【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#8


 ちょうど10年前の2016年6月、放送中だったのが、クドカンこと宮藤官九郎脚本「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)だ。タイトルの「ゆとり」は「ゆとり世代」の略。

1987年4月から2004年4月にかけての生まれで、いわゆる「ゆとり教育」を受けて育った世代を指す。


 ドラマが放送された当時、「ゆとり世代」の若者たちは怒っていたはずだ。社会人になった彼らは、「使えない」「覇気がない」「ガッツが足りない」「言われたことしかやらない」と酷評された。さらに「ライバル意識がない」「危機感がない」「緊張感がない」と言われ放題だった。


 思えば、彼らもかわいそうなのだ。好きで「ゆとり」をやってきたわけではない。学校の土曜休みも、薄くなった教科書も国が勝手に決めたことだ。それでいて学力低下となったらポンコツ扱いじゃあ、文句のひとつも言いたくなる。そんな彼らの声なき声を感知したクドカンが、ドラマの形でカウンターパンチを繰り出したのがこの作品だった。


 まず、登場人物たちのキャラクターが光る。主要人物は、食品会社勤務の坂間正和(岡田将生)、小学校教師の山路一豊(松坂桃李)、客引きの道上まりぶ(柳楽優弥)、そして正和の同期にして上司、しかも恋人の宮下茜(安藤サクラ)だ。


 まりぶは、嫁や娘と暮らしながら正和の妹・ゆとり(島崎遥香)に手を出したりするが、どこか憎めない。

女性体験皆無の山路は、積極的な教育実習生・佐倉悦子(吉岡里帆)にドギマギしたり、性教育の授業に尻込みする始末。そして正和と茜は、勢いで結婚宣言はしたものの不安な日々だ。


 正和たちは、いずれも29歳の「ゆとり第1世代」。そう、ゆとり世代には幅があるのだ。社会人歴も長い第1世代は、ゆとり世代のリーダー層。次の「第2世代」は、ゆとり教育の期間も長く、この世代の代表格ともいえる。その下の「脱ゆとり世代」は、学習指導要領の改定で学習量が増加した時代に育った連中だ。


 たとえば太賀(現在は仲野太賀)が演じた、正和の後輩・山岸ひろむ。第2世代の彼は正和の説教をパワハラだと主張し、周囲から「ゆとりモンスター」などと揶揄される。やがて自分の中のパワハラ気質に気づき、今度は正和を「優しい先輩」として慕うようになった。


 ドラマの中で山路が言うように、第1世代には「他人の足を引っ張らない」「周囲に惑わされずベストを尽くす」「個性を尊重する」といった長所がある。登場人物たちが抱える大混乱の状況に、クドカンはきっちりと決着をつけていった。

見始めたらクセになる会話のテンポとキャラクターの魅力。そこに現出するのは唯一無二のクドカンワールドだ。


 あれから10年。猛烈な“自分探し”で揺れる山岸を好演した仲野太賀は、ダジャレみたいに「大河俳優」となった。ドラマの中の正和たち第1世代は、今どんなアラフォーになっているだろう。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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