※本稿は、田宮寛之『日本人が知らない‼ 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■世界的に拡大を続ける医療ビジネス
ロシアのウクライナ侵攻、米国のベネズエラ、イランへの攻撃など国際情勢は混迷を深めるばかり。国内では人手不足とインフレ進行が深刻な問題になりつつある。株式市場の乱高下が続く中、「今のところ株価は堅調だが、いつ暴落するかわからない」と不安を抱く投資家は少なくないだろう。
しかし、世の中には大きなトレンドがあり、その流れが逆流することがなければ、投資方針を変える必要はない。そうした大きな流れの一つが「医療ビジネスの拡大」である。
今後、世界的に医療関連ビジネスが拡大していく流れに変化はなく、株式投資のテーマとして中長期的に成長が期待できる分野として注目されている。
本項では、今後、医療ビジネスが世界的に拡大を続けるであろう理由と、その中で世界シェアトップを誇る有望な日本企業を取り上げたい。
有望企業といっても、製薬などの大手有名企業ではなく、BtoB企業のため知名度は低いが、いずれも優れた技術やノウハウを持つ“隠れた優良企業”たちである。
■世界的な人口増加と高齢化は止まらない。
医療が株式投資のテーマとして注目される第1の理由は、世界の人口が増加していることだ。
医療ビジネスの対象は人間だ。世界の人口増加は、医療ビジネスのマーケットが拡大することを意味する。
第2の理由は世界的に高齢化が進行していること。高齢化は日本だけの話ではなく、世界全体の傾向なのだ。
国連の調査では世界の総人口に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)は、1950年の5.1%から2020年には9.4%に上昇したが、2060年には18.7%にまで上昇すると予想されている。高齢者が増加すれば、医療サービスを必要とする人が増加するのは言うまでもない。
■ウイルスとの戦いは続く
第3の理由はウイルス性疾患の存在だ。新型コロナはようやく沈静化したが、ウイルス性の病気はいつ蔓延するかわからない。14世紀のペストの流行や20世紀初頭のスペイン風邪の例を出すまでもなく、人類の歴史はウイルスとの戦いの歴史なのだ。
ウイルス性疾患は一旦発生すると消滅することはない。水疱瘡、おたふく、風疹などは昔から存在し、なくなることはない。
そして、新しいウイルス性疾患は必ず出現する。
21世紀以降だけでも、2002年に中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)が、2012年に中東や欧州でMERS(中東呼吸器症候群)が出現して蔓延した。そして、2013年には中国で人が鳥インフルエンザに感染し、2019年には新型コロナが出現した。
残念ながら何年かすれば新たなウイルス性疾患が現れるだろう。そして、新たなウイルス性疾患の出現は医療関連ビジネスの拡大につながる。
■男性の美容整形が増加
第4の理由は美容医療市場の拡大だ。ボストン・コンサルティング・グループの調査によると2023年の世界の美容市場の規模は約200億ドルで、2028年には270億ドルに達する見込み。その後も拡大は継続する。
新興国や後進国の富裕層が美容医療先進国で治療を受けることが増加している。
また、最近の傾向で顕著なのは美容整形治療を受ける男性が増えていることだ。
これまで小さな市場だった美容整形市場が拡大するということは、その分医療関連ビジネスが拡大することを意味する。
■医療ツーリズムの3つのニーズ
第5の理由は医療ツーリズムが成長していること。
医療ツーリズムとは、疾病の予防・発見・治療のため、国外に医療や健康に関連するサービスを受けに行くことを指す。最近は日本国内の医療機関がアジア地域から医療ツーリズム患者を受け入れていることが話題になるが、医療ツーリズムは世界的に盛り上がっているのだ。
医療ツーリズムには3つの目的がある。
まず1つ目は自国では受けられない高度な医療サービスを受けるため。新興国や後進国の富裕層は自国の医療レベルには満足していない。
2つ目は自国より安価に医療を受けるため。米国の医療費の高さはよく知られているが、先進国で医療費が高い国は少なくない。こうした国の人々は医療水準が一定のレベルで、医療費の低い国へ行って治療を受ける。例えば、治療のためにメキシコへ行く米国人の数は増加している。
3つ目は自国より早く治療を受けるため。国によって医療に関する法規制は大きく異なる。自分の国では認められていない治療法や薬の投与を受けるために外国へ行くケースは少なくない。
3つのうち、どの目的であっても自国にいれば病院へ行かなかった人が病院へ行くことになるので、医療関連ビジネスの拡大に寄与することになる。
このように今後も成長が期待される医療ビジネス市場において、世界シェアトップを誇る隠れた優良企業が日本にはいくつもある。本稿ではその中から特に注目される3社を紹介したい。
■眼科ナイフで世界シェアトップのマニー
1社目は栃木県の医療機器メーカーで、手術用メス、手術用縫合針、歯科治療機器を手がけているマニー(7730)。
マニーの白内障手術に用いられる眼科ナイフの世界シェアは30%でトップクラス。同社のナイフの特徴はその「切れ味」にある。切るときの抵抗値が競合製品の半分程度で、ほとんど抵抗感がない。同時にコントロールのし易さも兼ね備えている。
このため、極めて硬い角膜を2~3ミリ切開する白内障手術において「歪みのない切り口」が可能だ。
眼科用以外では心筋梗塞などの血管バイパス手術に使用するナイフや内視鏡下鼻副鼻腔手術に使用する耳鼻咽喉科用ナイフも製造している。
「品質世界一にこだわる。社内では年に2回『世界一か否か会議』を開催し、世界市場において当社製品の品質が世界一であるかどうか確認している」。
2020年にマニーが経済産業省から表彰を受けたときの高井壽秀社長(当時)のコメントだ。
