◆JERA セ・リーグ 巨人6―4広島(9日・東京ドーム)
巨人が初回の集中打で広島に逆転勝ち。3連勝で勝率を5割に戻し、3位DeNAとの1・5ゲーム差を守った。
自慢のパワーがさく裂した。体が泳がされたとは思えないリチャードの弾丸ライナーが、左翼席に飛び込んだ。「とりあえず外野の頭は越えるかな」とコンパクトに捉えた一撃は値千金の満塁弾。球団では23年の大城卓以来30人目となるシーズン2本目のグランドスラムで、試合の主導権を大きくたぐり寄せた。
初回に5連打で2―1とリードし、なおも1死満塁。「みんながつないでくれたので。『うわぁ~』って思いながら。でも絶対打つ!」。フルカウントから7球目の低め137キロをバットに乗せた。
憧れの大砲と運命が交錯した。オフは沖縄の先輩でもある山川と合同自主トレを行うのが恒例。実は3年前に「聞きたいことがたくさんあったんですよ」と面識のなかった岡本に弟子入りを志願していたという。「僕がお願いしたのがギリギリすぎた」とスケジュールの都合で実現しなかったが、トレード加入で思いが成就した。念願だった打撃の助言をもらうだけでなく、肘当てや打撃用手袋もプレゼント。出場61試合ながら9本塁打はキャベッジ、岡本に続いてチーム3位と、今では師匠とともに打線をけん引している。
実直さが先輩から愛される理由の一つだ。投手の球速や変化量を再現する映像付きの打撃練習用マシン「トラジェクトアーク」での対策が実り、7月21日の阪神戦(東京D)で3ラン。翌日のティー打撃で室内練習場に入ると、トス役のスタッフに「トラジェクトアークみたいな感じでトスをお願いします」と珍要望。
巨人移籍後、満塁では7打数3安打、10打点という満塁男に導かれ、チームは勝率5割に復帰。お立ち台では「絶対行くぞ!」と2位でのCS進出への気合をみなぎらせた。約4分の取材で計7度「気持ち」と繰り返した背番号52が、2位死守を目指す巨人を先導する。(内田 拓希)
【堀内恒夫Point】 リチャードは外角低めの球を当てにいっただけで、あそこまで飛ばすんだからな。一番、手が伸びるコースとはいえ、たいしたパンチ力だよ。変化球で攻められることが増えて、ストレートに詰まることも多くなったけれど、タイミングを外されてもスタンドまで届けられる、魅力的な打者ですよ。9本目か。(投手が)間違って打たれるなんて、失礼なことを言ったこともあるが、もう間違いとは言えなくなってきたね。