◆第73回神戸新聞杯・G2(9月21日、阪神競馬場・芝2400メートル、良)

 菊花賞(10月26日、京都)トライアルの第73回神戸新聞杯・G2は21日、阪神競馬場で行われ、2番人気のエリキング(川田)が先に抜け出したショウヘイを差し切って重賞2勝目。3着のジョバンニまでが優先出走権を獲得した。

 素質馬が完全復活だ。エリキングは大外枠からゆったりと中団を追走。川田はあえてポジションを取りに行かず、馬のリズムを重視した。1000メートル通過が1分2秒6のスローペースのなか、4角7番手から進撃を開始。右ステッキを駆使しながら、左腕で手綱を押す鞍上のアクションに応えて大外を弾けるように強襲した。上がり最速32秒3の極上の末脚で、究極の瞬発力勝負を首差制した。

 3週連続タイトル獲得で、JRA重賞150勝を達成した川田は「現状のつくりで、これほど動けるのかというくらい動いてくれた」と絶賛。中内田調教師も「これで本番に向けていいステップが踏めて、いい形で本番に向かえるかな」と納得の表情を浮かべた。

 豪G1勝ち馬を母に持ち、23年セレクトセールで2億1000万円で落札された血統馬。2歳時は京都2歳Sでデビュー3連勝、重賞初挑戦Vを飾ったが、12月に右第1指骨の剥離骨折が判明。約3か月の休養を余儀なくされた。復帰初戦の皐月賞は11着。

前走の日本ダービーも5着だったが、夏を越して成長した走りで、ダービーで先着を許したショウヘイを完封。不完全燃焼に終わった春の悔しさを晴らした。

 しかし、まだ奥がある。今回は川田が「菊花賞のための準備をしました」と言うように、あくまで秋初戦。「ここを使って良くなるようにというところで、これだけの走りができたというのはありがたい収穫です」と主戦が言えば、「太かったですね。仕上がり途上の状態でよく勝ち切ってくれた」とトレーナー。前哨戦仕様の仕上げのなか、圧巻のパフォーマンスで底知れない能力を見せつけた。

 いざクラシック最後の1冠、菊の大舞台へ。本番に向けて手応えが深まる勝利に指揮官は「今回2400メートルをリズム良く走ってくれたので、これが次につながってくれれば」と力を込めた。(山本 理貴)

 エリキング 父キズナ、母ヤングスター(父ハイシャパラル)。栗東・中内田充正厩舎所属の牡3歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。

通算成績は6戦4勝。主な勝ち鞍は24年京都2歳S・G3。総獲得賞金は1億4134万8000円。馬主は藤田晋氏。

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