巨人・桑田真澄2軍監督(57)がファームの現状を伝えるコラム「桑田の眼」。第5回は72勝35敗2分けでイースタン首位を走るチームに、2軍でリハビリをこなした吉川、岡本ら主力選手が若手に与えたメリットを解説。

「勝利と育成」を両立しながら、残り試合を戦い抜く考えを示した。

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 プロ野球の2軍では、年間141試合が組まれていて、1軍と同じように長丁場の戦いが続いています。1軍と違うのは、2軍は「勝利と育成」の両立を目指していることです。例えば3連戦で勝ち越すことは重要ですが、全試合を勝ちにいくよりも、1週間、1か月という単位で勝ち越すことを意識しています。

 2軍監督として2年目を迎えましたが、コーチ陣はチームの方針をよく理解してくれていて、個別性を重視した練習メニューはもちろん、勉強会やミーティングを定期的に開催しています。2軍の選手たちに必要とされる「野球というスポーツへの理解」が深まるよう知恵を絞ってくれています。コーチ陣やスタッフには本当に助けてもらっています。

 この夏の練習を振り返ると、ジャイアンツの“良き伝統”を何度も目にすることができました。例えば、浦田と宇都宮が(吉川)尚輝と一緒にノックを受ける機会があったのですが、尚輝は若い二人の動きを見ながら細かく助言していました。やはり選手同士が交流する効果は絶大で、二人とも足の運びやトスの動作が明らかに良くなりました。若い選手の「もっとうまくなりたい」という姿勢に、1軍の主力選手がしっかり応えてくれて指導者冥利(みょうり)に尽きる光景でした。

 こうしたやり取りは(岡本)和真が2軍調整していた時もありましたし、(坂本)勇人も若い選手へ積極的に声かけしてくれていました。

現在も長野がそうした役目を果たしてくれています。こうした先輩と後輩の好循環がチームの雰囲気に良い影響を与えますし、将来のジャイアンツを支える大事な価値観なのだと実感しています。

 個々の選手については、2年目の園田に「ローテーションの柱になる」という目標を伝えています。そのために、カウントに応じて「制球重視」と「球威重視」を使い分ける能力を求めています。これは同じ球種であっても、球速を自由自在に操る能力を意味します。その能力が身につけば当然疲労度が軽減されますから、長い回を投げられるようになり、年間通して力を発揮することにつながります。

 僕の現役時代、理想は135球で完投することでした。でも全てを全力投球していたら、当然ながらスタミナが持ちません。実際に全力で投げるのは50球程度だったと思います。園田は試合を作る能力にたけていますので、今後はこうした完投するコツも身につけてほしいと考えています。

 前回のコラムでも触れたように、選手は勝利をめざす中でプレーしてこそ成長できると考えています。「勝利と育成」という両輪を大切にしながら、残りのシーズンを戦っていきたいです。

(巨人2軍監督)

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