【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】


「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する……」


 “KYON2”こと小泉今日子が5月2、3日に日本武道館で行った「還暦記念ライブ」では憲法9条が朗読され、客席に向けて打ち出された銀テープには「戦争反対!! 平和な世界希望!!」と記載されていた。


 朗読は俳優の佐藤慶だったようだが、私ならバックにジョーン・バエズの「We Shall Overcome」か、岡林信康の「友よ」(ドーナツ盤のこれがB面でA面は「山谷ブルース」)を流すだろう。


 元アイドルが自身のライブで「憲法改悪反対」を明確に打ち出し、SNSで物議を醸しているようだが、そんなことはどうでもいい。


 高市早苗は自民党大会で自衛隊員に「君が代」を歌わせた。こっちは憲法違反だ!


 高市という女性首相が誕生して国民がお祭りムードに呆けている中で、高市を含めた自民党員の結党以来の悲願である「憲法改正」を、圧倒的多数の今、一気にやってしまえという“策謀”が進んでいる。


 愚鈍なテレビや新聞が、この危険な動きに何もいえない中、かつての国民的アイドルが「憲法改悪」に明確に「ノー」を突きつけたのである。“歴史的快挙”といってもいい。


 自民党の改憲草案など読んだこともない国民に、これだけはいっておきたい。高市の真の狙いは9条改正ではない。憲法の前文に明記してある「主権在民」を「主権在国」に変え、政治屋や木っ端役人たちが主権をもって国民の上に立ち、意のままに国民を操り、戦争のできる国にしたいというのが“本心”なのである。


 この国の言論の自由度は今まさに瀕死状態にある。国境なき記者団(本部はパリ)が発表した「報道の自由度ランキング」で180カ国中62位、トランプのアメリカは順位を7つ下げて64位。


 しかし、有名俳優たちはトランプ批判を恐れない。「この世で最悪の人間」(ロバート・デニーロ)、「歴史上最大の犯罪者の一人」(ハリソン・フォード)、「白人至上主義と人種差別の火に油を注いでいる」(テイラー・スウィフト)と枚挙にいとまがない。


 しかし、この国では、平成の治安維持法と批判された「特定秘密保護法」が2014年に施行されて以降、テレビは他愛もない寝言を繰り返すコメンテーターという名の俗物ばかりになり、腰抜け新聞は、はっきり改憲反対とはいえず、モゴモゴと口籠もるだけ。これでは、戦前の先輩記者たちが犯した“過ち”を再び繰り返すことになること必定である。


■名エッセイストで書評家


 “去勢された”メディアとSNSのデマ情報に踊らされる“バカ者たち”。そんな絶望的な状況を打破するために立ち上がったのが小泉今日子である。


 デビュー当時から凡百のアホドルたちとは一線を画していた。いきなり髪をポップなカリアゲショートにして「なんてったってアイドル」の道を一人疾走してきた。「生きることは恥ずかしいこと」と言い切り、「小泉文体」を作り上げた名エッセイストで、読売新聞の書評欄を10年間も続けた読書家でもある。


 結婚・離婚を経験し、妻子ある男との“不倫関係”も隠さない。政治批判を続け、「『黙れ』といわれても黙りません」と“反骨”を貫く還暦アイドル。


「希望は小泉今日子」


 私のようなヨレヨレの元週刊誌屋でも、憲法改悪阻止に命を賭す覚悟はできている。 (文中敬称略)


(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)


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