オーストリア2部のSKNザンクト・ペルテンでテクニカルダイレクター(TD)、さらにU-18監督とアカデミーダイレクターを兼務するモラス雅輝氏(47)が、スポーツ報知の取材に応じた。現場と強化サイドの両方を知る意味や、指導者の分業制など欧州で起こっている変化、さらに日本にとっても模範となりうるクラブ経営についても知見を語った。
ラングニック氏から学んだ「中長期的ビジョン」
ウィーン近郊のザンクト・ペルテンで、モラス氏はクラブの要職を担い、多忙な日々を過ごしている。欧州で指導者とマネジメントを学び、日本でも浦和レッズやヴィッセル神戸でコーチを務めるなど、日欧のサッカー界を知る立場として、現在はこれまでの経験を生かして仕事に向き合う。
「私は、現在オーストリア代表監督を務めるラングニック氏に大きな影響を受けてきました。彼はスポーツダイレクター(SD)兼監督という立場で、一人の指導者として、さらにクラブの中長期的なビジョンを持つ経営的視点で組織を作り上げてきた人です。私もクラブにとってプラスになることを、現場とフロント両方の立ち位置からできればと思っています」
アマチュア指導者を出発点に、SDと監督を兼務してレッドブル・グループ(ザルツブルク、ライプツィヒなど)を独自のスタイルを持つクラブへ育て上げたラングニック氏。またSDとしても、若手に投資して高額で売却し、その資金でクラブをさらに強化するサイクルを確立した。モラス氏はそんなラングニック氏をお手本に、クラブの発展を見据える。
「ヨーロッパの傾向として、少しでも歯車がうまく回らなくなると『監督を替えればいい』という風潮は根強いです。一方で、『SDが良いチーム編成ができなかったのだから、誰が監督になっても変わらない』という議論があるのも事実。その中で、ラングニックや、私が以前共に仕事をしたフライブルクのフォルカー・フィンケのように、ドイツ語圏では短期的な結果のみを求めるのではなく、クラブ全体を強化することで最終的に良い結果を残す、長期的なプランを持った指導者が生まれてきました」
監督は「総合責任者」としてのマネジメント力が問われる
過去にはアーセナルのアーセン・ベンゲル氏や、マンチェスターUのアレックス・ファーガソン氏もクラブの全権を握っていた。しかし、その立場を全うするためには、指導力に加え、移籍実務などに関わる知識が必要となる。
「はっきり言えるのは、仕事量は膨大になるということです。
多岐にわたる業務の中で、例えば試合に向けたトレーニングの構築をコーチに任せるといった「委譲」の判断も必要になる。その上で監督が行うべきは、組織全体の統括だ。
「欧州の指導者ライセンスでも度々言われることですが、監督とは『総合責任者』であると。最近はセットプレーコーチなど、アメリカンフットボールのように専門職が増えています。監督はそのすべてをマネジメントし、全員が共有できるビジョンを示さなければなりません。現在、うちのセカンドチームとアカデミーには計36人ほどのスタッフがいますが、全員と意思疎通を図り、ビジョンを共有して物事を進めていく。これが鍵になります」
「足(選手)より先に石(施設)に投資する」フライブルクの教訓
さらに、現在のチームのみならず、将来への投資という考え方も重要だ。自分が監督を退いた後の数年後を見据えた策を打てるかどうかが問われる。
「有名な話ですが、ファーガソン監督はある16歳のタレントを獲得するために、わざわざその選手の親御さんの元まで出向いて口説き落としたといいます。その選手が自分の任期中に結果を出してくれるかは分からない。
プロの世界で「最も解雇されやすい職業」といわれる監督が、長期的な視点を持つためには、個人の資質だけでなくクラブ側の理解も欠かせない。
「欧州でも目先の結果を求めるクラブは多いですし、後任者が得をするような土台作りに心血を注ぐ人は、正直それほど多くありません。ただ、ラングニック氏がレッドブル・グループを築き上げた成功例もあり、その価値を理解する経営者が増えています。理想は、オーナーが変わっても揺るがないクラブのビジョンが継続されることです」
モラス氏がJクラブにとっても模範になると挙げるのが、ドイツ1部のフライブルクだ。 「フライブルクは経営者が替わっても方針がブレないクラブです。1991年に就任したフィンケ監督がSDを兼任して築き上げたフィロソフィーが、今も根付いています。その哲学は**『足(選手)より先に石(施設)に投資する』**という言葉に集約されます。目先の勝利のために人件費を膨らませて後で苦しむのではなく、まずは施設や育成に投資し、健全な財政基盤を作る。最悪2部に降格しても方針を変えないという覚悟があります。ピッチ上の結果だけでなく、経営、育成、地域貢献、そしていち早く力を入れた女子チームなど、多方面でモデルケースと言えるでしょう」
後編では、移籍市場の最前線に立つモラス氏が、日本人の欧州移籍にまつわる「移籍金」の真実と、日本サッカーがさらに飛躍するための課題を語る。

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