※本稿は、木村至信『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「口呼吸」は肺炎や心筋梗塞につながる
呼吸として理想なのは、「口呼吸」でなく「鼻呼吸」です。ゆっくり鼻呼吸をしていると、呼吸が深くなり、副交感神経が働きやすくなります。そうなればストレスが軽減して、リラックスできます。そういうこともあるので、特別な場合を除けば、口ではなく鼻で呼吸することが理想なのです。
ところが鼻が詰まったり鼻水が出たりしていると、息が吸いにくいので口を開けることになり、口呼吸になります。すると副交感神経が働きにくくなります。
さらに、口呼吸をしていると、ウイルスが鼻毛というフィルターで遮られることなく体内に取り込まれてしまうので、風邪を引きやすくなります。
また、空気が口の中を通るので、ドライマウスにもなります。口が乾いた状態です。
いつも鼻を詰まらせたりすすったりしていると、中耳炎になる可能性が高くなります。鼻と耳は「耳管」という細いパイプでつながっていて、そこを空気が通っています。鼻の中で炎症が起きたり粘液が増えたりすると、そのせいで耳管が詰まることがあります。
■めまい・難聴・耳鳴りになる
耳管の中の空気が少なくなると、鼓膜の奥に液が溜まったり、細菌が入りやすくなったりして、中耳炎になるのです。特に、まだ耳管が短い子どもは、中耳炎になりやすくなります。
長引く鼻づまりをほうっておくと、めまい、難聴、耳鳴りになることがあります。鼻づまりのせいで耳管がうまく開かなくなったことが原因です。
小学生くらいまでのお子さんは、鼻の奥で「アデノイド」というリンパ組織が大きくなっていくため、蓄膿症になりやすく、結果、脳に酸素が届くのを邪魔することがあります。そのせいで成績が落ちたり、「アデノイド顔貌(がんぼう)」という独特の顔つきになったり、難聴になったり、夜尿症になったりすることがあります。
鼻づまりが続く方は耳鼻科のクリニックに行って、原因になる病気を特定してもらいましょう。「たかが鼻づまり」と軽視するのは危険です。
■鼻づまりが「認知症」を引き起こす理由
鼻が悪ければ嗅覚が落ち、それは認知症の危険因子になります。なぜなら、嗅覚を司る脳の部位は、記憶や感情を司る海馬や扁桃体などと密接に連携しているからです。また、アルツハイマー病で脳に蓄積する異常タンパク質(アミロイドなど)は、嗅覚を処理する脳の領域で早い時期から見つかります。つまり、鼻が悪いとアルツハイマー病になる可能性が高まるのです。
また、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)があると、体内で炎症物質(サイトカイン)が増えます。それが血液を介して脳に届くと、脳神経に炎症が起きて、認知機能が低下する可能性があります。
さらに、鼻が悪いと睡眠時無呼吸症候群や、睡眠の質の低下が危ぶまれます。睡眠不足になれば、脳細胞の活性化が停滞して、やはり認知機能が落ちることになります。鼻が悪いことで認知症になる可能性は、けっして否定できないのです。
鼻炎は「声が出しにくい」「声がかすれる」などの発声障害と、直接的な関係があるわけではありません。けれども、間接的には声に影響を与える可能性があります。
■声帯に悪影響、ポリープにつながる
鼻が詰まると、間違いなく声の「響き」に影響します。頭蓋骨の中で、声が共鳴する空間が塞がれてしまうからです。その結果、声がこもったり、鼻声になったりします。声帯の動きに問題があるわけではないので、厳密には「発声障害」とはいえませんが、声の質が変わることには違いありません。
また、鼻水が喉のほうに流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」があると、それが喉の粘膜や声帯を刺激し、慢性的な炎症や咳を誘発します。それが繰り返されると、声帯に負担がかかり、声がかすれることがあります。
さらに、鼻が悪いせいで口呼吸をしていると、喉や声帯の粘膜の潤滑性が失われ、そのせいで声が出しにくくなります。乾燥した声帯は傷つきやすく、軽い炎症を起こします。声帯の炎症が長引いたり繰り返されたりすると、ポリープなどのリスクを高める可能性があります。鼻を健康にして、深刻な病気のリスクを遠ざけましょう。
■高齢者は「過敏性鼻炎」「副鼻腔炎」に注意
くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状がある場合、70代以上の方であれば「過敏性鼻炎(血管運動性鼻炎)」である可能性が高いでしょう。過敏性鼻炎の原因は、温度差、湿度、化学物質、臭いなどいろいろです。このような原因に鼻の粘膜が過敏に反応して、鼻炎の症状が起こります。
アレルギー性鼻炎と症状が似ていますが、アレルゲンや免疫反応は関与しないので、IgE抗体などの検査をしても、異常が認められません。症状や誘因から「過敏性鼻炎」だと診断されることになります。
ただ、「アレルゲン(アレルギー反応を起こす物質)を遠ざける」ということ以外は、アレルギー性鼻炎と「過敏性鼻炎」の対処法は同じです。
また、高齢になってから、粘り気のある鼻水が止まらなくてティッシュが手放せなくなった方は、「副鼻腔炎」である可能性が高いと思います。それは、お年を召すと風邪を引きやすくなることと関係があります。加齢が原因で副鼻腔炎にかかる人はいませんが、風邪が遠因になって副鼻腔炎にかかる方はいるのです。
齢(よわい)を重ねると、鼻の粘膜が弱っていきます。また、鼻をかむ力も弱っていきます。そうなると、鼻水が出やすく、風邪も引きやすくなります。
