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『地獄に堕ちるわよ』は、細木数子さんの生涯を描いた全9話のヒューマンドラマ。戸田恵梨香が細木さんを演じ、実話に基づくフィクションという形を取りながら、戦後の貧しい生活から銀座のママ、そして「日本一有名な占い師」へとのし上がっていく過程をたどっている。その中でも視聴者に強い印象を残したのが、三浦透子が演じる島倉千代子さんとのエピソードである。
島倉さんは1938年3月30日、東京・品川に生まれた。1955年に『この世の花』でデビューし、1957年の『東京だョおっ母さん』で一世を風靡。美空ひばりさんに次ぐ歌謡界の女王とも評され、NHK『紅白歌合戦』にも出演を重ねた。
だが、その歩みは華やかな成功だけでは語れない。1961年にはファンが投げたテープが両目に当たり、失明の危機に陥った。1962年には、後援会事務所に爆発物が送りつけられ、けが人が出る事件も起きている。人気絶頂の歌手でありながら、常に危うさと隣り合わせだった。
私生活でも試練は続いた。
その時期に島倉さんの"後見人"として登場したのが細木さんだった。細木さんは島倉さんのマネージャー的な立場で地方公演にも同行するなどし、莫大な借金の返済を手助けした。一方で、約2億4000万円の返済額に対し、島倉さんの稼ぎから細木さんの懐に入った額は3倍超とも報じられ、過剰な利益を得ていたのではと疑う声もある。
最終的には、島倉さんが不信感を募らせたことで、2人は3年と持たずに袂を分かったとされる。この関係を「救った」と見るのか、「搾取した」と見るのか。その評価は見方によって変わる。単純な善悪で割り切れないところに、今回のドラマの肝がある。
島倉さんはその後も歌い続け、1987年に発売した『人生いろいろ』で自身最大のヒットを飛ばした。同曲は累計売上130万枚に達し、島倉さんの代表曲として今も広く知られている。
晩年には、細木さんと20年以上ぶりに再会したとも報じられている。歌手生活50周年を迎えた島倉さんに対し、細木さんが300万円のご祝儀を渡したとされ、当時の関係者が「特別なしこりは残っていなかったと思う」とも証言している。一方で、細木さんと親交のあった上沼恵美子は、自身のYouTubeチャンネルで、細木さんとの会話を通じて「島倉さんのことは嫌いだったんやな」という印象を受けたと証言している。単純に「和解した」とは言えない複雑な関係だったのかもしれない。
島倉さんは2013年11月8日に75歳で亡くなった。細木さんも2021年11月8日に83歳で死去しており、2人はくしくも同じ命日にこの世を去っている。
島倉千代子さんが今も語られるのは、その人生が波乱万丈だったからだけではない。明るさの奥に哀しみをにじませる歌声と、傷つきながらもステージに立ち続けた独特の存在感があったからだ。『地獄に堕ちるわよ』は、細木数子さんの物語であると同時に、昭和の大衆芸能が抱えていた光と影を映し出す作品でもある。
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