天皇賞・春には4年連続で出走した牝馬がいた。小さなアイドルホースとして人気を集め、引退後は繁殖入りしたメロディーレーンの今を、馬主で、生産者でもある岡田スタッド(北海道新ひだか町)の岡田牧雄代表に聞いた。

 常に常識という壁を乗り越えてきた。グレード制導入の1984年以降、牝馬は延べ31頭しか出走がない春の盾。JRA最少馬体重勝利記録(338キロ)を持つメロディーレーンは、体格差がある一流の牡馬を相手に2020年から4年連続で参戦した。岡田スタッドの岡田牧雄代表は「並外れたエネルギーを持った超がつく長距離馬。ただ、天皇賞・春に関しては、けっこう負けているので、いいイメージがない」。菊花賞、阪神大賞典、ステイヤーズSで5着など長丁場の適性を示したが、このレースは22年の9着が最高だった。

 周囲と比べると明らかに小さい体。誕生後は競走馬にするべきかも悩む存在だったが、夜間放牧で見せる体力、坂路調教での動きには素質の片りんが見られた。「これは競走馬になれるし、1つは勝つぞ」。その想像を大きく上回る活躍を見せると、重賞を中心に8歳まで現役を続け、引退後は故郷の岡田スタッドで繁殖入りした。

 出産するのはリスクがあるのでは―という心配の声を覆して、3月4日には父ベンバトルの長女を出産。「驚くぐらいにお母さんとして優秀。

チャカチャカする面があったけど、お母さんになったら落ち着いて子供中心。本当にすごい」。母となり、変貌(へんぼう)した姿に驚く。出産直後は小柄で痩せていた子供は、見違えるように成長。「今ではトモ(後肢)がぷりんぷりん。母乳がいいんだろうな」。放牧地で気ままに動き回る姿は、若かりし頃の母と同じ。メロディーレーンは、たくましさを増す娘を追いかける日々を送る。

 初子は早ければ2年後にデビューを迎えるが、「ファンのみなさんの期待に応えられなくて悪いけど、たぶん400キロは切らないと思うよ」と笑う牧雄氏。同代表に「自然界に対して畏敬の念を抱いたのはこの馬のおかげ」とまで言わせる小さなアイドルのストーリーは子供たちに受け継がれていく。(浅子 祐貴)

 メロディーレーン 父オルフェーヴル、母メーヴェ(父モティヴェイター)。2016年2月12日、北海道新ひだか町・岡田スタッド生まれの牝10歳。

18年10月に馬体重336キロでデビュー。19年9月に1勝クラスを勝った338キロがJRA最少馬体重勝利記録。24年5月のメトロポリタンS(7着)がラストラン。通算36戦4勝。総獲得賞金8590万9000円。現在はシスキンとの子を受胎中。

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