※本稿は、野口聡一『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■水で口をゆすがずに歯を磨く方法
「第一印象は見た目が9割」「第一印象は3秒で決まる」なんていわれます。真偽のほどはさておき、第一印象が人間関係の構築において重要な役割を果たしていることは間違いありません。
だからこそ、宇宙にいるときも身だしなみは整えておきたいところ。また、身だしなみに気を配るのは、周囲の人へのエチケットでもあります。
そこでここでは、宇宙で身だしなみを整える際のポイントをお伝えしましょう。まずは毎日の身だしなみから。
宇宙では水は非常に貴重です。したがってISS(国際宇宙ステーション)では、歯みがき後に水で口をすすぐことはしません。歯ブラシと歯みがき粉で地上と同様に歯をみがいたら、口のなかの水分はティッシュに吐き出してごみ箱へ。
■宇宙では保湿はしっかりやるべし
はじめのうちは水ですすげないことに違和感を覚えるかもしれませんが、大丈夫、数日すれば慣れます。
洗顔も水を使いません。すすぎが不要な石けんや、拭き取りタイプの洗顔料でケアします。「洗顔」というくらいですから、水ですすがないとなんとなくすっきりしない気がしますが、こちらもそのうち慣れます。
問題は洗顔後のスキンケアです。地上生活でスキンケアをする習慣がない人も、宇宙ではしっかりクリームや乳液でスキンケアをすることをおすすめします。
とくに保湿はマスト。ISS内は湿度が低く、肌がとにかく乾燥します。スキンケアにプラスして保湿クリームをこまめにぬっている宇宙飛行士も少なくありません。老若男女を問わず、乾燥対策は万全にしておきましょう。
■宇宙飛行士に好評の「日本製バリカン」
宇宙に長期間滞在する場合は、髪や爪のお手入れも必要になってきます。長い髪については、結べる長さであれば支障はありませんが、そうでなければつねに四方八方に広がってしまうので少々面倒です。
とはいえ、いまのところ宇宙空間に美容室や理容室はありません。
みなさんが宇宙で暮らす際には、髪が伸びてきたら同行者にカットしてもらうか、自分でカットできるアイテムを持参するとよいでしょう。ただし、宇宙でのヘアカットにはちょっとしたコツがあるので、いまのうちに覚えておきましょう。
あらゆるものが浮く宇宙では、地上と同じようにヘアカットをすると髪が切ったそばから飛び散ってしまい、後片づけが大変です。そこでISSには、特製バリカンが常備されています。
この特製バリカンは、そうじ機のホースの先端に取りつけられるようになっており、髪の毛を切りながら吸い込めるすぐれものです。
日本の特製バリカンでクルーがお互いの髪を切り合う光景はじつにほのぼのとしていて、見ると心が温まります。私のユーチューブチャンネルで実際の様子を公開していますので、“青空散髪”ならぬ“宇宙散髪”に興味がある人は、ぜひ一度、のぞいてみてください。
■爪切りやひげそりにもコツがいる
爪を切る際もそうじ機が活躍します。そうじ機をスタンバイしておき、爪を切るたびに周囲をそうじ機でさっと吸うのが宇宙での正しい爪の切り方。
また、すべて切り終えたら、そうじ機から逃れて空気循環システムのフィルターにたどり着いた爪を、忘れずに吸い取ります。
最後にひげそりについてですが、こちらはシェービングクリームを全体によく広げておくのがポイント。
髪の話に戻りますが、現状宇宙では髪を染めることはできません(地上での訓練中はOKです)。カラーリング剤が飛び散る危険性、貴重な水を洗い流すためだけには使えないこと、においの問題などがあるからです。
もともと髪を染めている人は、プリン頭を防ぐためにも、出発前に地毛に近い色に染め直しておくのをおすすめします。
■お風呂もない、シャワーもない
旅先で温泉にゆっくり入るのを楽しみにしている人、多いのではないでしょうか。温泉や大浴場でなくても、1日の終わりに湯船につかるのは、日本人にとっては最高のリラックスタイムです。
けれど残念なことに、宇宙にはいまのところ温泉や大浴場はなく、ISSにはシャワーすらありません。ISSにシャワーがない理由はおもに二つあります。
一つは、水は貴重な資源であり、飲料水以外の水はできるだけ節約する必要があるからです。もう一つは重力の問題です。地上では、蛇口をひねれば水は下に流れます。
では、無重力状態で蛇口をひねったら水はどうなるのか。四方八方に飛び散り周囲一帯がびしょぬれになります。こうした理由から、ISS内にはお風呂やシャワーだけでなく洗面台もありません。
お風呂やシャワーがないISSはある意味、風呂キャンセル界隈やシャワーキャンセル界隈の人にとっては理想的な環境かもしれません。
ただ、短期滞在ならともかく、長期滞在で髪や肌を汚れたままにしていたら雑菌が繁殖して皮膚トラブルに見舞われるかもしれませんし、悪臭を放ってほかのクルーに迷惑をかけてしまう可能性もあります。
■タオル3枚を使いこなす「入浴ルーティン」
そこでISSでは、次のような手順でからだをきれいにしています。まずは、オールインワンのドライシャンプーと、ボディソープを含ませたタオル1枚、お湯を含ませたタオル1枚、乾いたタオル1枚を用意します。
次に、ビニールカーテンで仕切られた「シャワールーム」に入ります。「シャワールーム」と呼んでいますが、実際にはシャワーはありません。
シャンプーを髪と頭皮にまんべんなくつけ、からだはボディソープを含ませたタオルで拭きます。そのあと、お湯を含ませたタオルで全身を拭き、最後に乾いたタオルで拭き取ったら完了です。
宇宙での滞在が長くなるほど、シャワーを浴びたい、お風呂に入りたいという欲求は高まってきます。それは過去の宇宙飛行士たちも同様だったのでしょう。じつは、宇宙ステーションにシャワーが設置されていた時代もあったのです。
■シャワーは宇宙には不向きである
たとえば、1973年から1979年まで運用されたアメリカ初の宇宙ステーション「スカイラブ」には、円筒形のシャワールームがありました。
ホースから出る水でからだを洗い、余分な水はファンで吸引するというしくみで、宇宙飛行士はゴーグルをかけてシャワーを浴びたとか。
2001年まで運用されていたロシアの宇宙ステーション「ミール(Mir)」にもシャワーが設置されていました。けれど、水の拭き取りに時間がかかりすぎるという理由でいつしか使われなくなったと聞いています。
現在の技術では、宇宙での入浴はまだまだ難しいようです。けれどいつか、青く輝く地球を眺めながら湯船につかる、そんなすばらしい日がやってくるかもしれません。
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野口 聡一(のぐち・そういち)
宇宙飛行士
1965年神奈川県生まれ、博士(学術)。2回の宇宙飛行に成功し、世界初3種類の方法で宇宙から帰還した宇宙飛行士としてギネス世界記録認定。「宇宙からのショパン生演奏」動画などでYouTube Creator Awards受賞。
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(宇宙飛行士 野口 聡一)

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