映画はそれこそアベンジャーズ的なところが見どころですね。ドラマでは毎話、撮影所内の各局スタジオでの大騒動を描く……例えば、テレビ東京のスタジオではこういうことが起きて、TBS風のスタジオではまた違うハプニングが起きて、そういう民放各局の話のあとはNHK風なところ、配信風のところが登場してといった感じで続くのですが、映画ではそれら全部をひっくるめるので。

しかも、ドラマで登場した人が全員登場します。
だから、アベンジャーズ。実は、まだ発表されていないトンデモ級の役者さんもいたりします。ドラマをずっと観ていたら、この人出てきた!っていう面白さもありつつ、もちろん映画だけでも100人以上の役者さんが観られるのが魅力。絶対に楽しんでいただけると思います!

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松居大悟監督語る『バイプレイヤーズ 』「映画化を希望していた大杉漣さんの想いを形にしたい」<後編>
新作ドラマ『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』は1月8日(金)放送スタート

◎松居大悟監督プロフィール
1985年11月2日生まれ、福岡県出身。
劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出を担う。
2012 年、『アフロ田中』で長編映画初監督。その後『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』など監督作を発表、枠に捉われない作風は国内外から評価が高い。
そして、テレビ東京ドラマ24『バイプレイヤーズ』シリーズではメイン監督をつとめ、さらにミュージックビデオ監督やラジオナビゲーター、コラム連載など活動は多岐に渡る。2021年GWには映画『くれなずめ』が公開予定。


ドラマ概要

ドラマ 24 「バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜」
【放送日時】2021年1月8日(金)深夜0時12分スタート
【放送局】テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分から放送

【出演】田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一/ 相島一之 阿部亮平、安藤玉恵、池谷のぶえ、石丸謙二郎、稲葉友、井上肇、伊武雅刀、宇梶剛士、宇野祥平、柄本時生、大倉孝二、岡田浩暉、岡山天音、小木茂光、小沢仁志、尾上寛之、尾美としのり、勝村政信、加藤諒、金子大地、北香那、木下ほうか、甲本雅裕、近藤芳正、今野浩喜、佐々木希、宍戸美和公、志田未来、渋川清彦、杉野遥亮、菅田俊、醍醐虎汰朗、高杉真宙、高畑淳子、滝藤賢一、竹原ピストル、田中泯、田中要次、玉置玲央、津田寛治、寺島しのぶ、富田望生、波岡一喜、西村まさ彦、野間口徹、橋本じゅん、長谷川京子、濱田岳、浜野謙太、林泰文、速水もこみち、原田龍二、ふせえり、堀内敬子、本多力、本田博太郎、本田望結、前田敦子、前野朋哉、升毅、松尾貴史、観月ありさ、水間ロン、向井理、六平直政、村田雄浩、MEGUMI、本宮泰風、森下能幸、吉田羊、芳根京子、利重剛、りょう、六角精児、渡辺いっけい
※田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一以外のキャストは五十音順にて記載

【オープニングテーマ】10-FEET「アオ」(BADASS / EMI Records)
【エンディングテーマ】竹原ピストル「今宵もかろうじて歌い切る」(SPEEDSTAR RECORDS / ビクターエンタテインメント)
【監督】松居大悟、浅野敦也、守下敏行、トミー・チャン
【脚本】ふじきみつ彦、宮下武史
【チーフプロデューサー】阿部真士(テレビ東京)
【プロデューサー】濱谷晃一(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)/ 浅野敦也(TBSスパークル)
【制作】テレビ東京、TBSスパークル
【製作著作】「バイプレイヤーズ2021」製作委員会
【後期サイト】https://www.tv-tokyo.co.jp/byplayers/

(C)「バイプレイヤーズ2021」製作委員会

映画概要

映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画をつくったら〜』
【公開日】2021年春公開
【出演】田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一
【監督】松居大悟
【脚本】ふじきみつ彦 宮本武史
【製作】「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
【制作プロダクション】スパークル
【配給】東宝映像事業部
【公式サイト】http://byplayers.jp
(C)2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会


Writer

片貝久美子


ライター(ときどき編集)。アーティストや俳優をはじめとするエンタメ系のほか、コーポレートサイトなどでインタビューを中心に活動中。最近は金継ぎや文楽といった伝統芸能にハマってます。

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