大阪府公式チャンネルより


 またも大阪府の吉村洋文知事の「後手後手」ぶりがあらわになっている。昨日19日、大阪は新規感染者数が6101人と最多を更新しながら吉村知事はまん延防止等重点措置の適用要請を兵庫県京都府と足並みを揃えて見送ったばかりが、ところが一転、本日20日になって重点措置の適用要請を明日おこなうと決定したのだ。

 そもそも、大阪と足並みを揃えた兵庫も京都も新規感染者数が過去最多を更新しており、判断が遅すぎると言わざるを得ないが(ちなみに兵庫県の斎藤元彦知事は維新系で、選挙戦では吉村知事や松井一郎・大阪市長が応援入りしていた)、とりわけ吉村知事は後手後手にもほどがある。

 吉村知事は大阪の新規感染者数が爆発的に増加するなかでも、重点措置について「どこまで効果があるのかと思っている」と疑義を呈し、適用要請は「病床使用率が35%に達した時点で」と頑なに適用要請を拒絶。誰がどう見ても35%を超えることは時間の問題だったというのに、昨日の会見でも「病床使用率が35%に達する、そういうときが来れば国に要請する」と強弁していた。そして案の定、要請を見送った翌日である本日、大阪の病床使用率は35.8%に達したのだ。

 たとえ重点措置が感染拡大防止策として不十分だとしても、何もやらないでいれば感染爆発を助長させるだけなのは言うまでもないし、早めに対策を打たなければ効果も薄くなる。にもかかわらず、吉村知事は効果を疑問視して、「大阪版GoTo」である「大阪いらっしゃいキャンペーン」を続行。

その同キャンペーンの新規予約を打ち切ったのも12日と遅れに遅れ、適用要請も「病床使用率35%に達したら」と言い張ってきたのだ。

 しかも、吉村知事が強調してきた「病床使用率35%」という数字はあまりにも危機感が薄い数字だ。実際、東京都が病床使用率20%を重点措置の適用要請の基準にしたほか、ほとんどの都道府県は大阪よりももっと低い数字で重点措置の適用要請をおこなってきた。

 その上、大阪は昨日19日の時点で軽症中等症の病床使用率は37.0%ととっくに35%をオーバー。さらに、この病床使用率は確保病床数で割り出された数字にすぎず、実際に運用されている病床数でいうと使用率は45.9%にものぼっていた。そして、本日20日の軽症中等症病床運用率は51.2%で、ついに50%を超えてしまったのである。

 一体、この男は何度同じ失敗を繰り返そうというのだろうか。事実、昨年の第3波でも、2020年12月の死者数が東京より大阪のほうが2倍近い状態になっていたにもかかわらず、1月4日に1都3県の知事が緊急事態宣言を要請すると、吉村知事は「大阪は感染の急拡大が抑えられており、いまの段階で要請する考えはない」などと豪語。ところが、その2日後の6日に新規感染者数が560人と過去最多を更新すると、7日には態度を一転させ、宣言を要請すると言い出した。

 さらに、昨年2月末に緊急事態宣言の前倒し解除を要請したことで大阪では再び感染者が増加したが、重症病床使用率が100%を超えても吉村知事は宣言の要請をせず、結果、この第4波で大阪は最悪の死者を出してしまった。

 このように、吉村知事は何度も判断が後手後手に回ったことによって大阪を医療崩壊に陥らせ、府民を危険に晒してきたというのに、その反省がいまだにまるでなく、今回も「重点措置の適用要請を見送った翌日に要請決定」という事態となったのだ。

 無論、こうした後手後手の対応のツケがすでに出始めている。

19日付のNHKニュースによると「大阪市内の発熱外来では発熱などの症状を訴える人が殺到し受診を断らざるをえないケースも相次いでいる」とし、発熱外来の医師は「感染が疑わしくても受診できずに確認できない人がたくさんいるのではないか」と指摘。また、同じく19日放送の『報道ランナー』(関西テレビ)の報道によると、BMI30以上で高血圧などの基礎疾患がある大阪市の45歳男性は、11日に陽性が判明し、病院でも入院を勧められたにもかかわらず、大阪市保健所から連絡があったのは陽性判明から3日目のことで、ホテル療養となったのはさらに2日後の15日からだったという。

 さらに、大阪では陽性率も高くなっている。実際、本日20日の大阪の陽性率は20.4%で、18日には43.8%にも達した。つまり、新規感染者が6000人と過去最多を更新しつつも、検査が追いついていないだけで実際にはさらに感染が拡大していると考えられるのだ。

 吉村知事はこれまでコロナで大阪が東京を上回る死者を出していることについて「とくに大阪は高齢化が進んでいる」「大阪は3世代同居率が高く、高齢者施設も多い」などとデタラメ強弁してきたが、そう言うのであれば、東京以上に感染拡大の防止に注力し、高齢者施設に限らず検査数を増やして捕捉率を高める必要がある。

ところが、吉村知事は「検査したい人ができないという状態ではないと思う。3万件検査をしてますから」「実際の陽性者数はもっと多いだろうとは思うが、『検査したいのに検査でけへんやんか』っていう環境ではない。それって検査が足りてないという意味ではないと思いますが」などと言うのである。

 挙げ句、19日の会見では「20代、30代に当たっては自宅で見ていただく」と言い出した上、SOSセンターや外来をおこなっている医療機関を公表していることを挙げて「(これは)自宅放置ではない」と主張したのだ。「自分でどうにかしろ」というのは、どこからどうみても「放置」ではないか。

 これまでコロナ対策で失敗を繰り返し、全国最悪の死者数を叩き出しながら、いまだに危機感がまるでない吉村知事──。

吉村知事は「オミクロン株の感染力は驚異的」などと発言してきたが、それも「驚異的な感染力だから感染拡大は仕方がない」という言い訳のための台詞だとしか思えないだろう。

 そして、本サイトでは繰り返し指摘してきたように、吉村知事のこの反省がまったくない舐めきった態度は、メディアが吉村知事のコロナ失策を検証・追及することもなく礼賛報道にかまけ、「コロナ対策で手腕を発揮!」「「大阪モデル」などで被害を最小化」などとヨイショを繰り広げてきた結果だ。昨日お伝えしたように、毎日放送は元旦に放送した吉村知事と松井一郎・大阪市長、橋下徹・元大阪市長の3人が出演した『東野&吉田のほっとけない人』について、「政治的公平性を欠くのでは」「偏向報道にあたるのでは」と指摘を受けたことから番組放送の経緯などを調査するチームを立ち上げたと公表したが、毎日放送のみならず、他のメディアも、吉村知事を増長させてきたことによって大阪を危険に陥れてきたことの責任を問い直すべきだと言っておきたい。