『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神さまっ』といったマンガ作品や、「テイルズ オブ シリーズ」「サクラ大戦シリーズ」などのゲーム作品でキャラクターデザインを手がける藤島康介さんが、2026年4月25日にとあるポストをXに投稿して話題になりました。

その内容とは「ホロライブ勉強してたら、とんでもない情報がいっぱい入ってきて困惑している。
なにこの人たち。最高すぎるんだけど」というもの。それに対し『BLACK LAGOON』の広江礼威さんが「フフ…沼にようこそ…」と反応し、「沼どころかブラックホールかと思いますよ」と楽しそうに語りあっていました。

VTuberファンが語る「VTuberの良さ」で、おそらくもっとも多く挙げられるのが関係性の部分です。とくにホロライブでは「もっとホロライブを知って欲しい」「もっとホロライブの良さを感じて欲しい」という思いから、タレントたちが自主的に大規模コラボを企画したり、『マインクラフト』『ARK』『GTA』で先輩・後輩の垣根を越えた無礼講で盛り上がったりするなど、これまでグループ内で支えあう姿が数多く見られました。

その結果としてグループ全体を応援する「箱推し」層が増え、「同じグループのタレントであれば推しではなくても応援する」という風潮が各種イベントやキャンペーンを盛り上げることとなります。日々の配信で飛び出す同僚・先輩・後輩とのご飯報告や、配信外で遊んだ際の雑談などは切り抜き動画で頻繁に拡散されるほど魅力的でした。

それではクリエイターたちは、ホロライブのどこに魅力を感じているのでしょうか? 本稿では過去にホロライブに注目したクリエイターや有名人を振り返りつつ、そこから派生しただろうエンタメ分野への影響を追いかけたいと思います。

◆『バニーガーデン2』にVTuberっぽさが!?
過去、ホロライブに注目したクリエイターや有名人には以下のような人物がいました。たとえばお笑いコンビ「錦鯉」の渡辺隆さん、ゲームクリエイターの小島秀夫さん、声優の中村悠一さん、プロレスラーのグレート・O・カーンさん、『エトランジュ オーヴァーロード』のクリエイターである新川宗平さんなど。

錦鯉の渡辺さんは「VTuberのどこに良さを感じたのか?」という質問に、明確な理由はないとしつつも「女の子たちの“わちゃわちゃ”を見ながら酒を飲むのがいいのかな」と語っていましたし、広江礼威さんは癒しを求めていたことを公言していました。小島監督はとくに理由を明言していないものの、兎田ぺこらさんのゲーム実況を中心に配信を楽しんでいたようでした。


理由は観た人によって色々とあるものの、とっかかりになるのはやはり「ゲーム実況がおもしろかった」が多いようです。とくに兎田ぺこらさんの配信はドラマチックな展開を挙げる声もあり、ただゲームを攻略するだけではなく、いかに盛り上げるかという点に感心している印象でした。

さてそんな「クリエイターから見たホロライブ」ですが、近年はその特性をうまく作品に落とし込んだタイトルも見受けられます。

たとえば『DEATH STRANDING 2:ON THE BEACH』では、ぺこらさんがそのままの姿でゲーム内に登場しました。与えられた役割は、ゲストプレッパーズと呼ばれる、プレイヤーに依頼を発注するNPC。ぺこらさんはゲーム内で「データサイエンティスト」と呼ばれており、「アバター姿で活動を行っている」という設定があります。確かにアバター姿で外部と接するデータサイエンティストがいてもおかしくない世界観であり本作の設定を掘り下げる存在でもありました。

VTuberの要素を研究した作品としては、現在放送中のTVアニメ『魔法の姉妹ルルットリリィ』がまさにそれです。監督の道解慎太郎さんがVTuberに詳しく、「別のVTuberとの関係性がチラッと覗くのがいいんですよね!」とプロデューサー陣に熱弁をふるったことがインタビューで語られており、その部分の良さを積極的に取り入れました。