■脳が“ヨボヨボ”に、生命の危機にも直結
副鼻腔炎になれば、匂いがわかりにくくなります。匂いは脳の活性化に寄与しています。逆から言えば、嗅覚を鈍いまま放置しておくと、認知症の発症や悪化につながります。また、匂いがわかりにくければ食べる楽しみも減ってしまい、これまた脳の活性化を弱めてしまいます。
つまり、嗅覚が落ちることは、認知症のサインでもあるということ。副鼻腔炎があって嗅覚が落ちているなら、副鼻腔炎を治して嗅覚を戻すことが認知症の予防になります。嗅覚に限らず、お年を召した方が鼻炎を放置しておくと、聴覚や味覚の悪化が若い人以上に加速します。
なにより心配なのは、慢性になった副鼻腔炎が「髄膜炎」を招くこと。髄膜炎は脳と脊髄を覆う髄膜に細菌やウイルスなどが感染し、炎症が起こる病気です。
また、鼻の中の粘膜が弱まると、副鼻腔炎の菌が鼻の中に残りやすく、その菌が全身に回って「敗血症」や「肺炎」になり、副鼻腔炎も重症化します。敗血症とは、細菌やウイルスなどの感染症が引き金になって制御不能な炎症が起こり、心臓、肺、腎臓などが障害される、生命に関わる状態です。
副鼻腔炎がこじれて髄膜炎や敗血症になり、命を落とされる高齢者は、年間に100人ぐらいいます。副鼻腔炎を早めに治療すれば、髄膜炎や敗血症を併発させる危険性を低め、認知症の発症や予防をすることができます。
■「加齢性鼻炎」なんて存在しない
巷では「加齢性鼻炎」という言葉がはやっているようです。ですが、「加齢性鼻炎」という正式な病名はないし、その言葉を使う耳鼻科医もあまりいません。それは、加齢が原因で起こる鼻炎などないからです。
なにげない会話で、お年を召した方が「薬は効かないし、水のような鼻水が止まらない」と言ったとき、「それ、加齢性鼻炎かもしれない」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、「そうなのか」と納得なさらないでください。
そういう症状のほとんどは、「アレルギー性鼻炎」か「副鼻腔炎」、または「過敏性鼻炎(血管運動性鼻炎)」です。
同じように、「年をとるとドライノーズになりやすい」と思い込んでいる方もいらっしゃいますが、実は「ドライノーズ」は病名ではなく、単なる症状です。
眼が乾く「ドライアイ」や、口が乾く「ドライマウス」(正式には「口腔乾燥症」)という病気は存在し、それぞれに対応する薬もあります。ですが、ドライノーズという病気はなく、何かの病気でその症状が出ているのです。その多くは「アレルギー性鼻炎」です。
もちろん、鼻の中が乾燥して粘膜がヒリヒリ痛んだり鼻血が出たりすることはあります。ですが、鼻の粘膜だけが乾燥することはありえません。齢を重ねると体中のすべての粘液が少なくなり、すべての粘膜が乾燥するのです。
■鼻づまりは「ほっとタオル」で解決する
鼻の乾燥を訴える方には、私は「鼻ほっとタオル」をやっていただきます。
(1)水でしっかり濡らしたタオルを軽く絞り、電子レンジで「少し熱いかな」と感じるぐらいまで温めます。43度ぐらいが理想です。
(2)そのタオルに顔をつけて、鼻から思い切り息を吸います。吐くときにはタオルを外し、またタオルを当てて息を吸います。
(3)上から副鼻腔のツボを押せば、より不快感が落ち着きます。
鼻づまりが取れるリセット法で、私は鼻の「温熱療法」とも呼んでいます。
美容院や理髪店などで当ててくれるホットタオルの感覚をめどに、「鼻が通った」と思うまでやるといいでしょう。
(参考文献)
・環境省,「花粉症保健指導マニュアル」
・斉藤洋三・井手武「花粉症の科学」(化学同人出版)
・斉藤洋三・井手武・村山貢司「新編 花粉症の科学」(化学同人出版)
・今井透「名医のわかりやすい花粉症・アレルギー性鼻炎」(同文書院出版)
・東京科学大学 ※大学院医歯学総合研究科 認知神経生物学分野 上阪直史教授と咬合機能矯正学分野 小野卓史教授の研究グループ Communications biology 2024 Oct 23;7(1):1381.「Nasal obstruction during development leads to defective synapse elimination, hypersynchrony, and impaired cerebellar function」Moe Tanigawa, Mengke Liu, Mariko Sekiguchi, Kyosuke Goda, Chiho Kato, Takashi Ono and Naofumi Uesaka DOI:10.1038/s42003-024-07095-4
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木村 至信(きむら・しのぶ)
耳鼻咽喉科医
医学博士、耳鼻咽喉科、頭頚部外科。専門は音声学・癌・難聴遺伝子。信州大学病院に勤務後、難聴遺伝子、遺伝子解析研究のスペシャリストとして厚生省で研究に携わり、米国ネブラスカ州国立リサーチ病院に留学、研究を続ける。大学病院での高度医療、癌センターでのオペ研修など医療のトップレベルで15年以上勤務。横浜市大医学部にて医学博士を取得。現在、横浜市内のクリニックで地域密着の診療に従事。著書に『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)がある。
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(耳鼻咽喉科医 木村 至信)

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