台湾で、台湾大学法律学院(法学部)教授が学生に課した試験問題が評判になった。「ある島国A」を舞台として、「馬鹿という名の総統が、軽率にもB国との協定を結ぼうとする」、「学識豊かで自由主義研究者である行政院長(首相)が学生の鎮圧を命令」などといった物語を示し、さまざまな登場人物の法的責任を問うた。


 出題者は李茂生教授。刑法関連の試験として出題した。馬英九総統が大陸と締結しようとしたサービス貿易協定締結の問題のパロディーだ。

 「ある島国A」の“馬鹿”総統は、経済の疲弊に苦しんで、病気になった。あるとき、特効薬の「福冒」を服用したところ、元気百倍。B地と「福冒協定」を結んだ。協定を結べばA国は特効薬「福冒」を大量に購入することになる。

 「サービス貿易協定」の中国語は「服務貿易協議」で、「服貿(フーマオ)」と略称することが多い。「福冒」の発音も「フーマオ」。「福」の字義は日本語と同じで、「冒」は「気にもしない」、「偽ってかたる」などの意味がある。


 馬総統の傲慢で軽率な姿勢に反発した大学生が行政院(内閣府)に突入。学識豊かで自由主義研究者である行政院長は学生の鎮圧を命令。
警察官は夫婦喧嘩をしたばかりでむしゃくしゃしていたので、学生を殴るなどで八つ当たり。馬総統は最後に、学生をすべて逮捕して、「福冒協定」を成立させる。

 登場人物名はそれぞれ、実在の人物の名のパロディー。かなりの人数で事実関係も錯綜している。李教授は各登場人物の法的責任を記述するよう求めた。かなり高度な設問という。

 同「問題」は台湾のインターネットでたちどころに話題になった。「笑い死にする」、「チョー難しすぎ。だから李教授は公務員試験の出題者になれないのか」、「書いていることはわかるけど、答案はかけないXD」といったコメントが寄せられた。「XD」は日本の「(笑)」、「w」などに相当するネット用語だ。

 李茂生教授の所属する台湾大学は、台湾のトップクラスのエリート大学。李教授は1954年生まれで、日本の一橋大学で法学博士号を取得している。
指導に当たってしばしば、「皮肉と笑い」にあふれる文章を用いることで知られる。

 大陸でも同話題が紹介されたが、台湾における読者の反応として「この試験問題は、人の判断能力を失わせる」などと、否定的に読めるコメントを少しだけ紹介した。記事の主要部分では台湾における報道と同様に、時事問題のパロディとして「おもしろおかしく」伝えているので、最後に「台湾で馬英九批判が盛り上がっていると主張する文章ではない」と、当局を意識しての「言い訳」を付け加えた可能性がある。

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◆解説◆

 台湾では日本による統治の伝統があり、その後も日本との往来が多かった関係で、日本語の影響を受けた言語表現も多い。例えば、運転手が「運将(ウンヂアン)」と呼ばれることがある。日本語の「運ちゃん」に由来する言葉だ。

 「弁当」は「便当」だ。「弁」は中国語読みは「ベン」とかなり音が離れてしまうので、「便当」とかいて「ビェンダン」と呼ぶ(台湾では「弁」や「当」には旧字体を用いる。

 李教授が使ったA国の総統名である「馬鹿」も、たいていの台湾人が理解できる日本語由来のことばと言ってよい。

 中国大陸部で知られる代表的な日本語としては「バカヤロ」と「ミシミシ」がある。いずれも、映画やテレビの「愛国作品」を通じて耳から入った言葉で、「バカヤロ」については「この言葉を言うと、日本人は必ず人を殴る。だから罵り言葉だ」といった理解だ。


 「ミシミシ」の由来は「飯(めし)」。多少母音が変化し、「ミシ」ではなく反復する「ミシミシ」が本来の形と理解されている。日本人も実際には「飯、飯」と繰り返すことが多いことが原因と考えられる。漢字表記は知らない人が多い。(編集担当:如月隼人)


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