2026年4月2日に配信されて以降、大きな注目を集めているNetflixシリーズ『九条の大罪』。原作マンガをもとにした本作は、その再現度の高さが話題となっているが、実際にどこまで原作に忠実で、どの部分がドラマオリジナルなのか気になるところである。
そこで本稿では、原作とドラマを比較しながら、改変ポイントとその効果を読み解いていこう。

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まず本題に入る前に、作品そのものについて整理しておきたい。原作は、『闇金ウシジマくん』の作者として知られる真鍋昌平の同名コミックス。主人公の九条間人(演:柳楽優弥)は、半グレやヤクザなど社会の裏側で生きる厄介な依頼人ばかりを相手にする弁護士で、相棒のエリート弁護士・烏丸真司(演:松村北斗)とともに、法と倫理の狭間で揺れ動く数々の案件に向き合っていく。

第1話「片足の値段」では、飲酒運転で親子をはねたひき逃げ犯が、九条たちの弁護によって執行猶予を勝ち取る。被害者である父親は死亡し、6歳の息子は左足切断という深刻な被害を負っており、仮に被害者側の主張が認められていれば、後遺障害による逸失利益や慰謝料などを含め、1億円以上の賠償が見込まれる事案だった。

しかし現実には十分な慰謝料が得られないばかりか、弁護士をつけなかったことで保険会社の提示する基準のまま交渉が進んでしまう。その結果、子どもの左足切断という重大な後遺障害に対しても、4000万円で示談が成立するに至った。

ドラマ版では後日、犯罪者を見守るソーシャルワーカー・薬師前仁美(演:池田エライザ)が被害者家族の元を訪問し、子どもの保険をめぐって裁判を起こさないかと持ちかける展開となる。実は薬師前を動かしたのは九条であり、親子が裁判で闘えるよう、自分の師匠にあたる弁護士への紹介状まで用意していたことが明かされた。

九条の働きかけによって親子に一定の救いがもたらされる結末となっていたが、原作マンガにはこうした展開は存在しない。原作では親子の後ろ姿を見送りながら、九条が弁護士を付けていた場合に得られたであろう補償額を淡々と説明し、それに対して烏丸が「無知は罪ですね」と言い放つ構図にとどまっている。
被害者側に救済の余地が一切残されていないからこそ、このひと言が強烈に突き刺さる場面となっていた。

ただ、それを映像作品で再現してしまうと、救いのない結末がストレスとして残りかねない。原作ではより飄々とした印象だった烏丸弁護士が、ドラマ版では被害者に寄り添う姿勢を強調されているのも、視聴者が感情移入しやすいよう調整された結果なのだろう。

こうした改変は単なるマイルド化ではなく、ドラマとしての見やすさを意識した演出と見ることもできる。そして第2話から始まる「弱者の一分」においても、同じような工夫が見られた。

「弱者の一分」では、クスリの売人をしている青年・曽我部聡太(演:黒崎煌代)の物語が紡がれていく。軽度の知的障害がある彼は、幼い頃から周囲と同じようには振る舞えない"生きづらさ"を抱えてきた。その一例として語られるのが、小学校の運動会での出来事だ。

運動が得意ではなく、かけっこでも最後尾に終わることが多かったという曽我部。転倒したとき、ふと母親のほうへ目を向けると、下を向きながら「この世の終わりみたいな顔」をしていたという。そのときの母親の心境について、彼は「恥ずかしくて悔しかったんだと思います」と語る。

原作マンガにおける運動会のエピソードはここまでにとどまっているが、ドラマ版には"続き"が追加されていた。
実はその運動会には父親も来ており、母親がうつむいていたのは、懸命に走る息子の姿に涙を流していたからだという真実が明かされる。ドラマ版はこうした補足を通じて、困難を抱えた人物に対して一定の救いを与える構成となっていたのが印象的だ。

もっとも、こうした"救い"が加えられているとはいえ、作品全体のトーンが大きく変わったわけではない。先述した「片足の値段」や「弱者の一分」に限らず、その後に続く「家族の距離」「消費の産物」といったエピソードも、ストーリーライン自体は原作にほぼ忠実。直接的には描かれていないものの、半グレの壬生憲剛(演:町田啓太)が自らの手で愛犬を殺す場面や、外畠(演:長尾卓磨)の股間をスタンガンで焼き切るシーンなども映像化されていた。

描かれるのはあくまで、法と倫理の狭間で翻弄される人間たちの現実であり、ときに後味の悪さすら残る結末も少なくない。むしろドラマ版は、最低限の救いを補いながらも、原作が持つ鋭さや不条理さを損なわないようバランスを取っているように見える。そのさじ加減の巧みさこそが、本作ならではの見応えにつながっているのかもしれない。

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