
細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が7月16日にいよいよ公開される。それを記念して、日本テレビ『金曜ロードショー』では、3週連続で細田監督の大ヒット作を放送。
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『おおかみこどもの雨と雪』はリトマス試験紙だ
「企画は半径3メートル以内にいっぱい転がっている」スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫著『仕事道楽―スタジオジブリの現場』にも収められた一節で、スタジオジブリの、というか宮崎駿の創作術において、たびたび取り上げられるフレーズだ。
『おおかみこどもの雨と雪』の監督である細田守も、まさに半径3メートルのなかで企画を考える作家といえる。スタジオジブリと袂を分かったあとでも、だ。
子育てこそ、半径3メートルの物語の境地
宮崎駿に憧れてアニメーションの道を志し、スタジオジブリへの入社試験では最終選考で落選。その後、東映アニメーションでの活躍を経て『ハウルの動く城』の監督を務める“はずだった”細田。結果として『ハウルの動く城』は細田ではなく、宮崎駿が監督を務めたのはご存じの通り。その後、細田が東映アニメーションを退社してフリーになるわけだが、以降に手がけた作品のほとんどが、自身の半径3メートル以内での企画だったのはなんとも皮肉だ。
一人っ子だった細田が親類の多い妻と結婚したカルチャーショックをきっかけに描いた大家族映画『サマーウォーズ』。近作の『バケモノの子』も、自身が親になったことをきっかけに「父性」をテーマにしたわけだ。
そして、『おおかみこどもの雨と雪』のテーマは「子育て」。子育てこそ、半径3メートルの物語の境地、といえるかもしれない。ただ今作の場合、その半径の切り取り方が他とはちょっと異なっている。
「自分自身の3メートル以内ではない」こと。そして「おおかみ」という飛び道具を使うことで、さまざまな3メートルの円を描いていったことが「子育て映画」としては好結果を生んだのではないだろうか。なぜなら、子育ての悩みや苦労こそ、千差万別、多種多様だからだ。
・ちょっとの時間でも目をつむればすぐに眠れる技術習得
・子どもの病気に対して、医者に連れていくべきかどうかでの悩みと迷い
・片付けても片付けてもなぜか片付かない部屋
・重たすぎる三人乗り自転車
・家族がいても、友だちがいても感じる「ひとりぼっち感」
・それでもカワイイ子どもたち
この辺のディテールは、実際に子育てをした人でないとなかなか琴線に触れにくい描写なのかもしれないし、お気に入りの場面はそれぞれ違うはずだ。子育てをしている人でも、住む場所、家族構成、環境によって感じ方や悩みもそれぞれ。だからこそ、感じ入って没入する人もいれば、ご都合主義的な描写ばかりが気になって批判をする人、反応が極端に分かれてしまう。
マイノリティであることを、花・雪・雨の家族はどう克服するのか?
子育てとは、マイノリティの問題でもある。親になったほとんどの人は、自分はマイノリティだ、と感じる瞬間がある。そのマイノリティ感を、子供の成長によって克服(卒業)するのか。親の成長によって克服するのか。環境の変化によって克服するのか。
『おおかみこどもの雨と雪』の場合、このマイノリティの重ね着が顕著だ。タイトル通り「おおかみこども」であることが中心だが、それ以外にも、シングルマザーであること。頼れる親類がいないこと。相談できる人がいない都会暮らしであること。そこからの田舎暮らし、etc.
「ひと目を避けてここに引っ越してきたはずなのに、いつからか、里のみんなにお世話になっている」という主人公・花のセリフが顕著な例だが、花・雪・雨の家族がどのようにマイノリティであることを克服していくのか。克服しないのか。が、「子育て映画」としての見どころなのではないだろうか。だからこそ、以前見てピンと来なかった人であっても、今回改めて見直すことで感じ入り方が違ってくるかもしれない。
『おおかみこどもの雨と雪』は、自分自身の3メートルにどんな変化があったのかに気づくことができる、リトマス試験紙映画なのだ。
(オグマナオト)
未来のミライ(2018年)/時をかける少女(2006年)/サマーウォーズ(2009年)/おおかみこどもの雨と雪(2012年)/バケモノの子(2015年)
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