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壱成の早梅に対するいじめがねちっこい『プロミス・シンデレラ』第2話
『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)は高校生・片岡壱成(眞栄田郷敦)とバツイチの27歳・桂木早梅(二階堂ふみ)のラブコメディー。第2話はいきなりややホラー風味。早梅が旅館のいわくつきの物置に閉じ込められている。
早梅は夫・今井正弘(井之脇海)の浮気をきっかけに家を出たものの、なけなしの財産をすられ、ホームレス生活を余儀なくされる。そこで壱成と出会い、彼の実家の高級旅館・かたおかで働くことになった。そこには片岡家の長男で旅館の跡継ぎ候補である壱成の兄・成吾(岩田剛典)がいて、旅館で働く女性たちは玉の輿に乗ろうと成吾を狙っている。みんな「シンデレラ」になりたい。だから早梅も旅館の女将の座を狙って来たのではないかと警戒され、いびられる。
年下のドS少年によるイジメと同僚のいびり。昨今、世間がハラスメントに敏感なため、少なめになってきたドラマのテッパンがふたつも! と思ったが、やはりこのご時世、いびりはおとなしめである。
早梅が仕事を終えて帰ろうとしたところ、おばけが出ると噂される旧館の倉庫に壊れた花瓶の代わりを取りに行かされる。そこでなんかすごいことが起こるのか。例えば、閉じ込められるとか……と思ったら、とくに何もない。いや、就業時間を過ぎても働かされることだって立派なハラスメントであるが。これよりも気になるのが壱成の早梅に対するいじめがねちっこいことである。

第1話のいじめもあまり気持ちのよいものではなかったが、第2話の彼の態度もいかがなものか。自分専用のおもちゃのはずの早梅が旅館で働くのが面白くなくて、早梅がせっかくありつけた旅館の仕事を辞めろと強要する。
壱成の祖母・悦子(三田佳子)が成吾のお嫁になって旅館を継ぐ?と早梅をからかうことにも苛立つ。どうやら兄が目の上のたんこぶのようだ。さらに、旅館内の茶房のマスター・黒瀬(金子ノブアキ)が早梅にちょっかいを出していることも気に食わない。単に嫉妬でしかないのだろうけれど、それにしても早梅への執着心は度を越している。描き方があっさりしているが、世が世なら“冬彦さん”である(冬彦さんを知らない人は検索してみてください)。
そんなふうになった壱成の心の問題が気にかかる。片岡家には深い秘密があるようだ。

ものすごく一方的なことを言って、またしても早梅を旧館の物置に向かわせる壱成。いやがる早梅を引きずっていく。ここはいかがなものかと思う乱暴なシーンである。
ただ、この一連の流れで抑えておきたいのは、壱成は高校生で早梅は27歳の大人であること。早梅はあーあと思いながらも壱成の一方的な発言を聞いてあげている。当人だって夫のことで悩んでいるのだが。壱成の子供っぽさはおばけをこわがるところにも表れている。おばけが出ると言われている物置に掛け軸を取りに行くように悦子に言われ、怖いから早梅に頼っているのだ。それと、片岡家に対して思うことがあって行きづらいこともある。

そんなわけで、壱成の早梅への行為は「いじめ」ではなく「甘え」である。だから壱成の行動が許容範囲であるとしたいのだろうけれど、いささか無理があるかなあという気もしないでない。なにしろこの一連の流れは、ただただその後の早梅と壱成のキュン場面のためのものであり、さらにキュン転じて、早梅と壱成と成吾の関係を描くための無理やり作った流れだからである。きっとそんなことを考えて観るドラマではないだろう。でも作り手はそこに甘えてはいけないのではないだろうか。

おんぶなの? 抱っこなの? どっちが好きなの?
運悪く物置に閉じ込められた早梅。ふいに具合が悪くなって、壱成の命令が聞けない早梅の状態が迫真過ぎて本気で心配になった。頭痛、寒気、あと吐き気……コロナ? いや、風邪だった。心配になって物置に向かった壱成。壱成のツンデレのデレ面が描かれ、今度は早梅が弱音を吐く。寂しさを抱えたふたりが一瞬、心を通わせる。ホラー風味からはじまって、良い雰囲気になってきた〜〜……と思ったら、成吾が現れて早梅を助ける役割を取ってしまう。早梅を背負う壱成に対して、成吾はお姫様抱っこ。この差の大きさは、男としての包容力の差である。じつは成吾と早梅との間に思い出があったことも手伝って、成吾のほうがポイントが高い。ここで主題歌がかかり、ドラマのボルテージが上がる。
お姫様抱っこしてしずしずと歩く成吾。岩田剛典がなんだか痩せてしまったように見えるので、早梅を抱える姿に不安を感じる。


でも指の美しさは、ふたりともかなりのレベル。箸を持つ壱成の指、倒れた早梅の額に手を当てたときの成吾の指、どちらも長くて優雅だった。
芸者・菊乃(松井玲奈)と出会う早梅。朝ドラ『エール』(2020年度前期)で松井と二階堂は姉妹役だった。真面目で自分を律してしまいがちな姉(松井)と自由奔放な妹(二階堂)という役どころでよく対立していたが、『プロミス・シンデレラ』では成吾をめぐる恋のライバルとして菊乃が早梅に攻撃を仕掛けてきそうな感じである。二階堂ふみと互角に戦えるパワーの持ち主・松井の活躍にも期待したい。
(木俣冬)

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番組情報
TBS火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜
出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典
原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)
制作著作:共同テレビ TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami