世界のサッカー移籍市場を繋ぐデジタルプラットフォーム「TransferRoom(トランスファールーム)」は7日、アジア太平洋(APAC)地域を対象とした国際会議「TransferRoom LIVE APAC TOKYO」を千葉県内で開催した。会場には世界21か国から56クラブ、19のエージェント会社などが集結。

この日は、各クラブやエージェントが数多くのブースに分かれ、実際に移籍に関するミーティングを実施した。

 2017年に誕生した「トランスファールーム」は、専用サイト上でクラブ間の直接交渉を可能にするプラットフォームだ。クラブは「年俸1億円前後、30歳以下、ポストプレーヤータイプのストライカー」といった予算規模、ポジション、選手の特徴などの希望条件で検索を行い、エージェントを介さずに選手保有クラブへ直接コンタクトを取ることができる。まるで昨今人気のマッチングアプリのように、求める“理想の相手”を能動的に探せるのが最大の特徴だ。

 すでにJリーグでも浦和、川崎、神戸、福岡、C大阪、名古屋、G大阪、湘南、愛媛などが導入済みだ。C大阪からオランダ1部AZに移籍したDF毎熊晟矢、ブラジル・バイーアからC大阪に加入したFWラファエル・ハットン、スウェーデン1部マルメから浦和に加入したFWキーセ・テリン、ともに川崎に加入したFWロマニッチ(セルビア・ノヴィサドより)やDFウレモビッチ(クロアチア・ハイドゥク・スプリトより)など、数々の成約例が生まれている。

 では、Jリーグクラブはこのシステムをどう活用すべきなのか。湘南の原田慎太郎強化担当兼スカウトは「こちらから主体的に動ける点が、このツールを使う目的になると思います。これはイン(獲得)とアウト(放出)の両方に言えることですが、相手クラブと直接話せることで、提示された金額を鵜呑(うの)みにするのではなく、主体的な交渉が可能です。また、求める選手の条件を提示すれば、移籍金や給与面も含めた多くの推薦(リコメンド)を得られます。その中から調査・交渉を進めるという効率的な手法も選べます」と語る。候補の絞り込みから直接交渉の開始まで、そのスピード感も大きな魅力だ。

 

 Jクラブの中には、クラブ規模や予算、人材不足などの理由で、外国人選手の独自調査に十分なリソースを割けないケースもある。そのため、過去にはエージェントから持ち込まれた情報を精査しきれないまま獲得に至る例も散見された。しかし、原田氏が「エージェントの方々が提供してくれる情報も非常に貴重。両方を活用していく必要がある」と語るように、デジタルと従来の人脈、双方の選択肢を比較検討する使い方が現実的といえる。

 さらに、選手のキャリア支援にも有効だ。「海外移籍を目指す選手に対し、クラブ側が移籍の準備が整ったと判断した際、最適な移籍先を能動的に探すこともできる」と原田氏。選手にとってより好条件な環境を探し出す上でも、役立つツールとなっている。

 トランスファールームの顧客には、マンチェスター・Cのようなビッグクラブから、小国のスモールクラブまでが名を連ねる。世界中のクラブが、地理的な距離に関係なくつながることができる。ボーダーレスに集まる膨大な情報をいかに能動的に活用していくか。そんな「デジタル戦略」の成否が、Jクラブが真に世界と地続きになるための重要な鍵となりそうだ。

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