巨人の新ファーム本拠地・ジャイアンツタウンスタジアムを特集する「月刊Gタウン」。今回は、酷暑対策で巨人と住友ゴム工業が共同開発した次世代型人工芝を特集する。

Gタウンでは、保水力に優れる天然素材を原材料とする充填(じゅうてん)剤を組み合わせた人工芝を使用。測定では、従来のゴムチップを使用した人工芝と比較し、表面温度が最大20度ほど低下するデータが得られた。測定結果と実際にプレーする選手の声から、対策の成果に迫った。(取材・構成=小島 和之)

 年々厳しさを増す暑さに対する工夫が凝らされたGタウンが、選手のサポートに一役買っている。東京ジャイアンツタウン担当の巨人・藤門順総務本部次長は「想定していた仕上がりに近づいている」と手応えを明かした。

 Gタウンではグラウンドのほとんどの部分で、保水力に優れるココヤシが原材料の「パームフィル」を充填剤に選択したロングパイル人工芝を使用。球団は4月中旬から7月末にかけてGタウンで、〈1〉ロングパイル人工芝、〈2〉フェンス際に使用された充填剤のない高密度人工芝、〈3〉天然芝の3か所の表面温度を測定した。

 外気温35度の場合、高密度人工芝は表面温度が70度~75度に達する場合もあったが、ロングパイル人工芝はおおむね55度~60度で安定。15度前後の温度差が出た。加えて、Gタウンは散水設備があるため、散水後にはロングパイル人工芝の表面温度は40度~45度まで低下。より天然芝に近い温度管理ができたという。

 また、住友ゴム工業の計測では、従来のゴムチップを使用した人工芝と比較しても最大約20度低下するデータが得られた。

同氏は「ゴムチップを使った人工芝よりも表面温度が上がりにくく、表面温度が15度~20度くらい下がる。地面から来る熱気がないので、従来より身体への負担が軽減されている」と語った。

 評判も上々だ。6月18日に気温30度を超える中で先発した田中将は「いい人工芝だからかもしれないですね。フィールド上はめちゃくちゃ暑かったという感じはなかった」。球団の選手への聞き取りでは「Gタウンに戻ってくると、従来の人工芝より温度が上がりにくいことがよく分かる」という声があった。アマ野球への貸し出しも行っており、多くの球場を知る審判団からも「(体感が)違いますね」と意見があったという。

 プレー性能に関わるデータも測定した。項目は〈1〉衝撃吸収性、〈2〉垂直方向変位、〈3〉エネルギー反発、〈4〉硬球ボール垂直反発高さ、〈5〉硬球ボール転がり、〈6〉回転抵抗、〈7〉HIC(頭部への損傷程度)の7つ。G球場の天然芝、Gタウンのロングパイル人工芝、ゴムチップを使用した従来の人工芝の3か所で測定し、〈5〉を除いた6項目で「従来の人工芝より天然芝に近づいた」という評価が得られた。

 「選手の身体への負担を軽減すること、最高のパフォーマンスを発揮してもらうという点は、一貫して変わりません。選手からいろいろな声を聞いて対応していく」と藤門氏。

選手にとっての最高の環境を求める挑戦は続く。

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