今週の株式市場は堅調な動きの一方、インフレ再燃や金利上昇、中東情勢などの不安材料が影を落としています。強気相場を支えるAI・半導体関連への投資熱は、今後も持続するのでしょうか。
不安を抱えながらも高値圏を維持する株式市場
今週の株式市場で、日米の主要株価指数は上げ下げを繰り返しながらも、高値圏を維持する展開となりました。日経平均株価や米S&P500種指数、ナスダック総合指数などが最高値を更新する動きを見せています。
<図1>国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較(25年末を100)(2026年5月14日時点)
※欧米市場は5月13日時点
とはいえ、足元の市場環境を見渡すと不穏な状況が続いています。
先日まで中東情勢の収束期待が高まっていましたが、思ったよりも事態は進展を見せていません。WTIをはじめとする原油先物市場での価格が高止まり傾向となっているほか、今週に米国で公表された、4月分のインフレ関連指標(消費者物価指数と生産者物価指数)が予想以上に物価上昇が進んでいる結果となりました。これを受けた債券市場では、金利(米10年債利回りなど)が上昇する反応を見せています。
一般的に、金利の上昇は株式市場にとってネガティブに働くことが多いのですが、それでも株式市場が堅調なのは、米中首脳会談の行方を見守る様子見の影響もありそうですが、引き続き好決算の銘柄や、AI・半導体関連銘柄を物色する動きが支えとなっていることが大きいと思われます。
<図2>米主要株価指数のパフォーマンス比較(25年末を100)(2026年5月13日時点)
図2は米主要株価指数のパフォーマンス比較ですが、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の強さが目立つ状況が続いており、AI・半導体相場が相場を牽(けん)引する構図に変化が無いようにも見えます。
ソフトバンクグループの決算から見る「AI投資の不透明感」
「AI・半導体関連銘柄がさらに上昇できるか?」については、来週21日(木)に予定されている米エヌビディアの決算がターニング・ポイントとして注目されていますが、国内株市場でも、注目のソフトバンクグループ(SBG)(9984)の決算が今週13日(水)に発表されました。
純利益が日本企業として史上最高となる約5兆円を記録し、そのインパクトの強さから多くのニュースの見出しを飾ることになりました。翌14日(木)のSBG株の動きを見ると、上昇で始まったものの、すぐさま下落に転じる反応を見せ、結局この日は前日比4.03%の下落で取引を終えています。
<図3>ソフトバンクグループ(日足)とMACDの動き(2026年5月14日時点)
図3を見てもわかるように、SBGの株価は足元で急上昇していたため、決算発表によって「いったんの材料出尽くし」で利益確定の売りが出た可能性があり、売りが一巡した後は再び株価が上昇していくというシナリオも描けます。
ただ、決算の内容からは「AI投資の今後の不透明さ」も感じられる点には注意が必要かもしれません。
今回のSBG決算の最大の特徴として挙げられるのが、利益のほとんどが投資先である米オープンAI社の企業価値上昇に伴う評価益が占めており、その中身が「ビジネスで直接的に現金を稼いでいるわけではなく、投資先企業の評価」に依存している点です。
実際に、SBGの「営業キャッシュフロー」は4,200億円を超える赤字でした。さらに、オープンAI社への追加投資などのために有利子負債が25兆円規模まで膨らんでおり、借金で投資を回す構造が一段と鮮明になっています。株式市場の反応が冷ややかだったのも、こうした事情も背景にあると思われます。
そのため、今後のSBGの課題としては、この巨大な「含み益」をいかに現金化し、迫り来る負債の返済に応じるかという点です。
具体的には、SBGはオープンAI社関連の資金調達として約6.4兆円のブリッジローンを抱えていますが、その返済期限が2027年3月に迫っています。
2026年の終盤(10月~12月頃)に見込まれているオープンAI社のIPO(新規上場)が滞りなく行われ、その利益で返済できれば問題ないのですが、先月(4月)の27日に、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、「オープンAI社の2025年の売上高や利用者数が目標未達だった」と報じたばかりでもあり、もし、IPOが遅延する事態となれば、財務不安の高まりによってSBG株が売りに押されてしまうシナリオが浮上してきます。
また、SBG傘下で半導体設計を手掛ける英アーム・ホールディングス(ARM)が、エージェントAIに対応するために、自社製AIチップの製造・販売へと舵を切ったことも注目です。
これは、従来の半導体設計専門企業から製品を持つ企業へのビジネス転換を意味します。自社製品を持つことで、これまでの顧客だった他の半導体メーカーと競争していくことになり、熾烈な「生存競争」に勝ち残れるのかも需要なポイントになります。