マニーは以下のようなルールを定めて研究開発に臨んでいる。
(1)医療機器以外は扱わない
(2)世界一の品質以外は目指さない
(3)製品寿命の短い製品は扱わない
(4)ニッチ市場(年間世界市場5000億円程度以下)以外に参入しない
「世界一か否か会議」では、競合他社製品を入手し、性能比較テストを実施することによって、マニーの品質が世界一であるかどうか確認する。もし他社より劣った場合は、次の会議までに、その原因を分析し、対抗策を講じなければならない。世界一を回復できなければ生産撤退となる。
マニーは世界シェアナンバーワンを強く意識する企業であり、その意識の強さが同社の成長を支えている。
■歯科用ハンドピースで世界ナンバーワンのナカニシ
2社目は、栃木県鹿沼市に本社を置く歯科治療器具メーカー・ナカニシ(7716)だ。
同社は医療や工業分野の回転機器を製造しており、歯科用ハンドピースの世界シェアは約30%で首位。
歯科用ハンドピースとは、歯科医が歯を削るときに手で握って使用する器具のこと。細長い円筒形で、先端部に取り付けたダイヤモンド製ドリルバーを高速回転させて歯を削る。キーンという音を出しながら歯を削る、歯科医院でよく見かける治療器具である。
ナカニシのハンドピースは1分間に40万回転する。この回転数は他社の追随を許さない。自動車のエンジン回転数が1分間に3000~5000回転であることと比較すると、40万回転がいかに高速か想像できるだろう。
ナカニシの強みは、開発・部品生産・組み立て・販売をすべて自社で行っていること。これによりグローバルな市場のニーズを素早くキャッチすることができる。
ハンドピースは歯科医にとってなくてはならない医療器具であり、さまざまな要望が寄せられるが、ナカニシはミクロン単位の精度で歯科医の要望に応えてきた。今後のハンドピース事業について中西英一社長は「世界シェア40%を取りたい」という。
最近はインプラント治療が普及しているが、同社ではインプラント治療で顎の骨に穴を開ける専用ドリルも手がけている。
■デンカはワクチンの国内トップメーカー
3社目は、東京都中央区に本社を置く中堅化学メーカー・デンカ(4061)だ。
同社の事業領域は工業用原料から、建材、電子材料、医薬品までと幅広い。世界シェアの高い製品としては「アセチレンブラック(世界シェア5割)、クロロプレンゴム(同4割)、球状アルミナ(同6割)などが挙げられる。
そして、デンカはワクチンの国内トップメーカーでもある。
国内でインフルエンザワクチンを製造できるのは、デンカ、第一三共、KMバイオロジクス、阪大微研会のみ。この4社の中のトップメーカーがデンカなのだ。
デンカはインフルエンザ検査試薬のトップメーカーでもある。インフルエンザのワクチンと検査薬の両方を製造できるのは国内で同社だけだ。
これまでもウイルス関連の製品を多数生産してきたが、2020年には新型コロナウイルスへの取り組みを強化した。同年2月に新型コロナ検査試薬の開発を開始し、8月に製造販売承認を取得した。
通常は開発から承認まで2年以上を要するが、同社は約半年で承認にこぎ着けた。この異例な早さは同社の技術力の高さを示している。
デンカはインフルエンザや新型コロナだけでなく、あらゆるウイルス性疾患に対応する製品を持つ。2017年にコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行したときは、JICA(独立行政法人国際協力機構)を通じてエボラウイルス診断キットを無償提供し、沈静化に貢献した。
そのほか、日本脳炎、ポリオ、はしか、風疹などのウイルス検査試薬もそろえていて、病院や保健所などで使用されている。
新型コロナは落ち着いたが、いずれは新しいウイルス性疾患が流行するだろう。デンカはそのときも技術力を武器に活躍するにちがいない。
株価が下がれば売ってしまいたくなるだろうが、慌てて売却してはならない。株価は一時的な理由で大きく下がることがある。
しかし、世の中の流れが変わらなければ、企業の業績は伸びていくし、株価も回復する。世界的な高齢化が止まることはないし、医療関連の需要が減少傾向に転じることもない。狼狽売りをすれば後で悔やむだろう。
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田宮 寛之(たみや・ひろゆき)
東洋経済新報社 編集委員
東洋経済新報社編集局編集委員、明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日本経済新聞グループのラジオたんぱ(現・ラジオ日経)、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクとなる。2007年、株式雑誌の『オール投資』編集長に就任。2009年、就職・採用・人事などの情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げて編集長となる。これまで取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。『週刊東洋経済』デスク時代は特集面を担当し、マクロ経済からミクロ経済まで様々な題材を取り上げた。2014年に「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職。著書『新しいニッポンの業界地図 みんなが知らない超優良企業』(講談社+α新書)シリーズは17万部を超えるベストセラーに。近著は『日本人が知らない‼ 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)。
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(東洋経済新報社 編集委員 田宮 寛之)

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