51歳とは思えない打球が右翼席へと放たれた。「マジか!」。

フリー打撃でのサク越えに思わず記者席で大きな声が出た。初めて見るイチロー氏の生打撃はすさまじい音と、威力だった。「イチロー選抜KOBE CHIBEN」と高校野球女子選抜との試合が8月31日、バンテリンDで行われ、5年目でようやく取材することができた。そして、イチロー氏の話ですごく胸に刺さった言葉があった。

 「女子のひたむきなプレー、謙虚さを見て変わった。いずれ野球ができなくなる日が来るけど、それができるだけ先でありたい。こんなふうにおじさんたちを教育してくれる人たちはいないよ」

 全国60チームを超える高校からこの場に選ばれ、プレーできるのはたった20人。悔しい思いを抱えながら、現地観戦した選手もいるはずだ。記者も高校時代は女子硬式野球部でプレーした。少なからず、その子たちの気持ちが分かるが、イチロー氏の言葉を聞いて、野球をやってきて良かったと、スーパースターの考え方も変えるほどの力が女子野球にはあるんだと、心が救われた。

 思い返せば、イチロー氏に救われたのは2度目だった。スポーツ報知の1次面接が行われた2019年3月23日。

イチロー氏が引退を明言したばかりで紙面は5ページにわたり「イチロー」の名言や、成績が掲載されていた。面接官に「今日の新聞読みましたか?」と質問され、「はい、イチローがいっぱいでした!」と答えたのを覚えている。その流れで好きな野球の話を思う存分語れた。今、記者の仕事をできているのはイチロー氏のおかげだ。女子野球出身ということを誇りに、これからも記事を書いていこうと思う。(野球担当・森脇 瑠香)

 ◆森脇 瑠香(もりわき・るか) 2020年入社。YouTube「やってみるかチャンネル」を配信。

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