糖質の過剰摂取はさまざまな老化を引き起こす。北里大学北里研究所病院院長補佐・山田悟さんは「特に注意したいのは、直接血糖値を上げるわけではないが、体内で糖質老化の元凶であるAGEsを発生させる果糖。
砂糖の半分は果糖でできている」という――。
※本稿は、山田悟『糖質老化』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■砂糖には果糖が半分含まれる
「果糖なんて摂っていない」という人でも、知らない間に果糖を摂っていることがあります。ステルス果糖、ステルス老化糖です。
ステルス老化糖の代表格は、お料理に使われている砂糖(ご自身が振りかけていない砂糖)です。
砂糖の正式名は「ショ糖」。ショ糖とは、ブドウ糖と果糖を1対1で合体させたもの。つまり砂糖の半分は果糖で、砂糖10gには5gの果糖がもれなく含まれているのです。
砂糖をつくっている糖質のうち、ブドウ糖は血糖値をダイレクトに上げてしまいます。加えて残りの半分の果糖は、老化糖として脂肪肝をもたらし、インスリン抵抗性を進めます。ブドウ糖も果糖も糖質老化をブーストさせますから、砂糖の消費量は適正にするようにしてください。
■伝統的な日本料理は糖分が高い
日本料理はヘルシーフードとして世界的にも注目されていますが、調理に醤油とともに砂糖も使うことが多く、一般的に煮物では5%、煮豆や甘酢では10%の割合で砂糖が使われているとされています。
砂糖を多く使う料理には、すき焼き、肉じゃが、煮魚、甘酢あんかけなどがあります。
また、健康意識が高い方のなかには、精白された白砂糖を控える代わりに、黒砂糖や甜菜(てんさい)糖を取り寄せているという人もいるでしょう。
黒砂糖とは、サトウキビの煮汁をそのまま煮詰めたもの。甜菜糖は、甜菜(サトウダイコン)の煮汁を煮詰めたもの。精製していないため、原材料に由来するコクや、ミネラルなどが含まれています。
でも、黒砂糖も甜菜糖も主成分は白砂糖と同じショ糖です。半分は果糖であることに変わりありません。ミネラルを摂るなら、砂糖からではなく野菜を食べたほうがよほど効率的です。白砂糖と同じように、黒砂糖も甜菜糖も控えるべきなのです。
ちなみに、日本料理で砂糖の代わりに使用されることのあるみりんも果糖が豊富ですから、注意してご使用ください。
シロップタイプの人工甘味料はみりんの代替として使用するのに便利です。また、最近では糖質ゼロのみりん(あるいは、みりん風調味料)が市販されているようです。

砂糖と同様、みりんについてもご配慮いただくとよいでしょう。
■注目される自然由来の甘味料は…
砂糖はダメでも、ハチミツやメープルシロップなら大丈夫。そう思い込んでいる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、ハチミツやメープルシロップにも、ショ糖はもちろん果糖は含まれています。
種類によってバラつきはありますが、ハチミツの約33%はブドウ糖、そして約40%は果糖です(残りは水分や微量の他の糖質)。花の蜜に含まれている糖質の主成分は砂糖(ショ糖)なのですが、蜜を集めるミツバチの酵素がショ糖を分解するため、ブドウ糖と果糖の割合が多くなっているのです。
メープルシロップは、カエデの樹液を集めて煮詰めたもの。こちらの主成分はショ糖であり、その半分は果糖です。
黒砂糖や甜菜糖と同じように、ハチミツやメープルシロップにはミネラルなどの成分も含まれていますが、果糖の過剰摂取と引き換えにあえてハチミツやメープルシロップを選ぶ必要はないでしょう。
■マヌカハニーやアガベシロップは?
ハチミツの中でも、人気なのがニュージーランド特産の「マヌカハニー」。マヌカという花の蜜からつくられるハチミツで、抗炎症・抗菌作用をもつメチルグリオキサールという成分が含まれているそうです。しかし、果糖の過剰摂取につながる危険性は、普通のハチミツと同等です。

糖質老化では炎症が起こり、免疫も下がりやすくなります。
老化糖である果糖を摂りつつ、抗炎症・抗菌作用をもつ成分を取り入れようとするのは、矛盾しているように私には思えます。
このほか、低GIで血糖値を上げにくいという触れ込みで人気の甘味料に、サボテンの仲間から採れる、メキシコ特産の「アガベシロップ」があります。
アガベシロップが低GIとされるのは、血糖値を直接的に上げない非常に多くの果糖を含んでいるためです。砂糖の代わりにアガベシロップを選んでも、糖質老化を進めてしまうだけでしょう。
■知らない間に異性化糖を摂っている
2つ目の、そして料理で使う砂糖以上におそろしい「ステルス老化糖」として、みなさんに知っていただきたいのが、「異性化糖」という糖です。
耳慣れない糖質ですが、実は非常に身近であり、知らない間に取りすぎている危険があります。
異性化糖は、砂糖と同じように、ブドウ糖と果糖からなります。砂糖がブドウ糖と果糖が結合したものであるのに対して、異性化糖はブドウ糖と果糖が混在している液体(液糖)であるという違いがあります。
異性化糖は、とうもろこしなどのでんぷんから化学的に合成されます。でんぷんを酵素でブドウ糖に変えて、さらにその一部を別の酵素で果糖に変化(異性化)させてつくり出しているのです。それで「コーンシロップ」と呼ばれることも多いのです。

■コストが低いので市販飲料に使われる
異性化糖は、砂糖よりも安価な甘味料であるため、お菓子、エナジードリンクや乳酸菌飲料といった清涼飲料水、調味料、チューハイといった幅広い食品に用いられています。甘い菓子パンはもちろん、とくに甘くする必要のない食パンにすら添加されているものもあります。
農林水産省のデータによると日本では現在、年間175万トンほどの砂糖が消費されています。それに対して異性化糖の消費量は年間およそ78万トンと言われます。異性化糖は、砂糖の消費量の半分近くにまで達しているのです。
■異性化糖を見分ける4つの表示
ただし、注意すべきことに、食品の袋を丹念にチェックしたとしても、「異性化糖」という記述は見当たりません。異性化糖は、含まれている果糖のパーセンテージにより次の4タイプに分類され、次のように表記されているのです。
1)ブドウ糖果糖液糖:含まれる果糖が50%未満のもの

2)果糖ブドウ糖液糖:含まれる果糖が50%以上90%未満のもの

3)高果糖液糖:含まれる果糖が90%以上のもの

4)砂糖混合異性化液糖:1~3に10%以上の砂糖を加えたもの
コンビニやスーパーなどで食べ物や飲み物を手に取るときは、栄養成分表示で糖質量をチェックすると同時に、原材料名の項目で4タイプの異性化糖のいずれかが含まれていないかを確かめてみましょう。
異性化糖は、果物などとは比べものにならないほど多くの果糖を含むため、たとえ少量であっても糖質老化につながる恐れがあります。

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山田 悟(やまだ・さとる)

医学博士/北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長

1994年、慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている事実に直面。患者の生活の質を高められる糖質制限食に出会い、積極的に糖尿病治療へ取り入れている。
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医・研修指導医、日本医師会認定産業医。『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)、『糖質疲労』『脂質起動』(ともにサンマーク出版)、『適正糖質のトップドクターが教える ゆるやかな糖質制限 最強ランチレシピ』(プレジデント社)など著書多数。

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(医学博士/北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟)
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