◆JERA セ・リーグ 中日4―5巨人(6日・バンテリンドーム)

 逆転を信じ、容赦なく懐を突いた。8回2死一塁。

巨人・田中瑛斗投手(26)は宝刀のシュートで最後の打者を三ゴロに詰まらせた。1回を無失点で封じた11球が、9回の大逆転劇へのイントロになった。今季53登板目で待望の移籍後初勝利。「うれしいです。たまたま僕が勝ち投手になった。まずチームが勝ったことが一番うれしい」。守護神マルティネスから記念球を受け取り、全うした仕事の大きさを感じ取った。

 日本ハムでは7年間で1勝。昨オフの現役ドラフトを機に過去の自分と決別した。「元々、内に秘めた闘志はすごくあるのにそれを出せないままだった」。巨人に来て阿部監督の下で殻を破った。希少性が増すシュートの使い手として強気な姿を売り込んだ。

初の開幕1軍から火消しで何度もチームを救った先に、22年7月7日以来となる1157日ぶりのプロ2勝目が待っていた。

 ハートの強さが武器だ。マウンドではいつも、敵軍の応援に「静かにしろよ」とつぶやく右腕。「うっせぇなと。それぐらいの気持ちで投げてます」。野手だった幼少期。「悔しがりすぎて1個三振しただけでバットをたたきつける小学生だった」。父から数え切れないほど雷を落とされたが、負けず嫌いの“本能”でつい体が動いた。6月の古巣との交流戦。あいさつへ行った新庄監督から「出てって(移籍して)良かった?」と聞かれた。満面の笑みで返した。「よかったです!」。

本心だった。

 あえて大きめに履くズボンは裾を上げるオールドスタイル。「古風なデザインがいい」とグラブは昭和風なオレンジ色で、刺しゅうも入れない。「今時のものに反抗していく感じがいいじゃないですか」と気持ちの強さは随所にあふれる。「これからも任されたイニングをゼロで抑えたい」。頼もしい新星が阿部巨人のブルペンを支えている。(堀内 啓太)

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