イラン情勢が、経済全体に暗い影を落としている。
 ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続いており、世界のエネルギー供給網は大きく揺らいでいる。

 石油は燃料であると同時に、プラスチックや化学製品、医療資材などあらゆる産業の基盤である。
 日本では、とりわけプラスチック製品などの原料となるナフサの調達が不安定になっている。石油化学メーカーが工場の稼働率を下げ、住宅設備機器メーカーが新規受注を停止するなど対応に追われている。
 県内でも建設業や製造業を中心に支障が出始めた。
 断熱材を扱う卸売業者は仕入れ価格が4割上昇した上にメーカーから納品のめどが立たない。ユニットバスなどの一部製品で供給不足に陥り、工期の遅れに懸念が生じている。在庫の囲い込みなどが、混乱に拍車をかける恐れがある。
 食品加工業や物流業では原材料や燃料の高騰に加え、包装資材や容器などの値上げに苦しんでいる。商品に必要な資材が手に入らない状況になれば、経営への打撃は計り知れない。
 政府は現段階では供給の枯渇というより、流通の目詰まりと不安心理が複合した現象とし、対策を急ぐ。
 病院などで医療用チューブ、ビニールパック、診察用手袋が手に入りにくくなっており、目配りが十分とは言い難い。
 国民の命や生活に関わる医療、公共交通などへは製品が優先的に行き渡るようにするといったきめ細かな対応が求められる。

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 日本政府は約8カ月分の石油備蓄を背景に「必要量は確保できている」と説明する。実際に備蓄放出や代替調達を進めている。
 だが、現場では供給の偏りや中小事業者への配分不足が起き、「量はあるのに届かない」と指摘される。
 備蓄放出はあくまで緊急時の緩衝材であり、長期的な供給不足を補うものではない。こうした対応はいずれ限界を迎えるだろう。
 ガソリン購入の補助政策も消費を下支えする一方で、供給不安の中で矛盾が生じかねない。
 むしろ諸外国の一部が進めるように、電力や燃料の節約、物流の効率化や代替エネルギーへの切り替えなど、石油の需要抑制を打ち出す時ではないか。
 過度な買い占めなどを防ぐため、現段階のリスクや見通しを率直に説明し、国民の不安を解消し、協力につなげる必要がある。
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 原油調達の9割を中東に依存する日本で、イラン情勢の長期化は死活問題だ。
 県内企業対象の調査で、8割が「マイナスの影響」を受けていると回答した。
 仮に米国とイランで停戦が成立し、ホルムズ海峡が解放されても、供給の正常化は容易ではない。中東地域の緊張そのものが解消されない限り、危機が繰り返される可能性も高い。
日本は、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な利害関係を持つ。
 多国間の枠組みを主導するなど、緊張緩和に向けた外交努力をさらに強く進めなければならない。
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