お笑いコンビ・千鳥の大悟(46)が「箱の中の羊」(是枝裕和監督、29日公開)で映画初主演を務める。是枝監督の8年ぶりとなる日本映画オリジナル脚本で、第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。

撮影の裏話やお笑いとお芝居の共通点、役者としての今後の展望を語った。(高澤 孝介)

 お笑い界の“天才”は、舞台を映画に移してもなお、スクリーンで輝きを放った。映画初主演にして名匠・是枝監督とのタッグ。大悟は2年前に息子を亡くした甲本健介役を演じたが「『こうやってください、こういう表情してください』って言われることは、ほとんどなかった」と振り返る。撮影中にクセで出てしまった一人称の「わし」もそのまま採用され、表情や動きなどあらゆる面において自然体で撮影に臨んだ。

 撮影期間は「モニターで映像を確認することが一回もなかった」という感覚派。しかし、その理由を尋ねると「なんか、恥ずかしいから。終わるまでどうなってるんやろって不安だった」と苦笑いした。初めて完成した映像を見た時は「すげえな監督! こんなにわしを違和感なく仕上げたか」と感嘆。「自分で見てそんなに違和感ないなら、みんなから見ても(違和感)ないんじゃないかなってホッとした」と、安堵(あんど)とともに自信が湧き上がった。

 夫婦役でダブル主演を務める綾瀬はるか(41)については「ざっくり言えば素敵な方。芸能界のトップでずっといた人間とは思えない。

3日前くらいにこの世界入ってきたんですかってくらいピュア」。ただ、バラエティー番組などでは見せないトップ女優の切り替えの速さに、思わず「さすがやな」と感銘を受けた。作中では意見が対立し、言い合いをするカットもあるが「重めのシーンの時はわざとわしに会わない、話しかけないようにコントロールしてくれた」。第一線を走り続ける理由を身をもって体感した。

 撮影を通じて「映画もお笑いも会話で成り立っている」と分析。「お笑いもしゃべっている相手を気持ちよくさせないと人は笑わない。(作中の)夫婦の会話も相手の思いをくみ取るっていう意味では一緒かもしれない。何を言ってもらいたくて言ってんのやろ、みたいな。それはお笑いで学んだことですね」。それぞれのジャンルに通じる本質を感じ取り、好演につなげた。

 今作は12日(日本時間13日)からフランスで開催されている第79回カンヌ国際映画祭で最高賞の「パルムドール」を競うコンペティション部門に選出され、今後の俳優活動にも期待がかかる。挑戦してみたい役柄については「綾瀬はるかの旦那役やっちゃったんでね…」と困惑しながらも「大好き」と公言している広瀬すず(27)とは“学生モノ”での共演を思い描く。

「すずちゃんなら、学生恋愛、彼氏とかでもいいです。先生と生徒の恋愛だったら問題ありそうなんで、全然学生役やりますよ」と笑い飛ばした。

 役者としての目標は「ない」としながらも、理想像に「男はつらいよ」シリーズの主人公・車寅次郎(渥美清さん)を挙げる。「寅さんめちゃめちゃ好きで。寅さんになれたら、って言ったらおこがましいけど、ああいう人間味のあふれたのがあれば、(作品に)出るかもしれない」。お笑いとは違う“面白さ”を知り、活躍の幅をさらに広げていく。

 ◆「箱の中の羊」 是枝監督が原案・脚本・編集を手掛けたオリジナル作品。2年前に息子・甲本翔(かける、桑木里夢)を亡くした健介(大悟)、音々(綾瀬)夫婦が亡き息子の容姿、声をしたヒューマノイドを迎え入れる。再び家族として暮らし始める中で、亡き子への向き合い方の違いが夫婦の心の傷を浮かび上がらせていく。

 ◆大悟(だいご)1980年3月25日、岡山・笠岡市北木島生まれ。46歳。2000年にお笑いコンビ「千鳥」を結成し、ボケを担当。

地元・岡山弁を駆使したしゃべり漫才を武器に12年に東京進出。「漫才ギャング」(11年)で映画デビューし、「任侠野郎」(16年)、「ひとよ」(19年)などに出演。趣味は素潜り、お酒。血液型B。

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