◆JERA セ・リーグ DeNA2―0中日(31日・横浜)

 DeNAの藤浪晋太郎投手(31)=前マリナーズ3A=が、NPB1073日ぶりの勝利をマークした。左打者8人が並んだ中日打線を相手に、最速156キロで7回4安打無失点、9奪三振。

バントの構えによる揺さぶりなどで3四死球を与えたが踏ん張り、日本では2022年9月23日の広島戦(マツダ)以来の白星を挙げた。チームは2位の巨人に1・5ゲーム差に迫った。

 「快投」と「怪投」、そして「粘投」。どれもこの男の持ち味だ。藤浪が移籍2度目の先発登板で、らしさを存分に発揮して7回無失点、9奪三振。阪神時代の22年以来1073日ぶりの国内白星を手にした右腕は、新たなホーム・ハマスタのお立ち台で「横浜のファンの前で勝ててうれしいです」と声を弾ませた。

 敵地で移籍後初登板した17日と同じ中日戦。序盤はまさに「快投」だった。左9人の前回同様、7番・ロドリゲス以外は左が並ぶ竜打線を3回まで完全。阪神時代は12試合で8勝2敗と相性がよかったハマスタで、MAX156キロの直球と内外角に投げ分けるカットボールがさえわたった。

 ところが、勝利投手の権利目前の5回、突然の「怪投」が始まる。先頭から2者連続でストレートの四球を与えて無死一、二塁の大ピンチ。

9球連続ボールでにわかに漂う暗雲。だが、「(原因は)リズムとタイミング」とクールに修正して後続を絶った。

 最後は「粘投」。6回2死二塁、7回1死二、三塁とピンチの連続。それでも登板前に「できるだけ長いイニングを投げて、1つでも多くアウトを取りたい」と話した通り、簡単には崩れない。「ああいう場面を抑えるのがプロ野球の醍醐(だいご)味。お客さんも楽しいと思う」と、わずか1点リードの修羅場でも涼しい顔。かつてメンタルの弱さを指摘され続けたガラスのエースは、海の向こうでもまれ、たくましく、したたかに成長していた。

 大阪桐蔭の10年後輩に当たる松尾との初コンビでたぐり寄せた白星。「10個下とは思えないほど肝が据わってて、助かりました」。7回、最後のアウトをとると、若きパートナーへ笑顔でグラブを突き出して共闘をたたえ合った。

 2年半の米国生活で思うような結果を残せず、“優勝請負人”として7月にDeNA入り。

「変化球が曲がらない」と、NPB球へのアジャストから始まった復活ロードが軌道に乗り始めた。チームはBクラス転落の危機をしのぎ、逆に2位・巨人と1・5差。混戦の2位争い突破へ、剛腕は「何でもやる。どんな形でも一生懸命、腕を振る」と、残り1か月のフル回転を誓った。(星野 和明)

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