男子テニスで、元世界ランキング4位、2014年全米準優勝の錦織圭(ユニクロ)が1日に、今季限りでの引退を表明してから一夜明けた2日、恩人・盛田正明氏から色紙が届いた。直筆で「盛田正明からの提言」として、

「テニスもビジネスも

 厳しい目標こそ 

 成功への第一歩」

と、エールが書かれていた。

 盛田氏は、「ソニー」の創始者のひとり、盛田昭夫氏の実弟で、私財を投じて2000年に盛田正明テニス・ファンド(MMTF)を創設。ソニー副社長、日本テニス協会会長を歴任し、錦織を13歳で米IMGアカデミーに派遣し、奨学金で支援し続けた恩人だ。

 MMTFは、派遣するジュニアに、1年間の目標を課す。ランキングや成績などさまざまだが、これが結構、厳しい。盛田氏も「大変だから、世界に出す。大変になってほしいわけです。それに耐えなきゃ、世界では勝てない。わざと大変にしていると話す。

 その課題をクリアできないと、奨学金は打ち切りだ。厳しすぎるとも思えるが、盛田氏は「IMGアカデミーが、その子には向いていなかっただけかもしれない。別の道を行くなら早いほうがいい」という厳しさの中の親心だ。

 盛田氏にとって、自身のビジネスでも同様だった。

ソニー創始者のひとり、井深大氏に「いつも人と違うことをやれと言われていた」。常に違うものを探すことは非常に厳しい。しかし、そのおかげで、ソニーは独創的な家電を生み出し成功してきた。

 きっと、盛田氏は、錦織に、君が成功したのは厳しい目標を持ち、それをクリアしてきたからだと言いたいのだろう。そして、引退後、再びテニスに関わるにしても、同じ気持ちを持ち続けなさいという提言ではないだろうか。29日で99歳になる恩人からの、優しくも厳しくもあるエールだった。(吉松 忠弘)

 ◆盛田正明(もりた・まさあき)1927年5月29日生まれ。東工大(現東京科学大)卒。ソニー副社長、ソニー生命保険会長などを歴任し、2000年に日本テニス協会会長に就任。2011年までつとめた。

 ◆盛田正明テニス・ファンド 私財を投じ2000年に創設。9月から翌年の5月までを期間として、米IMGアカデミーに選手を送り出す。

奨学金は年に1回の日米往復航空券、滞在費、学費などを含み、専属コーチなどをつければ、一期間で約1000万円を超える。返済の義務はないが、世界100位以内になると、賞金の10%を5年間、基金に還元する。

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