エヌビディア決算の焦点は、「在庫総額」と「ブル・ウィップ効果」
そんな中で来週21日(現地時間20日)に迎える米エヌビディア(NVDA)の決算は、AI・半導体相場の継続性を占う重要な場面となります。
<図4>米エヌビディア(日足)の動き(2026年5月13日時点)
※チャート内の決算日は現地時間
図4はエヌビディアの日足チャートです。2024年までは決算発表の度に株価水準を切り上げてきましたが、ここ1年ぐらいは決算を受けて下落することも多くなっており、足元の株価が最高値を更新する中で、「どれだけ市場の期待を上回れるか?」が株式市場の初期反応につながっていきます。
ざっくりとした決算のチェックポイントとしては、以下が挙げられます。
【売上高の見通し】
コンセンサス予想では、約780億ドル(前年同期比約77%増)となっており、これを超える「800億ドル台」のガイダンス(見通し)が出てくるか
【データセンター部門の売り上げ成長率】
同部門の売上高は731億ドル(前四半期の623億ドルからさらに拡大)と予想されており、収益の9割以上を占めるこの部門の成長率が鈍化していないか
【粗利益率(グロスマージン)】
前四半期の75.2%から74.5%程度への微減が予想されていますが、競合他社(AMD等)との価格競争や、次世代製品への移行コスト、中東情勢の影響などが利益を圧迫していないか
メインシナリオとしては、これらのチェックポイントをクリアできていれば、株式市場は上昇で反応しそうですが、それ以外にも気になる点があります。
それは、「在庫額(Inventory)」の推移です。
<図5>米NVIDIAの「総在庫額(Inventory)」の推移
エヌビディアの在庫額は、ChatGPTが登場した22年4月期(約31億ドル)から、直近の26年1月期には214億ドル(約3.3兆円)と、約6.9倍にまで増加しています。
グラフでは、数字を拾っているだけなので、在庫の内訳の詳細はわかりませんが、在庫が増加している理由として、「AIチップの高性能化による単価上昇の影響で、金額は増えても在庫はあまり増えていない」、「米中対立の影響(H2Oの出荷停止など)」、「単純に在庫のハケが悪化」、「データセンター建設の遅れなどで顧客の製品受け入れが遅れている」などのストーリーが考えられますが、さらに、こうした在庫増加の背景に、「ブル・ウィップ効果(鞭の効果)」を指摘する見方もあるようです。
ブル・ウィップ効果(Bullwhip Effect)とは、サプライチェーンにおいて、「消費者のわずかな需要の変化が、サプライチェーンの上流(メーカーや原材料供給者)に遡るほど大きな振幅となって伝わる現象」を指し、鞭(Whip)を振る際、手元の小さな動きが先端に行くほど大きな揺れになる様子に例えられています。
エヌビディアの在庫については、以下のような流れでこの現象が起きているのでないかと指摘されています。
(1)過剰発注の連鎖
マイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)などの顧客企業(ハイパースケーラー)は、AIチップの欠品や将来の順番待ちを恐れ、実際の必要量(実需)よりも多めに、あるいは早めに発注を出します。
(2)情報の歪み
エヌビディアなどのメーカー側には、この「不安による上乗せ分」も含めた注文が届くため、需要を過大に評価して増産体制を敷きます。
(3)物理的ボトルネックとの衝突
チップは納品されても、受け入れ側のデータセンターが「電力不足」や「変圧器の不足」で完成していないため、チップが稼働せず在庫として滞留します。
このように、下流(ハイパースケーラー)でデータセンター建設の遅れなどの問題が生じると、上流(エヌビディア)では在庫の増加や購入義務(将来の仕入れ約束)などの影響が大きく出てきてしまうという構図です。
実際に、26年1月期のエヌビディアの「棚卸資産回転日数(在庫がハケるまでの日数)」は110.32日と、過去平均(80日~90日)を上回り始めています。つまり、製品が作られているものの、在庫の増加という「目詰まり」が起きてしまうと、仮に足元の決算が良好でも、先行きの需要減に対する不安が高まることになるため、株高が継続しにくくなってしまいます。
もっとも、2026年後半から2027年にかけて供給が予定されている、次世代のGPU「Rubin(ルービン)」の進捗に対する前向きな発表があれば、これまで見てきた不安を払拭して、株高で反応することも考えられます。
いずれにしても、これまで「期待先行」から「実需の買い」、「業績評価による見直し」と視点を変えながら成長してきたAI・半導体相場がまた新たな局面を迎えるタイミングに差し掛かっているのかもしれません。
(土信田 雅之)

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