ウエスタン・リーグくふうハヤテの田中健二朗投手が5日、ちゅ~るスタジアム清水で会見を行い、今季限りで引退することを発表した。ユニホーム姿で会見に臨んだ田中は、プロ18年間の現役生活を振り返りながら「ここまで野球をやってこられた。
田中は常葉菊川(静岡、現・常葉大菊川)3年時の2007年センバツで、同校を初の全国優勝に導き、続く夏の甲子園でも4強入りを果たした。春の準々決勝・大阪桐蔭戦では、同学年の中田翔(中日)を3打数無安打に抑える力投を見せた。その中田も今季限りで引退を表明。同じく同学年であり、DeNAのリリーフ陣を支えたオイシックス三上朋也投手もすでに引退を発表している。
「中田選手、三上選手の引退報道を見たときは正直びっくりしました。同じタイミングで引退するというのは、感慨深いものがあります。三上選手とは連絡を取り合い、『今後ともよろしく』といったやりとりをしました」と述べた。
会見には、DeNAの初代主将を務めた石川雄洋さんが花束を手渡すために駆けつけた。石川さんが「素直で人懐っこくて、みんなから好かれることがある。僕も泣くというタイプではないですが、ちょっと泣きそうです」と言うと「いい兄貴的な存在。
さらにサプライズゲストとして、元巨人でDeNA在籍時のチームメートだった梶谷隆幸さんも登場。田中には事前に「仕事で行けない」と伝えられていただけに、姿を見た瞬間は驚いた様子を見せた。2人の先輩の姿に感無量の表情を浮かべた。
会見中には思い出深い試合として、巨人とDeNAによる16年10月10日のCS第1ステージ第3戦(東京D)を挙げた。同点で迎えた9回から登板し、代走の巨人・鈴木尚広をけん制で刺すなどの好投で、チームの最終ステージ進出に貢献した試合だ。
18年間にわたる現役生活を支えた人物については、横浜入団時に指導を受けた木塚敦志スカウトの名前を挙げた。引退の決意を最初に伝えたところ、「シーズン最後まで田中健二朗でいてくれ」と言葉をかけられたという。「最後まで自分らしく戦っていきたいと思いました」と静かに決意を語った。
23年オフにDeNAから戦力外通告を受けた同時期に、”第2のふるさと”といえる静岡で立ち上がった新球団くふうハヤテにNPB12球団復帰を目指して入団。「オファーをいただいた時には本当に運命だなと思いましたし、最後に(静岡で)ユニホームを脱げるのは、いい締めくくりになりました」と、少し寂しげに語った。
今季は残り17試合あり、27日広島戦で引退試合が予定されている。
〇…田中はNPB12球団復帰への難しさも語った。今季、くふうハヤテでは31試合に登板し3勝3セーブ、防御率2.08としていた。それでも7月末のNPB支配下選手登録期限である7月末を迎えても、声がかからず。「1、2試合の結果で評価される場所ではない。常に高いレベルで調子をキープしなければいけないし、一つのミスも許されないという緊張感があった」と、厳しい現実を受け止めながら語った。くふうハヤテには、NPB経験者で30歳以上の選手も在籍。現在、34歳の倉本寿彦内野手、40歳の藤岡好明投手がいる。
〇…くふうハヤテから阪神に入団した早川太貴投手らからのビデオメッセージが届いた。阪神育成出身選手として初となる先発登板で1勝を挙げた早川は「(2024年のくふうハヤテでの)開幕戦でうまくいかなかったときなどに、アドバイスやご自身の経験談を話してくださったことは、今でも忘れられません。昨年のドラフトで指名されたのは、健二朗さんのおかげと言っても過言ではないと思います」と感謝した。