1作目『モータルコンバット』(2021年)でオファーを受けていたものの、コロナ禍前後の時期でスケジュールが合わず、参加はかなわなかったという。続編の制作が決まった際、『キル・ビル』で仕事をした旧知のプロデューサー、E・ベネット・ウォルシュから「2作目はぜひやってほしい」と声をかけられた。
「1作目が成功して、続編は予算も大きくなり、美術にもお金をかけられる。さらに、4つのファンタジー世界を自由に作れると言われたんです。4つの世界を同時に作る機会なんてなかなかない」と快諾したという。
その上で、「1作目を見ていないお客さんでも十分楽しめる、独立した一本の映画として見てもらいたいという気持ちで臨みました」と語った。
種田のデザインの出発点は、いつも手描きのスケッチだ。「最終的にはデジタルで仕上げていますが、最初は手描きから始めています。セットデザイナーやコンセプトアーティストに渡す前に自分で描くので、僕の思いはそこに詰まっています」と語り、本作のスケッチを見せてくれた。
最初に手がけたのは、物語冒頭から登場するエデニア王国だった。エデニアは原作ゲームの設定資料が少なく、「ほぼゼロから自由に世界を作ることができた」という。
「街全体と城をスケッチしました。
さらに、ジェロッド王が治めていた時代の緑豊かで美しいエデニアと、シャオ・カーンの支配によって荒廃したエデニアという、異なる2つの姿もデザイン。「ひとつのセットだけで、これだけ多くの物語を語れることが面白かった」と振り返った。
エデニアの街並みは、オーストラリアの巨大なサウンドステージ内に建設された。100メートルを超える広大な空間いっぱいに街並みを作り込み、劇中で繰り広げられる数々のバトルシーンも、そのセット内で撮影されたという。
「空の部分は照明機材が映り込むためCGで処理していますが、画面に映っている建物は基本的に実際に建てたものです」と明かし、壮大な世界観の多くが実物のセットによって支えられていることを強調した。
「アクション映画は、そもそもセットがないと成り立たないんです。ぶつかったり、壊したり、屋根に飛び乗ったりする。ロープやワイヤーで吊って、身体が実際に当たる空間が必要なんです」と説明する。
さらに、「CGになった時点で、デザイン性は少し薄まる」とも語る。その理由について、「セットを作る時は毎日現場にいて、屋根の角度、窓枠の太さ、色、質感、縦横比まで確認できます。1センチ単位、ミリ単位で調整できるんです。そうやって作ったからこそ、エデニアの街は一つの見せ場になったと思います」と自信をのぞかせた。
■真田広之の登場シーンは日本神話から着想
一方で、真田広之が演じるハサシ・ハンゾウ/スコーピオンと宿敵ビ・ハン/サブ・ゼロが死闘を繰り広げる冥界(ネザーレルム)については、いわゆる“だまし絵”で知られるオランダの画家エッシャーの作品から着想を得たという。「原作ゲームにヒントとなる要素はありましたが、かなり自由に作らせてもらいました」と話す。
また、ハサシ・ハンゾウが手入れをしていた枯山水の庭園には、『古事記』にある黄泉の国の物語から着想を得た独自の設定を盛り込んだという。
「歴史的な制約が少ない作品なので、自由に発想することができました。僕の中では、ハンゾウは三途の川の番人という設定。この川を渡ると黄泉の国へ行く。その黄泉の国が、映画の中の冥界(ネザーレルム)だと考えました」
『古事記』には、亡き妻イザナミを追って黄泉の国へ赴いたイザナギが、変わり果てた妻の姿を見て逃げ帰る際、桃の実を投げて追手を退散させたという逸話が記されている。種田は、妻子をビ・ハンに殺され、なおもその面影を抱き続けるハンゾウの物語にこの神話を重ね、本作の庭園にも桃の木を配置した。
「そのアイデアを監督たちにも説明したところ、うまく物語に取り入れてくれました。劇中には桃の実を食べるシーンや、桃の木を手入れしているような場面もあります。僕の中では、桃が朽ちていくことで現世から冥界へと変わっていくようなイメージもありました。そうした自由な発想を通じて、日本的な要素を物語の中に自然に差し込めたと思っています」と手応えを語った。
本作は格闘ゲームを原作とする過激なアクション映画だが、種田が意識したのは、アクションに引きずられない美術だったという。
「本作はアクション映画ですから、肉体のぶつかり合いや残虐な描写もあります。でも僕は、それとは別に、見ていてうっとりするような世界を作りたいと思いました」
単にゲームファンやアクション映画ファンに向けるだけでなく、「むしろ女性の観客にも楽しんでもらいたい」という思いがあったと明かす。
「アクションが激しくても、『世界観が良かった』『見ていて楽しかった』と思ってもらえる映画にしたかったんです。これは『キル・ビル』で学んだことでもあります。アクションが料理だとしたら、美術はそれを盛り付ける器のようなもの。血だらけのアクションがあっても、空間そのものをもう一度見たくなるような魅力を持つ世界観を作りたかった」と説明した。
本作の桃の木一つをとっても、種田は背景にある物語や設定まで考え抜いてデザインしている。その発想の源泉について尋ねると、「とにかく資料をたくさん見ます」と即答した。「本や画集、日本画、地獄絵図、昔の日本映画など、関係なさそうなものまで含めて大量にインプットします。自分の中から自然に湧いてくるというより、まず情報や刺激を自分の中にため込むんです」と明かした。
さらに、「映画を映像としてだけではなく、物語として考える」と持論を展開。
「子どもの頃から、どちらかというと絵を描くこと以上に、脚本を書いたり絵コンテを描いたり、物語を考えることが好きでした。だから今でも、セットやイラストを描く時は、セットの裏にある見えない物語を作るような感覚があるのかもしれません」
最後に種田は、「ゲームをやったことがない人にも『面白かった』と言ってもらえるよう頑張りました」と笑顔を見せた。「一本のアクションファンタジー映画として楽しんでもらえたらうれしい」と日本公開への期待を語り、インタビューを締めくくった。
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