『魔法の姉妹ルルットリリィ』はもともとアイドルアニメということでホロライブのようなアイドルVTuberと相性がいい作品でしたが、Episode05「地獄のクイズへようこそ」では、まさにVTuberでは定番の地獄企画をイメージしたような内容に。しかもクイズ番組の中でお互いの関係性を深めるような言動があったり、「画伯」が誕生したりする流れもコラボ配信でよく見る光景です。ルルの自己紹介口上もアイドルやVTuberでは“あるある”の要素でした。


「配信」という題材に注目すれば、2025年10月に発売されたアクションゲーム『ゼンシンマシンガール』でも、投げ銭が獲得できるシステムが採用されており影響のひとつと見ることもできます。ただやはり、近年の作品でもっとも強く影響を受けたであろう作品は2026年4月にリリースされたばかりの『バニーガーデン2』でしょう。

実は『バニーガーデン2』を開発したキュリエイトは、同年2月にリリースした『ファンタジスタ明日翔』でもホロライブを意識したようなキャラクターを登場させていました。そのキャラクターは語尾に「~べこ」をつける訛りを持った選手「雪森智世」で、普段は兎の耳つきフード衣装を着用していたり、「ファッファッファッ!」と特徴的な笑い声を発したりして、どう見てもぺこらさんのバロディキャラクターでした。また宝鐘マリンさんを想起させるような海賊キャラクターも登場しており、ホロライブを意識していることがうかがえます。

そのキュリエイトが『ファンタジスタ明日翔』の次にリリースしたのが『バニーガーデン2』であり、VTuberの“良さ”に着目しただろうキャラクター同士の関係性を重視したシステムとセリフを実装していました。

そのシステムとは、前作ではヒロインと1対1で実施していたミニゲームを、任意のキャストを追加して3人でできるようにした部分、他のキャストを交えて進める会話パート、そして日常会話からポロッと飛び出る同僚や先輩との関係性です。

『バニーガーデン2』で追加された新ヒロイン「英梨紗」は極度の人間不信という設定があったため特に顕著だったのですが、プレイヤーとの1対1の会話場面で先輩のモノマネをしたり先輩とのプライベートを楽しそうに語ったりしていました。

また「(先輩の)花奈さんたちって本当にすごいんですよ。私が弱ってるときとか、いつも優しく受け止めてくれて……」と嬉しそうに語っていましたし、先輩キャラの凜も自室に同僚たちのグッズを飾ってあることを話しており、随所で「箱」としての魅力を打ち出そうとしていました。

意中の相手にアタックするタイプの恋愛系ゲームでは、たとえ複数のヒロインがいたとしても、1対1の場面ではプレイヤーに魅力を感じさせるため別のヒロインの話題を出すことはほぼありません。ヒロインの意識がプレイヤーに向いていないと会話の内容がブレてしまうためです。
それなのにあえて言及させる、そして3人でミニゲームができるよう“進化”させたのは、やはりVTuberの“視聴者を惹きつけるノウハウ”を取り入れたかったからではないでしょうか。

VTuberはシナリオでは絶対に書けないような生の言動、演技では表現が難しい(あるいはその必要がない)ゲラ笑い、そして3D配信では何気ないしぐさに「魂の宿った人間」が感じられることがしばしばあります。油断して足を開いたまま“オッサン座り”してしまうようなところは、完全に制御されている創作物では考えられない“エラー”であり人間味の部分でしょう。

記号化されやすい創作物のキャラクターから脱却したいと思うクリエイターほど、VTuber人気からその魅力を読み解き、それを作品に昇華していく。その風潮が年々、強まっているような気がしてなりません。

最先端のデジタル技術が楽しめる場としてもVTuberは注目の存在ではありますが、創作物のキャラクターでは今まで描いてこなかった「生っぽい人間らしさ」や「関係性」は、やはり“新たなエンタメ”のひとつとして惹きつけるものがあります。ホロライブに興味を持ったクリエイターがそこから何を得て新しいエンタメに活かして行くのか? 今後も見守っていきたい部分です。
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