◆パ・リーグ 西武1―4ソフトバンク(27日・ベルーナドーム)
ソフトバンクで今年1月1日に新設されたチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任した城島健司氏(49)が、スポーツ報知に特別手記を寄せた。今回の優勝を10連覇の2年目と位置づけ、王監督時代にともに主力として活躍した小久保裕紀監督(53)と二人三脚での球団改革を明かした。
CBOの仕事は王イズムを継承して、1軍から4軍まで、スカウティングを含めて5年先、10年先を見据えること。孫オーナーの掲げる「目指せ世界一」を実現させないといけない。その中には巨人のV9を超える10連覇も含まれている。小久保監督の手腕により2連覇を成し遂げることができた。8年後は今の小・中学生ぐらいまで戦力になってくる。僕の立場はそこまでイメージすることが必要だ。
孫オーナーは「時間効率を考えなさい」と言う。選手寿命は長くないので、成長を遠回りさせたくない。ハイテク機器など設備投資でも背中を押してくれる。そして「ウチが最初なら迷わずやりなさい」と。結果がどちらに転んでも初めてのアンサーを手にすれば成功。古い組織なら「失敗したら誰が責任を取るんだ」となってしまう。
王会長は昔から「朝礼暮改でいいんだよ」と言っていた。「変わりなさい、変化しなさい」と。僕は王イズムの継承についてもそう考えている。「30年前の野球に戻るのか」と言う人もいるけど、そうでない。歴史を知った上で変えてもいいけど、知らないで変えるのは違う。古き良きものを知ることが大切。今年、弾丸通路(選手通路)に南海時代からの歴史、レジェンドの写真を飾ったのもそのためだ。
僕がプロ野球選手になって最初に目を開けたら、そこにいた大人が王監督だった。鳥は一番最初に見たものを親と思う。僕は王さんだった。小久保さんは1年目が根本監督だけど、王会長から学んだプロ野球のイロハみたいなものは、僕と一緒。
例えば、生活面もさまざまなルールがある。昔は新人が集合時間ちょうどに来たら怒られた。「10分前行動だろ」と。中心選手なら怒られない。こんな組織ではダメ。ルーキーでもジャストタイムならセーフ。いろんな国の外国人も含めて120人以上の選手がいる。ルールが決まっていないと指導もしにくい。走塁、守備、打撃それぞれのバージョンがある。
ルールはアップデートが必要。1軍で特筆すべきプレーが起きたら、全軍で朝の集合で選手に報告する。「今日から全軍、このルールに変わります」と通達されるときもある。サインや動き方も全軍共通。指導の一本化も徹底している。全コーチが一人の選手に同じ方向で指導するため日報を書いてもらっている。僕もグラウンドで選手と話した後は内容を報告する。
向こう何十年、例えば王さんがいなくなっても、僕らがいなくなっても、ホークスの野球のベース、色はできている。それを理解した上で次の時代には変えてもいい。日々変わる野球に敏感でスピード感のある組織でありたい。それが僕らの目指すところだ。
◆城島 健司(じょうじま・けんじ)1976年6月8日、長崎県生まれ。49歳。別府大付(現・明豊)から94年ドラフト1位でダイエー(現ソフトバンク)入り。2003年パ・リーグMVPなど3度のリーグV、2度の日本一に貢献。06年、日本人初のメジャー捕手としてマリナーズへFA移籍。09年オフ、阪神入り。日本代表では04年アテネ五輪銅メダル、09年WBC優勝。12年限りで現役引退。日米通算1785試合出場、打率2割8分9厘、292本塁打、1006打点。182センチ、89キロ(現役時)。右投右打。20年からソフトバンクの会長付特別アドバイザー、今年1月、CBO就任。