◆パ・リーグ 西武1―4ソフトバンク(27日・ベルーナドーム)
ソフトバンクが27日、2年連続23度目のリーグ制覇(1リーグ時代の2度含む)を決めた。5月1日には今季最大の借金7、首位とゲーム差6の最下位と苦境に立たされたが逆転V。
小久保の体が宙に舞った。ナインの手で7度の胴上げ。監督初就任からの連覇はソフトバンク球団初、プロ野球史上4人目だ。「本当に苦しいシーズン。優勝が決まった瞬間は我を忘れて、喜びすぎました。感謝の気持ちでいっぱいです」と声を弾ませた。
昨年は開幕6戦目に首位に立つ独走Vだった。今年は5月1日に最大借金7、首位と6ゲーム差からの逆転優勝。
迷走していた4月中旬の食事会では、コーチ全員に担当外の分野も含めて「勝つために何ができるか」を問い、耳を傾けた。若手が力を発揮できるよう、伴メンタルパフォーマンスコーチを5月3日からベンチ入りさせた。同15日には不振の山川を昨季から全試合任せた4番から外した。2週間悩んだ末の決断。今季は6人を4番で起用した。
逆襲に頭をフル回転させていた頃、タブレットで読んだ一冊が「戦略的暇」(飛鳥新社)だった。新聞は日経新聞しか読まず、人工知能など最新テクノロジーをはじめ、野球以外の知識欲も旺盛。脳を休ませる必要性まで読書で学習した。
効率主義に一見そぐわない変化もあった。今季から遠征先のチームバスに同乗するようになった。伝え聞いた王会長が目を細めた。「その方が一体感が出る。監督がイライラしているとか、喜んでいるとかも分かるしね」―。
思い返せば、自身もバスの中で大切なことを学んだ。96年5月9日の近鉄戦(日生)で敗戦後、ファンがチームバスを取り囲み生卵をぶつけた。当時の王監督の毅然(きぜん)とした姿、背中は目に焼き付いている。4月を最下位で終えたのは、その年以来、29年ぶりだった。決断の際は、いつも恩師のタクトが羅針盤として胸にある。
交流戦最終戦で優勝を飾った6月22日の阪神戦(甲子園)の後、ひそかに大阪市内の病院に入院。腰のヘルニア手術を受けた。
本来は決めたことを貫くのが好きなタイプ。代打専念を約束した中村に頭を下げるなど、何度も方針はぶれ、軌道修正を余儀なくされた。優勝決定試合も近藤、周東が体調不良で欠場。「チームも個人も満身創痍(そうい)」と苦笑いするが、誰かが抜けてもカバーできる強さが身についた。柳町、野村、杉山ら埋もれていた才能も使い続けることで開花した。蛇行しながらのVロードは、振り返れば太い道になっていた。(島尾 浩一郎)
◆初の監督就任から2連覇
藤本定義(巨 人)36年秋、37年春
森 祇晶(西 武)86、87年
中嶋 聡(オリックス)21、22年
小久保裕紀(ソフトバンク)24、25年
〇…ソフトバンクのビールかけは都内のホテルで行われた。
◆小久保 裕紀(こくぼ・ひろき)1971年10月8日、和歌山市生まれ。53歳。星林から青学大を経て93年ドラフト2位(逆指名)でダイエー(現ソフトバンク)入団。95年本塁打王、97年打点王。2003年オフに巨人へトレード移籍。07年からFAで古巣復帰。12年限りで現役引退。通算2057試合で2041安打、打率2割7分3厘、413本塁打、1304打点。