◆JERA セ・リーグ 巨人4―3広島(10日・東京ドーム)

 手負いの右手で岸田が押し返した。2点を追う4回2死一塁。

カウント2―2からの7球目、大瀬良の真ん中143キロ直球を捉えた。快音を鳴らした打球は左中間席最前列に到達。「次のバッターにつなぐ意識が結果的にホームランになったので良かったです」。気迫の一振りから飛び出した7号2ランで試合を振り出しに戻した。

 献身性も光った。「なんとか転がそうと思っていた」。同点の8回無死一、二塁では追い込まれてから島内の内角152キロ直球に食らいついて、一塁寄りの高いバウンドの投ゴロ。執念の進塁打で1死満塁からの坂本の決勝犠飛につなげた。アーチだけでなく状況に応じた打撃でも貢献した。

 不安を払拭(ふっしょく)する一発でもあった。前日9日の同戦。3回2死の守備で菊池のファウルボールがワンバウンドして右手に当たった場面があった。

ベンチで治療後にプレーを続行してフル出場したが、右手に湿布とテーピングを施した状態で帰路へ。「ちょっとは(痛みが)ありますけど、全然大丈夫だった」。状態が心配されていたが、この日は試合前練習からフルメニューを消化。痛みに負けることなく2安打2打点と暴れた。

 頑強な肉体に不屈の闘志を宿す。捕手というポジションの特性上、ファウルやワンバウンドの投球が当たり、体はあざだらけだ。「痛みを感じるのは試合に出ているからこそ」と頼もしい。強じんなフィジカルの秘けつは「頑丈に産んでくれたお母さんのおかげ。あとは小さい時にめちゃくちゃ牛乳を飲んでいたからかな」と笑う。プロ入り後は鍛錬を怠らず、土台づくりを徹底。長期遠征の真っただ中だった5日の試合後に球場で居残りトレーニングを実施するなど、日々の積み重ねを怠らない。

 同じポジションの甲斐がけがで離脱する状況で、奮闘。

打っては岡本の次の打者として11試合連続で先発し、得点圏打率3割8分1厘の勝負強い打撃で支えている。お立ち台では「残り試合少ないですが全部勝つ気でいくので、みんなで一緒に戦いましょう」と声を張り上げた背番号27。4連勝と勢いに乗りつつあるチームの中心に岸田がいる。(宮内 孝太)

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