お酒や間食のつまみにいいとされる食材の落とし穴は何か。医師の森豊さんは「食物繊維が豊富で抗酸化作用のあるビタミン類を多く含むナッツ類はいいことずくめの食材だ。
しかし、ダイエットとしては逆効果になってしまう注意点がある」という――。
※本稿は、森豊、松生恒夫『血糖値は「腸」で下がる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■糖質オフ、糖質の低いお酒を飲むなら無害か
かつては糖尿病と診断されたら、アルコール摂取は禁じられていた時代がありました。
しかし、最近では、お酒の種類によって血糖値を上げるもの(ビール、日本酒など)と上げないもの(焼酎、ウイスキーなど)があることが知られるようになり、また、糖質オフ、糖質ゼロのお酒が登場したこともあって、血糖値を気にする人たちもアルコールを楽しめるようになりました。
もちろん、血糖値を上げないお酒であっても、過度に摂取すれば、肝臓やすい臓をはじめ、体のさまざまな部位に害を及ぼすので、飲み過ぎは禁物です。
慈恵医科大学西部医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科では、院内の栄養部の協力を得て、2020年、ユニークな実験を試みました。アルコールの種類とつまみの組み合わせが血糖値にどう影響するかを調べたものです。
アルコール類は赤ワイン(容量450ml・糖質9.0~22.5g)、一般的な発泡酒(同1000ml・同32g)、糖質オフ発泡酒(同1050ml・同0.55~1.21g)、焼酎(同200ml・同0g)の4種類。
つまみは「健康志向コース」(低糖質・計3.4g)と「シメまでがっつりコース」(高糖質・計82g)の2種類を用意、それぞれの組み合わせで、血糖値の変動を測りました。
その結果、健康志向コースでは、糖質が比較的多い赤ワイン、発泡酒では血糖値の上昇が見られましたが、糖質ゼロの焼酎、糖質オフ発泡酒は上昇しませんでした。
■問題は「お酒」ではなく「つまみ」にアリ
やはり、糖質の少ないアルコール類は血糖値の面から見ると優秀で、飲酒するなら焼酎などの蒸留酒や糖質オフの飲料をチョイスすべきでしょう。
ただし、シメまでがっつりコースでは、4種類のどのお酒を飲んでも血糖値は上がっています。
しかも、糖質オフのお酒であろうとなかろうと、上昇度も大差はありません(図表2)。
ここからわかるのは、お酒の種類よりも、お酒と一緒にどんなつまみをとるかのほうが、血糖値に大きな影響を与えている、ということです。
フライドポテトやコーンバター、シメのラーメンなど、カロリーも糖質も脂質も高い食品をとれば、何を飲んでも一緒だということです。当たり前といえば当たり前ですが、「焼酎やハイボールしか飲まないから、大丈夫」と、こってりとした食品をたくさん食べれば、血糖値から見たら意味はないのです。つまみもしっかり吟味したいものです。
■間食にいいと勧められるナッツ類の健康効果
ビールやウイスキーのつまみ、間食として人気のナッツ類。食物繊維が豊富なことから、巷(ちまた)では「ナッツダイエット」に励む人もいるそうです。
アーモンドやクルミなどのナッツ類は腹持ちがよいので間食を抑えられ、また食物繊維が豊富なため、便通がよくなることでダイエットによい効果を発揮すると人気です。
たとえば、クルミ(薄皮部分)にはポリフェノールが豊富で抗酸化作用が期待できますし、アーモンドには不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、ビタミンE、食物繊維、各種ミネラルなどを含み、栄養満点な食材です。
不飽和脂肪酸は固まりにくく、体内では液状になり血液の流れをスムーズにします。コレステロール値の安定、LDL(悪玉)コレステロールの軽減、血圧を下げて血栓や動脈硬化を防ぐ効果などが期待できます。
また、アーモンドは100gあたり約30㎎のビタミンEが含まれ、ビタミンEの含有量が多い食品の中でもトップクラスです。
活性酸素の生成を抑えて体の酸化(老化)を防ぎ、細胞や血管を活性化します。
こちらも動脈硬化などの生活習慣病の予防・改善や、アンチエイジング効果、また血流の循環をスムーズにすることから、肩こりや冷え性など、さまざまな面で期待を集めています。
カシューナッツにはビタミンKや亜鉛、鉄、マグネシウムなども豊富です。摂取する際はどれか一種類に限らず、いろいろなナッツが入っているミックスナッツで食べれば、よりバランスのよい栄養がとれるでしょう。
ナッツ類ではありませんが、ヒマワリの種も人気です。不飽和脂肪酸のリノール酸を多く含み、抗酸化成分のビタミンE、貧血を予防する鉄、糖質の代謝に関わるビタミンB群などのビタミンもあります。
■血糖値は上がらないが落とし穴がある
このようにいいことずくめのナッツ類ですが、血糖値から見たらどうかというと、ナッツ類は比較的糖質が少ない(カシューナッツなど例外もあり)ので、ナッツだけ食べても血糖値は短期的にはそれほど上がりません。
しかし、脂質が多いため、食べ過ぎるとカロリーオーバーになって、ダイエットとしては逆効果になってしまいます。目安としては一日に25gほどに抑えておきましょう。ヒマワリの種も同じです。
また、ナッツと同時に糖質をとると、ナッツに含まれる脂質の影響で、上昇した血糖値が下がりにくくなります。日本酒やワインなど糖質を含む醸造酒のつまみにした場合でも同じことがいえるでしょう。


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松生 恒夫(まついけ・つねお)

松生クリニック院長

1955年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学第三病院、松島病院大腸肛門病センターなどを経て開業。医学博士。便秘外来を設け、5万件以上の大腸内視鏡検査をおこなってきた第一人者。著書に『血糖値は「腸」で下がる』(青春新書インテリジェンス)、『「腸寿」で老いを防ぐ』(平凡社新書)など多数。

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(東京慈恵会医科大学客員教授 森 豊、松生クリニック院長 松生 恒夫)
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