4月27日から配信されたNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』が、大きな話題を呼んでいる。国内のNetflix週間TOP10で2週連続1位を獲得し、週間グローバルTOP10の非英語シリーズ部門でも2週連続4位にランクインした。
同作をきっかけに、劇中で重要な存在として登場する昭和の大歌手・島倉千代子さんにも、改めて注目が集まっている。

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『地獄に堕ちるわよ』は、細木数子さんの生涯を描いた全9話のヒューマンドラマ戸田恵梨香が細木さんを演じ、実話に基づくフィクションという形を取りながら、戦後の貧しい生活から銀座のママ、そして「日本一有名な占い師」へとのし上がっていく過程をたどっている。その中でも視聴者に強い印象を残したのが、三浦透子が演じる島倉千代子さんとのエピソードである。

島倉さんは1938年3月30日、東京・品川に生まれた。1955年に『この世の花』でデビューし、1957年の『東京だョおっ母さん』で一世を風靡。美空ひばりさんに次ぐ歌謡界の女王とも評され、NHK紅白歌合戦』にも出演を重ねた。

だが、その歩みは華やかな成功だけでは語れない。1961年にはファンが投げたテープが両目に当たり、失明の危機に陥った。1962年には、後援会事務所に爆発物が送りつけられ、けが人が出る事件も起きている。人気絶頂の歌手でありながら、常に危うさと隣り合わせだった。

私生活でも試練は続いた。
1963年、周囲の反対を押し切って元プロ野球選手と結婚したが、5年後に離婚し、金銭トラブルにも巻き込まれた。1977年ごろには、当時の恋人が多額の借金を残したまま失踪。連帯保証人になっていた島倉さんのもとに、借金取りが押しかける事態になった。

その時期に島倉さんの"後見人"として登場したのが細木さんだった。細木さんは島倉さんのマネージャー的な立場で地方公演にも同行するなどし、莫大な借金の返済を手助けした。一方で、約2億4000万円の返済額に対し、島倉さんの稼ぎから細木さんの懐に入った額は3倍超とも報じられ、過剰な利益を得ていたのではと疑う声もある。

最終的には、島倉さんが不信感を募らせたことで、2人は3年と持たずに袂を分かったとされる。この関係を「救った」と見るのか、「搾取した」と見るのか。その評価は見方によって変わる。単純な善悪で割り切れないところに、今回のドラマの肝がある。

島倉さんはその後も歌い続け、1987年に発売した『人生いろいろ』で自身最大のヒットを飛ばした。同曲は累計売上130万枚に達し、島倉さんの代表曲として今も広く知られている。
死のうとまで思い詰め、自分を責めて泣いて過ごした経験も、振り返れば笑い話になるーー。前向きさの中に人生の憂いをもにじむ同曲は、過酷な経験があるからこそ魅力が際立つ。単なる「演歌の定番ヒット」と捉えている人も少なくなかったが、今回のドラマをきっかけに、島倉さんの人生と重なる歌として受け止め直した人は多いだろう。

晩年には、細木さんと20年以上ぶりに再会したとも報じられている。歌手生活50周年を迎えた島倉さんに対し、細木さんが300万円のご祝儀を渡したとされ、当時の関係者が「特別なしこりは残っていなかったと思う」とも証言している。一方で、細木さんと親交のあった上沼恵美子は、自身のYouTubeチャンネルで、細木さんとの会話を通じて「島倉さんのことは嫌いだったんやな」という印象を受けたと証言している。単純に「和解した」とは言えない複雑な関係だったのかもしれない。

島倉さんは2013年11月8日に75歳で亡くなった。細木さんも2021年11月8日に83歳で死去しており、2人はくしくも同じ命日にこの世を去っている。

島倉千代子さんが今も語られるのは、その人生が波乱万丈だったからだけではない。明るさの奥に哀しみをにじませる歌声と、傷つきながらもステージに立ち続けた独特の存在感があったからだ。『地獄に堕ちるわよ』は、細木数子さんの物語であると同時に、昭和の大衆芸能が抱えていた光と影を映し出す作品でもある。
このドラマを入り口に『この世の花』『東京だョおっ母さん』『人生いろいろ』などの楽曲が聴き継がれることで、島倉さんの再評価が進む可能性もありそうだ。

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